どこにでもいる(?)不良高校生播磨拳児
そんなおれはクラスメイトの天満ちゃんに恋しちまっていた

これまでたくさんの告白大作戦に挑戦するもことごとく失敗
自分のミスと天満ちゃんの恋に対する鈍さで気持ちすら伝わっちゃいない

そんななか妹さんに相談に乗ってもらう日々がつづき、
一緒にいることがおおくなったことから少しうわさがたって、
天満ちゃんに誤解、応援されてしまった
お嬢とフォークダンスおどったことからも誤解されて・・
どうして天満ちゃんは自分だとはおもわないんだっ
あの中で一番かわいいってのにっ!
播磨は・・・いろんな意味で戦っていた


男・播磨はバイクに乗って海岸線を走っていた

時間は5:43

今の季節で言えばちょうど日が昇るころ

そう、一瞬だけだがこの海岸が最高に美しい景色に変わる瞬間を

その一瞬を逃さず景色を見る

少しだけわき見運転になるが、そんなのは関係ない

前から車が来ないのも確認したし、ここは直線道路だ

自然の神秘ともいえる景色をみながら感動していた

「ああ・・・あとは天満ちゃんを後ろに乗せて」


〜播磨's妄想〜
「播磨君・・・きれいだね」

「ああ・・・そうだな
 でも・・・」

「・・?」

「天満ちゃんにはかなわないぜ」

「もぅ播磨君ったらっ。でも好き」

「俺もだ」

−−−−−−−−−−−
なーんてことになればっ(ニヤニヤ)
ってうわっ!!

そう、この先200m工事中の看板に気づかず衝突

妄想をしながら走るもんじゃないのである


なんとなく播磨は学校へ早く行ったのだった

別にこれといって理由があるわけでもない

なんとなく男のカンというものか

そんなカンが播磨を7:30という早すぎる時間に学校へ向かわせた

部活の朝練はいろいろとはじまっている

アマレスやら、バスケットやら、たくさんの部活が朝練を行っているようだ

教室へ向かう

誰もいるわけがない教室

しかし、そこには一人の少女が・・座っていた

少しはかなげな視線をもち、外を見つめていた少女

・・・

「天満ちゃ・・・いや塚本。」

「あ、播磨君、おはよう」

満面の笑顔で迎えてくれる

この笑顔だけでも早く来た甲斐があったってものだ

俺は自分の席に座る

知っているだろうが、席は隣同士
窓際の後ろから2番目が天満ちゃんで、窓際2列目の後ろから2番目が俺

そんなわけで、俺が席に座ると、なんだか少しだけ気まずい二人きりの空間の出来上がりだ


俺は天満ちゃんと話したかった

だが、声を出そうとすると緊張して顔が火照る

誰がどうみてもお湯が沸騰する前のヤカン

何を話そう・・・何を話そう・・・こんなに近くに・・天満ちゃんが

「どうしたの播磨君?
 顔真っ赤だよ」

「あ、塚本、これはなんでもないんだ」

「ふふっ、じゃあ涼しいところ、屋上いこっか」

「あ、そうだなっ」

口調が早くなる

当然だ。天満ちゃんからこうやって屋上にいこうなんて誘われているわけだから


屋上へ向かう階段を歩き出す

天満ちゃんは屋上の扉をあける

俺もそれに続けて屋上へのぼる


「すずしいね」

「ああ・・・」

「顔の火照りも直ったかなっ」

「あ・・・あ・・」

そうやってその笑顔で言われると悪化するじゃねぇか


「でも・・不思議だね」

「・・ん?」

「前・・そう、入学のとき播磨君みたときは怖そうなひとだなっておもったんだ
 気を悪くしたらごめんね
 やっぱり見た目すこし不良っぽいし」

まあ・・今でも不良なんだが

「でも、播磨君はすごく優しい人なんだなって
 いままで接してみておもったんだ
 人は見た目で判断しちゃだめだなって」

・・・やばい・・・天満ちゃんにこんなこといわれると・・・だめだっ・・・

「塚本・・・ありが・・」


「よぅ、お前らここでなにやってんだ?」

なにっ・・・こいつら・・・見たことないやつだっ

「俺たちの組以外の人らに手を出す気は本当はなかったが、
 そうやってこの場所でいちゃいちゃされると目障りなんだよっ!」

いや・・・いちゃいちゃできるならしてるさ・・・じゃねぇっ!!

この状況から天満ちゃんを守らなくてはっ

「塚本っ・・・後ろに下がってろ
 お前は俺が守る」

「播磨君・・・」

「ほぉたいした自信だな。こんなものを持ってると見せてもその自信は揺らがないかな?」

男はナイフを取り出す

ポケットナイフとはいえど、切れ味をなめてはいけない

あれだって振り回せば致命傷になる

だがっ!ここで逃げたら男が廃る

天満ちゃんを守るって決めたんだ

「上等じゃねぇか」

7:1という不利な状況だが、俺は負ける気はしない

3人いっせいにかかってくる

見た目俺と比べれば雑魚同然

ちょちょいと片付ける

そして2人かかってくる

こいつらも雑魚だ

漫画でいえば1コマ分で片付けられる

だが、残り2人は手ごわそうだ


見た目はこの雑魚の数十倍の戦闘力がある

ましてや、ポケットナイフを二人とも所持している

だが・・・俺はひるまんっ!

うりゃあああああっ!

突き出されるナイフを軽くよけて(いや・・少しだけ制服と肩のあたりが切れた)一発パンチ

相手の顔面にヒットし、相手は倒れこむ

そして俺は持っているナイフを誰もいない方向、つまり屋上の端っこに投げ

とどめを刺そうとかまえる。そんなときだった

「播磨君」

「っ!!」

「はっはっは・・・お前がとどめを刺せば、この小娘も・・・きられるってやつだ

・・・く・・・くそっ・・・

「ふっ・・・スキをみせたなっ!」

さっきまで倒れてたやつが急に襲いかかってきて、腹部をもろに殴られる

「弱いやつだなっ・・・」

「ああ・・こいつ播磨とかいったやつだよな、
 この学校で一番の不良(ワル)だと聞いたが、ぜんぜん強くねぇ」

「く・・・・」

「さて・・・この小娘をつれていこうか」

「播磨くんっ!!」

そう、播磨はタイミングを見計らっていたのだ

天満ちゃんを人質にとっている人がナイフをしまって歩き出す前のコンマ秒のスキを

そして、そのスキは一瞬だけやってきたっ

「うりゃあああああっ!」

「ぐぁっ!」

天満ちゃんを少しも傷つけることなく、天満ちゃんを救った

「バ・・・バカな・・・どうして・・・さっきもろに食らったはずだろ」

「2つだけ教えてやろう
 ひとつはな・・・俺はそんなに弱くねぇ
 そしてもうひとつはな、守ると決めたものは死んでも守るんだ
 だから・・・そんなへなちょこなパンチじゃ・・・ぜんぜん痛くねぇんだ
 そんなきたねぇことしねぇと勝てないやつは・・・強くねぇんだよっ
 播拳(ハリケーン)キーックっ!!」

「ぐぁ・・・」

「ぐぉ・・・・」

モロにくらわせた

たぶん気絶して10分は起きないだろう

そんなとき、屋上の扉が開いた

「播磨っ!!」

生徒指導の先生が待っていた

厄介なことになりそうだ

生徒指導室へ俺は引っ張られるようにつれてかれた

そんな俺を天満ちゃんが追いかけてくる

「先生、話聞いてください」

「俺は播磨だけに用があるんだ」

「私だって状況を見てます、だから、播磨君が悪くないことだって証明できます
 証人になれます」

「あれだけ暴れておいて、悪くないだとっ」

そんな会話をしていると生徒指導室へ到着

「じゃあ話を聞こうか」、と先生

俺と天満ちゃんは生徒指導室のいすに座って話す

「播磨君は・・・悪くないんですっ」

「どういうことだ?」

「まず・・・私が屋上にいこうって誘ったんです
 それで話してたら・・・あの人たちがやってきて・・・
 喧嘩をうってきたんです」

「かわなければいいことだろう」

「そんな状況じゃありませんでした。相手はナイフをもっていました
 出入り口は占拠されていて、とても逃げ出せる状況じゃありません
 播磨君は私を守るために7人相手に戦ってくれました
 播磨君は一度肩を切られてます
 播磨君は痛くないって言ってるけど、それでもやっぱり痛いと思います
 それでも播磨君は私を守ってくれました
 このような怪我をしながらも一人で
 途中私が逃げられなかったばかりにつかまってしまいました
 そしてそのスキに播磨君は力いっぱい殴られました
 でも・・播磨君はそんな状態でも私を守ってくれました
 だから・・播磨君は悪くないのです」

「まあ・・・そこまでいうなら・・・仕方ないなっ
 播磨・・・疑って悪かったな」

「あ・・あと、先生・・・私たち少しだけ二人にしてください」

・・・えっ・・・っ

ドキッ・・・ドキッ・・・

「ああ、わかったよ」

先生が扉をでていく

数秒重い空気が流れる、先に話し出したのは天満ちゃんのほう

「播磨君・・・ありがとう」

「あ・・ああ・・」

「やっぱり播磨君はやさしいんだね」

「そ・・そんなことねぇよ」

「私にはわかるもん」

「ありがとう・・・傷・・・痛むよね・・・」

肩のほうをなでる

そして、天満ちゃんは・・背中の傷もなでる

「・・・っ!」

「この傷・・・覚えてるよ・・・
 正確には今日思い出したけど・・・
 あの時と同じように播磨君は私を守ってくれた
 誤解してごめん。あの時播磨君のことを変態扱いしたけど
 そんなやさしい播磨君がそんなことするわけないよね
 心強い播磨君の後姿をみて思ったんだ」

「あ・・ああ・・」

突然のことに「ああ」としかいえなかった

「私ね・・・このこと誰にも言ってないけど
 人の心が読めることがあるんだ
 私を好きになった人のこころが読めるの
 だから・・・播磨君の気持ちは、最初から知ってたんだ」

「・えっ・・・」

「私もね・・・播磨君のことが好き・・
 最初想われてると知った時はなんとも想ってなかったし、
 すこし怖いことがあった
 あのときのことも思い出せてなかったし、だから・・・
 でもね、播磨君の本当はがんばりやさんなところとか優しいところとか
 播磨君のことを少しずつ知っていくうちに、私も好きになってたんだ」

「塚本・・・」

「ほら、播磨君心の中ではいつも天満ちゃんって呼んでて
 言葉のときだけ「塚本」になおすの知ってるよ
 たまに直し忘れているときとかあるの気づいてるから
 もうこれから・・・天満ちゃんでもいいよ」

「そ・・そうか」

「うん、
 播磨君のことを好きになっていくうちに、
 播磨君ぜんぜん告白してくれなさそうだから、少しずつ気づかせようと
 がんばったんだけど、それでも私がなにかするといたずらっぽくなっちゃって
 あと、海のとき告白の練習と称して私播磨君に告白してたのに
 そのこと気づいてくれないんだもん」

「あ、ごめんな」

「うん、でもいいの。播磨君は播磨君だったから」

「どういうことだ?」

「なんでもな〜い
 私は播磨君の心が読めたから、播磨君のこころのなか知ってたってこと」

すこしだけ小悪魔的な笑顔をみせる

「今日も・・・守ってくれて・・・ありがと
 よし、じゃあ少しだけ改まって言うね
 私・・・播磨君のことが」

「いや、俺に言わせてくれ
 俺は・・・天満ちゃんのことが・・・好きだっ
 大好きだっ
 俺と・・・付き合ってほしい」

「うんっ!」


もう言葉などいらなかった

俺の心に刻まれているのは天満ちゃんへの想い

言葉にすることなく伝わる天満ちゃんへの想い

俺は心を読むことができない

だけど、なぜか天満ちゃんの気持ちだけは読めるような気がした

だから俺たちは・・・言葉を交わすことなく・・・口付けだけを交わした・・・















「よし、できたぞ。妹さん、この漫画、読んでくれ」

「はい」

愛する人を守るというストーリーの、いつもどおりの漫画が完成した

さて、妹さんとは、天満の妹、八雲のことである

俺の漫画のアシスタントをやってもらっている


「えっ!」

妹さんはラストページの近く、そう、ヒロインが告白するあたりでビクッっとした

なにか心当たりが・・・あるのか?


「妹さん、どうかな?」

「え、いいとおもいます」

「ヒロインが心を読めてるってあたり、少し無理やりすぎたかな
 少し非現実的になってるし」
「いえ、そんなことは・・・ないと、おもいます」

すこしだけ含みがあった言葉だ

八雲には心当たりがあったのだから無理もない


「ようし、このコンテストの応募までまだ時間はある
 いっちょ届けてくるか」

「あ、私も一緒します」



―――あとがき―――

はい、この展開に気づいた人は何人いたでしょうか
あ、ばればれでしたか?
まあ、そうでしょう、播磨と天満がこんな展開になることは現段階ではないですからね
最終回以前にこのような展開になってしまえば、スクランの魅力は少し薄れるでしょうし
まあ、そんな感じです

ちなみに作中の「天満」「播磨」はわかりやすくするための名前置き換えです
よって播磨's妄想の中での登場人物で、播磨が書いた漫画の中ではその名前は使われてない(とおもいます)
八雲には少し播磨が天満のことを好きなのがばれてますし、支障はないですが、
もし連載されたのならば確実に誰かに読まれ、ばれます
まあ、どうみてもばればれといえばばればれ・・・ですがね

そうそう、言い忘れました
これらのSSは世界観が交錯しています
シャナのSSを書いたときに「エルカド」が出てきたとはおもいます
その「エルカド」とは、八雲がバイトしている喫茶店でもあり、
播磨が漫画を見せに行くときに訪れる場所でもあります
もしかしたら、シャナの世界でスクランのキャラがすこしだけでてきたり、逆もあったり
もしくは別の種類のSSでこれらの二つのSSのキャラが出てきたりするかもしれません

特にコメントはないですね
言ったとおりの状況ですから
とりあえず文のとおりに判断してください
それ以外は特に言うことはありません



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