水月には勇敢な気持ちと、少し悲しげ気持ちがあった
私たちしかできないからこそ、私たちがやらなくてはならないのだ、という気持ちと
本当は、一人の女の子として生きて生きたい・・・でも無理よね・・・という気持ち
前者ももっともだが後者ももっともである
普段の生活はなんらかわりない「一般人」としての生活だし
もっとも、これらの問題にかかわるまでは毎日が普通だったのだ
あの「世界を守る素質がある」といわれたあの日まで。
もしあの時私たちが行かなかった場合、どうなっていただろうか
いまの「結果」としてこのような状況になっている以上、
「行かなかったら」なんて時間は存在しないわけだが、それでも考えてみる
・・・
ほんとうに・・・私たちだけなのかな・・・
このような能力をもつ人、
私自身もこのような能力を人間が持っているということを知らなかったわけで
世界は広い
もしかしたらもっと違う能力をもつ人たちがいるかもしれない
・・・そもそも・・・あの組織はなんなの?
地下組織という名のグループは決まって必要なときだけに現れ、
必要がなくなればいなくなってしまう
そもそもおかしいことだらけじゃない?
なんで彼らは怪物の出現時間を知ってるの?
そんなことを一人で考えていたが、扉の開く音
「孝之!」
なんだか泣いて甘えたくなった
そしてそれを実行する
私だって、心細いもん
孝之はそんな私を優しく包み込んでくれた
少し泣いて甘えて、なんだか安心して・・・
ほんと、孝之がそばにいてよかった・・・と思う
それに比べて、遙や茜は強いと思う
こんな風に甘えることができる人がいないというのに・・
がんばれて・・・
ゆっくり眠りに就く
このまま・・・何もなければいいのに・・・
もちろん、そううまくはいかないのが現実であって、翌日水月の元に、
いや、3人娘隊全員のもとへ、手紙が届いた
「今日は地下組織に集まってほしい」
前回の敵が出現してから、まだ1週間程度しか経過してない
呼ばれるってことはまた敵が現れるってこと?
心の準備ができてないわよ・・・
と思いながら、少しだけ深呼吸、地下組織へ向かった
途中遙や茜と合流し、地下組織へ向かう階段へ
階段を下りていると、扉を開く前に中から隊長が出てきた
「ようこそ、地下組織へ
この間は大変だったよ
移動手段がないから、ここまで歩いてきたんだ」
「う・・・」
隊長は少し皮肉を言う感じでこっちを見る
「・・・ごめんなさい」
「まあわかってくれればいいんだ
どうぞ、こちらへ」
招かれるままにその中へ、そしてさらに奥の部屋へ進んだ
「3人分の椅子、そして、向こうには隊長一人」
遙はまた目をキラキラさせて、隊長を見る
やっぱり・・・遙・・・恋しちゃったのかな・・・と見てると
「コホン」と隊長がしゃべりだす
「3人に集まってもらったのは、【特訓】をしてほしいんだ
あーもちろん、今のままでは【覚醒】が起こらなければ
能力が上がらないことも
覚醒が滅多に起きるものではないこともわかっている
また、戦闘で2回中2回とも覚醒に成功したことから、
戦闘でその能力が発揮されることはわかった
だが、万が一にも、それらが奇跡であった場合
次の戦闘・・・いつ起こるかわからないのだが、その戦闘で
発揮できるのだろうかという心配がある
それに、覚醒状態の能力を強めるためには
通常時の能力を上げることも大事だと思う
そこで、今日から定期的に特訓というか修行をしてほしいのだ
もちろんこれらは私たちの勝手で行っているものだ
だから、その時間に相応する報酬は出そうと思う
それと、さっきも言ったように当分敵が来るというわけではないので安心してくれ」
橋田ドラマもびっくりの長さの台詞を隊長は一通り話した
「報酬とはどのぐらいですか?」
「いっぱいほしいのか?」
「いえ、そうではなくて、もらえるに越したことはないんですが
やはり、額がただ同然の場合、ただ働きしているような気分になったり
それが原因で修行に身が入らないことだってあるかもしれません」
「ああ、ただ同然、なんて心配しなくていい
そもそも、【正義の味方】という仕事の相場はわからないのだが
まあ、10000円/時間ぐらい用意しているよ
実際、1回の修行でできる時間は1時間ぐらいだから、
1回につき10000円と考えてくれればいいだろう
世界を守ってくれた人たちにと考えれば安いもんだ」
「どうする茜?」
「うーん・・でもどうせまた敵は来るんでしょ・・」
「でも・・・」
「やります!」
茜と話していたらいきなり遙が元気いっぱいにそう答えた
「じゃあ私も」と、私たちは納得した
さて、その日も1時間だけ特訓をした
疲れたかといえば、それほど疲れていないし
疲れてないのかといえば、そうでもない、そんな微妙な状態になる
「これ以上は無理だな
なによりも一番健康管理が大事だからな」
その特訓を終え、その日の報酬を受け取り、次の修行の日時を聞いた
「ちょうど一ヵ月後か・・・」
これら、世界を守るという任務は重すぎて耐えられないかもしれないが
とりあえず目の前の「新しいバイト」的な感じだけをみることとする
1時間少しだけ楽な修行を行うだけで1万円といえば、魅力的なのかもしれない
それからも1ヶ月ずつ修行を続けていた
もちろん向こうは日時を考えてくれる
大会といえばずらしてくれるし、1年で12時間はたらくだけで12万円という、
まあどう考えてもおいしいバイトをしているのだ
って・・・やっぱりこんな楽天的な考えじゃだめだね・・・
一応世界がかかっているんだし・・・
好都合にも、1年後の8月27日には敵がやってこなかった
一応1年後ということだけあって、構えていたのだが、地下組織の人も「こないこない」といっていた
なぜわかるのだろう
8月26日という時間をすべて構えているだけで使った私だったが、8月27日になった瞬間
クラッカーを鳴らしながら、孝之、そして遙や茜が祝ってくれた
そういう「普通の誕生日」でいられたことがうれしかった
<地下組織>
「一向に覚醒する気配がないな」
「こうなることはうすうすわかってたがな」
「次の襲来はいつになるんだ」
「あれから約3年後、つまり、あと1年と11ヶ月ほどだ」
「これからも修行とやらを続けさせるのか」
「ああ、3年という間に彼女たちの能力を風化させないためにね
3年なんて、地球規模で考えればちっぽけな時間だが
人間を変えさせるには十分すぎる時間だ
これらの能力だけが頼りの私たちにとって、
この修行は命綱を太くする工事のようなものだ」
「よくわからんが・・・」
「やつらはもう一度だけ来る
それももっと強くなって」
「もう一度って、そういえるのか」
「ああ、もしかしたら相違点が発生するかもしれないが
確かにもう1回だけだろう
それにこの話だって5話で終わるはずだ
あと1話で2回も敵がでてくるはずがない」
「それはいっちゃだめだろ・・・」
「ははっ、そうだったな
とりあえず最後のときも、君に同行願うよ」
「わかってる。彼女たちのため、だからな」
「にしても、君にこのような能力があったなんて驚きだ」
「そうか?あんたこそわかってるはずじゃないか」
「俺にはそれほどの能力は持ち合わせていない
1度は危険な目にあったことはあるが、それはただ
生還させてもらっただけだ」
「そうそう、念には念をいれるが、君は一応は乗っていないことになっている
彼女たちはそれらのことを知らない
むしろ、君は違う場所にいることになっているからな
だから絶対姿を現しちゃだめだぞ」
「わかってるって、これを侵害すると重い罰になって困るからな」
「わかってるならいい」
「あんたのところだと、どうだったんだ?最後は」
「それほどでもなかった
一撃で終わっちゃうほど弱かった
それなのに街が全壊にさせられるとか微妙に矛盾しそうな感じだが
だが、こっちも同じように来るとは限らない
全体的にパワーアップしているような気がするからな
それにパロネタ主体から戦闘主体にかわりつつある」
「つまり・・・強くなるんだな」
「そうだろうな」
「・・・俺たちの時代の最後は、華で終わってやるぜ」
「いい心意気だな、まあそれでかなり弱かったりしたら拍子抜けするな」
「それはそれでもいいとは思うが・・・」
<約2年11ヵ月後の8月26日>
「孝之」
「ん?」
女の勘とはすばらしいものだと話には聞いたことがある
ただ、この勘だけは外れてほしかった
「なんとなく・・・今日いやな予感がするんだ・・・」
「どういうことだ?」
「3年前と4年前のこの日、戦いに出たでしょ
去年と一昨年は来なかったけど・・・
それでも今日はなんだか来そうな気がするのよ」
そういい終わると同時に携帯がなる
「3人娘隊専用」と携帯のディスプレイには表示されている
「・・・出た・・・ほうがいいのかな・・・」
「・・・よし、俺が出る」
「孝之!?」
「あーもしもしっ!
鳴海孝之です」
「ああ、水月さんの彼氏のね、水月さんに伝えてほしいことがあるんだ
変わってくれないか?」
「ちょっと、席をはずしててね(嘘)
水月が携帯を忘れていったんで勝手に出た次第さ」
「そういうことなら話は早い、今日、99.9%敵は現れる
今回も夜の10時過ぎだろう
だから、今から準備していてほしいと、伝えておいてほしい」
「水月に今日会えるかな」
「きてもらえないと困るんだがね・・・
一応対抗できるのは彼女たち(3人娘隊)しかいないわけだし
あとは・・・君にもがんばってほしいところだ」
「は、はぁ」
「じゃあ伝えたぞ、今日の10時過ぎだ」
「わかりました」
「3人娘隊隊長からの電話だ、今日の10時ぐらいに敵が現れるらしい」
「3年前は乗る気じゃなかったのは覚えてる
だから電話は俺が受け取った、もし、水月がいきたくないってならいい
伝えられなかったことにする
水月、どうする?」
「・・・いくわよ・・・」
「ああ・・・そうか」
「無理にとはいわないけど・・・孝之も今日はそばに来てほしい」
「・・・ごめん・・・行けないんだ・・・
待ってることしかできないんだ」
「・・・そう・・・ごめん」
「ごめんな・・・」
「そうだよね・・・ちょっと言ってみただけだから
ごめんね」
「・・・」
守ってくれるって言ったのに・・・うれしかったのに・・・
「じゃあいってくる」
「ああ・・・」
少し気まずい流れの中、地下組織の入り口に到着
「水月先輩っ!聞きました?
これが最後の敵だそうですよ
それと、今日勝てばいろいろな組織から2700万円もらえるそうですよ」
「そう・・・」
「・・・水月先輩?どうかしたんですか?」
「ううん?なんでもないの・・・」
「・・・水月?」
「あーちょっと考え事してただけ、遙、茜、心配かけてごめんね」
「・・・(やっぱりちょっと変だな水月)」
「やあ、よくきてくれたね。今日の10時ごろ、詳しい時間はわからないが
そのぐらいの時間に敵はやってくる
それまでは最後の調整特訓といってほしい」
「はいっ」
「プレッシャーをかけるつもりはないが、地球は君たちにかかっている
がんばってほしい」
「わかりましたっ!」
「はい・・」
「ん?水月くん、なにか元気ないようだね
彼氏さんとでも喧嘩したのかい?」
「あ、いえ、そういうのじゃなくて」
「責めるわけではないが、今回が最後だからやっぱり気を引き締めてほしい」
「はいっ!」
「いい返事だ」
「これまでの30回あまりの特訓からもわかるように、
あれ以来まったく覚醒していない
前回の経験から、戦闘になると覚醒するということかもしれないが
それでもすぐに覚醒できる保証はない
一刻も早く覚醒ができるという能力を特訓できればいいのだが
さっきも言ったようにそれができない
だからこそ、覚醒するまでの時間稼ぎ、および、
覚醒後の能力を少しでも上げられるように、調整だ
ああ、ちなみに調整だからそれほどハードなことをやると逆効果だから気をつけてくれ」
「はい」
少し休みながら特訓を続ける
人間の時間の感じ方とは、ある範囲における時間と、対象となる時間の比率で決まるらしい
たとえば、人生後半になってくれば、時間の感覚が早くなるというのは
これまでの時間とその日の時間の比率がだんだんと小さくなっていくからである
水月たちは「集まった時間=14:00 と 出動までの時間 約22:00」を元に
時間を感じていた
特訓調整を終わって、15:00、あとはひたすらゆっくり待つのみ
リラックスできる椅子やら、テレビやらが設置されていて、休めるのだが
なんとなく緊張感からか1分1分時計を見てしまう
まだ16:00か・・・と時間を遅く感じていたのは言うまでもない
もちろんこんな緊張感じゃテレビなんて見れないのだが、テレビを消すというわけにもいかない
それをすると、その無音と、周りの実験の機械音で、余計に無機質さを感じるのだ
だから見たくもないゴルフ中継でも見ていたほうがましだったのだ
「18:00・・か」
やっと半分である
このあたりから時間感覚が進みだす頃か
水月は少しだけ後悔していた
無敗の3人娘隊といえど、それは今までのことであって、勝てる保障というのはないのである
もし、負けた場合、どうなるだろう
あのときの孝之とのギクシャクしたままでの別れだ
それは私もつらいし、孝之だってつらいんじゃないか
このまま謝りにいくという選択肢は実行できない
うーん・・・
絶対に負けられない・・・
だが、なんとなく水月にはいやな予感というものを持ち合わせていたのだ
20:00
「もうそろそろだな」
テレビでは旅番組が放送されている
リモコンが見当たらないので、携帯電話に実装されたリモコン機能を用いて
ほかの局を探ってみた
そうしても特にいつもと変わらない「その曜日の番組」が放送されている
敵が襲ってくる、なんてこと、誰も思わないんだろうな・・・
そのようなことを思っていても、等間隔に孝之との今日の別れの後悔が思い浮かぶ
最後って言うからにはやっぱり強いのが来る気がする
「・・・」
「21時・・・」
「21時10分・・・」
「21時20分・・・」
「21時30分・・・」
それから5分ほどたったあたり、「ビーッビーッビーッ」
と、警告音のようなものが鳴り出す
その瞬間見ていた生放送番組は一瞬光に包まれて砂嵐になった
「なにかあったのねっ!」
「すごい・・・」
見事に東京系列のテレビ番組は全滅となった
「出撃だ」
「アカイテキ、トウキョウト、ニ、シュツゲン
ヒガイ、ジンダイ、ノ、モヨウ」
「また東京か!」
「・・・東京に出現したことあったっけ?」
「うーん・・・最初は山梨だったし、次は霞ヶ浦だったし」
「ああ、こっちの話だ、気にしないでくれ」
「よし、時間との勝負だ、ヘリで移動するぞ」
いつも思うのだが、よく地下にこのような組織がつくれたなと思う
広大すぎるのだ
ヘリコプターの設置位置までは自転車のようなもので移動し、そこからヘリに乗り込んだ
そこには大型ヘリがあった
「いくぞ」
隊長が操縦し、ヘリはそのまま東京へと直進した
東京は悲惨の地だった
なぜなら、一部分が平地化していたのだ
東京といえば、高層ビルが立ち並ぶ地
だが、敵の歩いたところはそんなことはなく、ほぼ平地
「ひどいわね・・・」
一刻も早くこの敵を倒さなくては東京は大変なことになるわけで
ヘリを進めている間だけでも、逃げ惑う人々が苦しみながら死んでいくのが見えた
・・・悲しい・・・
こうも無残に死んでいくなんて
私ももし油断して負けちゃったら・・
「人形」
動かない人間は人形と同じ
ただ、そこにおいてあるただの人形になってしまう
少し怖かった
そもそも死とはなんだろうか
生まれたことだって奇跡で・・・いやそもそも自分の意識とはどこから生まれてくるのだろうか
考えてみれば不思議なのだ
自分の心をほかの人に移して、ほかの人の考えをのぞくことだってできない
寝ている間は意識はどこにあるかわからないが、基本的には自分自身には自分の意識が宿る
死んだら・・・
意識というものがなくなり、元の体はただの人形となり、自分の心はどこへ・・・
魂はどこへ・・
孝之との想い出はどこへ・・・
「・・・・・ぱい・・・」
「・・・・き先輩・・・」
「・・水月先輩っ!・・」
「・・・っあ、うん!」
「どうしたんですか?やっぱりなんか考え事でも?」
「あーうん、なんでもないの・・・」
「私たちの出番ですよ
もたもたしてると、被害者がどんどん増えちゃいます
だからはやいところいっちゃいましょう」
「うん!」
ヘリから出る、なんとなくどんよりした空気を感じた
私たちが降りていったところを見ていた人もいるが、そんなこと気にしている暇もなかったのだ
むしろ、人々はヘリコプター目指して走ってくる
こうなれば二次被害も目に見えている
ヘリコプターに乗れる人数なんて限られているのだ
「しょうがない・・・すこしだけ小細工だが・・・」
隊長はヘリコプターの入り口に移動化の術を使った
これによりヘリコプターの乗り口あたりから、ランダムに移動ができるようになっている
ちなみに日本のどこかの陸への移動となる(東京都以外と指定した)
移動場所はすべて把握できないので、移動したという記憶と移動前の敵の記憶を消去し
いくらか記憶を書き換えるということをした
まあこれで人の回収はしなくてすむわけだ
なお、なぜランダムかというと、隊長には特定場所へのワープをさせる能力がないからだ
もちろんそんな能力があれば、ヘリコプターでの移動を使わずに、ここまでワープで来るのだがね
記憶操作などの術は得意なようで、家出をした、旅をしたなどの設定にいろいろ書き換えていた
さて、そっちのほうは、隊長に任せるとして、覚醒準備をしている
手鏡を取り出し、想像する
・・・キラーンと光り、私たちの姿は・・・
「・・・スクール水着・・・?」
3人ともスクール水着だった
「・・・これって誰の趣味かしら・・・?」
「・・・隊長じゃない?」
だからといって隊長は向こうでがんばっているので、やり場のない怒りを込めたまま、
まあいいやと戦闘開始準備にはいった
「じゃあいくよっ、『ライブラ』っ!」
敵の能力値を読み出す術である
Attack ・・・ 19804×3(59412) Defence・・・ 107×3(321) Magic ・・・ 333×3(999) Life ・・・ 50007×3(150021) |
すこしのタイムラグ後、隊長が言う
「やはり・・・強くなってたな・・・」
「やっぱり最後に来る敵は強いのね・・・」
ちなみに(×3)というのは敵が赤いからで、これ以上の説明は省略する
「油断すると大変なことになるぞ
Magicポイントも相当あるから、なにか技を使ってくるかもしれない
そうなると厄介だ」
「はいっ!」
私だけなんとなく気が抜けた返事だった気がする
なぜならこんなときまで孝之のことが頭から離れなかったのだ
喧嘩というものは何度かしたことがある、もちろんそれはどちらかが非を認め
1日や2日で仲直りする事ばかりだった
だけどこれは本当に仲直りできるのか
孝之自身にはそんな・・・私たちみたいな能力がないのだろう
だからこそ、孝之はその分、必死になって私たちを支えてくれたのだ
それなのに私は、それらのことを当たり前だと思っていたのだ
彼氏だから?そこにいたから?違う、それだって「当たり前」なんてことにはならない
孝之にだって孝之なりのやりかたはあったんだ、それを否定したのだ
もう少しだけゆっくり聞いておけばよかったのだ
”孝之がこれない理由”
なんなんだろう
いつものこと・・・いつものことっ・・・
あっ!
もしかして・・・私のために・・・
これまで、私たちが戦い終わったら一番に迎えてくれたのは孝之だったのだ
私の誕生日ということもあり、戦いのことをすぐに忘れられるようにということもあり
毎回、楽しい席を用意してくれたのだ
もしかして・・・今回も用意してくれてたのかな・・・
わからないけど・・・でも孝之はいつも支えてくれてたのに・・・
それなのに私怒り気味で出てきちゃって・・・
考え事をしていた。
人はそんなときに「油断」するのである
「先輩あぶないっ!!」
キャッ
敵から発せられた何かを私は受けてしまった
「攻撃のほうは瞬間的にガードしたが、術のほうは瞬間では無理だった・・・」
「先輩・・・っ!!!」
私・・・油断してたよ・・・こんなときに・・・
隊長の言葉もきいてなかった
自分勝手に行動してた
「今の術は多分ストップ系の技だろう
詳しくはわからないが、速瀬君は、いま動けないはずだ
油断するなといったのに・・・
受けてしまったものはしょうがない
彼女に盾をつけて、動けるようになるまで時間をかけるしかない」
「うんっ!」
「シールドリアライズっ!」
水月の前に盾が構えられた
これは遙の技である
遙は守るべき人のことは守れるという能力を持つ
しかし、その盾はすぐに破られた
いたっ!!!
体がしびれて声が発せられない
「だめ・・・なの・・・」
「速瀬君にいくらかのダメージはあるが、軽減はされているはずだ
なんかいもシールドをかまえて時間を稼ぐしかないんだ・・・」
「シールドリアライズっ!」
「シールドリアライズっ!」
・
・
・
5ターン後、その能力が使えなくなった
そう、MP回復能力を使用分が上回ったのである
「次は構えられない・・・」
うっ・・・まだ動けないよ・・・
「敵の攻撃が来るよっ!」
攻撃自体が大きい
「わずかな望みである、「回避」の可能性も薄れてしまったようだ
あとは、速瀬君自身がこの攻撃を受けきればいいけど・・・」
もう・・・無理だよ・・・私・・・
体もぼろぼろだし・・・
ごめん、みんな、私のせいでこんなふうに
ごめん、隊長、油断してたよ・・・
ごめん、孝之、気持ちも知らないで攻めたりして
そして、さよなら、孝之・・・愛してるよ・・・
「だめっーーーーーー!!」
どうしようもないこの状況で、敵の攻撃はもろに水月の元へ向かう
はたして、水月の運命はっ!