※このSSでは、台詞にその台詞が誰のものかを書くような
シャナ「・・・・」
などといった説明を書きません
まあ、前後関係などから判断してください


「もう、悠二なんて大嫌いっ!」

放課後の教室にシャナの大きな声が響いた

「なんだよ、さっきから謝ってるじゃないか」

「うるさいうるさいうるさいっ!悠二は反省してないっ!」

シャナは怒ってどこかにいってしまった

「なんだよ?また喧嘩か?」
そんなことをいう佐藤と

「またシャナちゃんと喧嘩したのか?」
という、田中

2人はまあ、懲りないねぇ・・という表情といったところ

吉田さんは図書委員の準備のため不在

池はそこで逆立ちして・・・って
「なにやってるんだよ池!」

「見てわからないか?来週の体育祭の逆立ち走の練習だ
 帰りのHRの話を聞いてなかったのか?」

そう、帰りのHRでは体育祭で出場する種目に関して発表があったのだが
それについてまったく聞いてなかった
いや、聞く気になれなかったというところか

シャナと喧嘩して、そんな気分ではなかったのだ

たぶんクラス中のみんながその原因を薄ら薄ら気づいていると思う

その原因となったような現象は明白であったのだ


事の発端は4時間目から始まった

今日は学食で、シェフ特製カリカリメロンパンとよばれる、
豪華なメロンパンが販売される予定だった(今週いっぱい)

シャナは、それをなんとしてでも手に入れたいらしく、
授業が終わったらダッシュして買いに行く気満々であった

しかし、あいにくにも4時間目は世界史

この授業は前から知っていたとおり、授業終了が遅くなることが茶飯事である授業

授業が終わってもことあるごとに延長するという、
シャナの思いとは相反する授業であった。

時計を見れば12:34
12:40になれば授業が終わる予定

今日はそれほど延長しそうな雰囲気はない

シャナはまだかまだかとばかり、腕を組んで座っている

12:40になった

「それじゃあ、本日の授業は・・・」

時間通りに終わったことでシャナは笑顔を見せる

クラス一同ほっとする

なにしろ、もし、ここでシャナが買えなければ、とばっちりがくる恐れがあるからである

学級委員の池も、少々焦り気味で挨拶

おわったっ!そうクラス全員が思ったそのときである

「っと、えー言い忘れてたことがありました
天国から地獄へと変わりつつある教室

この先生の「言い忘れてたことがありました」は最低でも1分はかかる

そんなときシャナは口を開いた

「うるさいっ!教師は授業が終わったらすぐ帰ってればいいのよっ!」

久しぶりのシャナの怒鳴り声に恐れをなした教師はそそくさと帰ってしまう

少しだけほっとするクラス


ただ、15秒ほどのタイムラグがあったのは間違いない

1日目であるため、どれだけ売れるかわからないが、
10個限定という条件の下では、15秒のタイムラグは大きいだろう


「悠二、いくわよ」

そんなにメロンパンが買いたいのならば、一人でダッシュで行けばいいのに
僕を誘ったのはなぜであっただろうか

急いで教室を出て、学食へダッシュ

並び順としては僕が前を走る形となっていた

学食までは200mもない

何事もなく通常ならば30秒以内に到着する・・・はずだった

途中、廊下で僕が躓いてしまったのだ

躓いたがゆえに、ペースは遅くなる

通常時の僕のペースにあわせてほぼ等速で走っていたシャナは
瞬時に急激な、ペースの変化に耐えられるはずもなく、
僕のほうに倒れこむ形になり、同時に僕もそれに耐えられず、倒れこむ

傍から見れば、廊下で抱き合って倒れこむ形になっている

僕はドキリとしながらも、シャナは「ああもう、悠二っ!」と叫ぶ

シャナは起き上がり、僕も起き上がり学食へダッシュする

あの時転んだのが不幸だったのか、それとももうすでに売り切れていたのか
学食にはメロンパンが売ってなかった

そう、シャナは希望のメロンパンがかえなかったのだ

無類のメロンパン好きだと知られているシャナが、
ダッシュで買いに行こうとして、メロンパンが買えず、不満顔をしている
それをみればさっき言った様に原因は明白だった


さて、放課後

今日は「悠二なんて嫌い」という言葉を何度きいただろう

それもクラス中、いやとなりのクラスにまでも聞こえるような声で何度も言い放った

シャナは一人で帰ってしまっている

気分が晴れなかった僕は、机にずっと座って、シャナが家に着いたと思われる時間まで待っていた

シャナに逃げるような形になっていたのだ


池が逆立ちの練習をしながら、僕のほうに気づいたらしく、話しかけてくる

「まったく、しっかりしろよ」

逆立ちしながらの人に言われるような言葉じゃない気がしたが・・・


「母さん、ただいまー」

「おかえりなさい。あら、シャナちゃんと一緒じゃなかったの」

「う、うん、たまには一人でっておもってね」

「ふぅん、(絶対何かあったわね・・・)」

そう、千草には、内容はわからないにしても
悠二の一言だけで二人が喧嘩していることを読み取った

カンがいい千草と嘘を隠し通すことができない悠二、軍配は確実に千草にあった


一方シャナのほうはというと、あわせる顔がなかったのだ

「悠二なんて嫌い」発言をしてしまったことの後悔と、いまさら後には引けない意地

いくら戦術で強くなっても、心はまだ強くなかったのだ

そんなこんなで少しだけ街をさまよい歩いていた

今日はたまたま二人とも用事がなく、いつもなら、そう、
移動メロンパン屋とか、エルカドという喫茶店の隣にあるポンヌというパン屋にでメロンパンを買ったりとか
そんなことをする日であったのだ

だが、今日はメロンパンを買う気がおきない

別にメロンパンは裏切らない

店が手を抜いたりしなければいつもおいしいし、心はいつも満たされる
でも、なにか・・今日食べてもおいしくないきがした

焼きたてカリもふでも黄金比のカリもふでも・・・なぜかおいしくない気がした



夜。悠二は後悔していた

シャナが怒っていた理由、少し気づき始めていた

確かに僕が転んだこともあった

それだって悪いと思っている、でもそれだけじゃない

そして自分のモヤモヤも原因は同じだった

それは・・・シャナに・・・



次の日、仲直り・・・はできていなかった

実際二人の心のうちを覗ける人がいるならば、二人が仲直りしたがっていること
怒っているのではなく言い出せないということは明白だった

メガネマン池もそんな私情をよめるはずもなく、ただ、逆立ちしているしかなかった



ただ、悠二はチャンスをみつけた

そう、メロンパンを売りに来ているのは「今週いっぱい」なわけで
昨日だけではないのだ

4限は体育、女子と別。

いつもなら体育は男子のほうが先に終わる。

つまり、シャナの分までメロンパンをかっておいてシャナに渡すという作戦だ

だれか、財布の中に15円しかなかったらどうするんだ?と聞くやつがいるだろう

「ふっ今日の僕は800円も持ってるんだよっ!」と、よくわからない口調でしゃべった



現実は・・・厳しかった

そういえばそうだ、今日はサッカーの試合だったんだ

準備運動などをふくめると5分、試合は45分、どうかんがえても早く終わる気配がない

もう、こうなったら体操着のままダッシュするしかない


時計をみつめる

12:39:18

準備運動は11:54:30に終わったから、そろそろ終わる時間だ

出撃準備っ!

なったっ!!って、まって!審判っ!いや、先生っ!ロスタイムなしでいいからっ!!


結局ロスタイム2分が追加され、1分半オーバー、

ここからダッシュで1分半ぐらいと考えて、3分オーバーというところだ

昨日とさほど変わらない時間。はっきり言って絶望だ

試合のほうはロスタイムに怒りのシュート10連発を決めて
10−9の逆転

ヒーローインタビューを受けずに逃げてきた

頼む・・・間に合ってくれっ


学食についた

あたりを探す、2秒でターゲットをロックオンし、そこへ向かう

奇跡は・・・・・起きなかった

1つも残っておらず、パン仲直り作戦は失敗

しょうがなく、間に合わせとなってしまうが、
学食の別のパン屋でいつものメロンパンを2つ買った

「僕・・・だめだなぁ・・」


そんな風に魂が抜けたと思えるほどの落胆な様子で歩いていると

「ねぇねぇ・・・やっぱり坂井君シャナちゃんが本命なのかな?」
「じゃないの?昨日喧嘩したあたりから様子がおかしいし」
「どうするどうする、シャナちゃんの居場所教えちゃおっか」

コソコソ話とは思えないほどの声の大きさで2人がしゃべっている

「やっぱり。ここから離れないってことは知りたいんだね
 あのね、シャナちゃん、屋上に行ったのをみたよ」

「ありがとう」

「がんばってね〜」

感謝して屋上へ向かって歩き出す
いや、小走りになっていたかもしれない

「やっぱりシャナちゃんが本命だ」
「えー。はい、じゃあ賭け分300円」
「まいどー」

この人たち・・・賭けしてたのか・・・

屋上に通じる扉にてをかける

一度深呼吸

「シャナに・・・あやまらなきゃ」

扉を・・・あけた



シャナはちゃんとそこにいた

「あ・・・悠二・・・」

「シャナ・・・」

少しだけ重い空気

もちろんシャナも怒っているわけではない

こういう状況に慣れてないだけ

「シャナ、ごめんっ!」

「えっ・・・」

「昨日は僕が転んじゃったから・・・その」

「いいの、私だって悠二にきつくあたっちゃったから」

「だから今日僕が2つかって・・シャナにひとつ渡そうと思ったんだけど
 ごめん・・・」

通常メロンパンを見せる

そんな光景をみて少しシャナが笑う

「悠二・・・これっ」

シャナが「じゃーん」とばかりにメロンパンをみせる

そう、シャナの手には特製メロンパンがあった

「あっ・・・」

「じゃあ、悠二のと私のひとつずつ交換
 これ、悠二も食べてほしかったから
 それができなくて悠二にあたっちゃったの
 私もごめん・・・」

一人で行けばいいのにと一瞬でもおもった自分を呪った

「今日はここで食べようか」

「うん!」

少しだけ涼しい風の流れる屋上をお昼の場所に指定した

安心した

うれしかった

シャナと仲直りできたこと

また喧嘩することもあるかもしれないけど、今度はちゃんと意地張らないであやまるから
うん、シャナとこれからもずっと仲良くやってくため

そんな、誰かが聞いてれば恥ずかしくなるようなことを、メロンパンを食べながら感じていた

「悠二、このメロンパンすごくおいしい。」



―――あとがき―――

書き始めた当初は、その日のうちに解決するというものでしたが、
そしたらメロンパンの意味がなくなってしまうということで、
メロンパンを解決に組み入れてみました
公園で意地っ張りなシャナに謝るというシーンよりはこっちのほうが断然いいかと

そうそう、はじめに言っておきます
私はシャナ−悠二のカップリングしか認めません
いや、真竹−田中もいいんですが、まあこのカップリングは書きにくいのでたぶんサブです
そんなわけで一美−悠二の組み合わせはたぶん書かないでしょう

ついでに設定はアニメ版を継承していますが、ところどころにオリジナル設定がはいっています
たとえば、夏休み後の頃になると、小説9巻あたりでしょうが、
小説9巻の時点の設定はほとんど継承していません
アニメだけを見た方、もしくはアニメすら見ていない方でもわかるぐらいのストーリー設定にしています
「シャナはメロンパンが好き」ぐらいわかってればこのSS楽しめるかと

「母さん、ただいま」のあたり、あのあたりでいったん区切ってました
それで数日間放置していたわけですが、この間に状況がかわりました
そう、スクランにはまったのです
放置した5日ぐらいの間にスクラン全話見終わるというものを達成したのです
というわけで、少しだけそれ以降のテンションがアップしているかと
まあはじめて書いたシャナのSSということで、どうだったでしょうか?
なんか・・・スクランも書き始めそうだ



SSの部屋に戻る     TOPへ戻る