涙を流しながら最後の一言を言い切る
その言葉を最後に遙は、涼宮家から、鳴海家にうつった
そう、孝之と一緒に生きていく、その決意をした言葉でもあった
事の発端は3月14日、あるいみ流れというか勢いで遙にプロポーズをしたのは俺
警察に捕まりそうになったというのは、まあもう忘れた
バレンタインデーのお返しとして俺は遙に指輪を
そして、その流れで「結婚してくれ」と
遙の答えはYES
まあ、前からそういう流れにもなっていたし、
オレたちにかなうカップルはいないっ!
というわけで、どうせ結婚式を挙げるなら遙の誕生日である3月22日がいいじゃないかということで
この日に式場予約をした次第だ
急な話ではあったが、式場の予約はOK
その日の予約にキャンセルがあったことが幸いする
学校の卒業式は3月23日であり、卒業式の前の日に結婚するわけだ
というか卒業式が3月23日っていうのは遅すぎる気がするが・・・
遙はそれからずっとニヤケ顔だったらしい
茜ちゃんがいきなり電話で「お姉ちゃん、ずっとにやけてて気持ち悪いよ」と電話が来るぐらいだ
婚姻届のはんこを押すのも1日練習したらしいし、
いきなり床をごろごろしたり、すごかったらしい
茜ちゃんは最後にこういった
「お姉ちゃんを絶対幸せにしてあげてね」
いつもの茜ちゃんの口調じゃなくて真剣な一言
なんだかんだいっても、心配なんだな。
ああ、わかっているさ
おれだってバカじゃない。
俺は、遙を幸せにしてあげるために・・。そう、俺が幸せにしてあげるという決意なんだ
3日前。3月19日、今度はお父さん(遙父)に部屋に呼ばれた
2人だけの話
こちらもいつもの「はっはっは」という笑っているお父さんじゃない
真剣なまなざしで見つめている
それからたくさんのことを話した
そこからも、娘を想う父の想い というのが感じられた
それはそうだ。きっと俺のあのプロポーズ
ああやっていつも「結婚しなさい」とか冗談で言っているとはいえ、
やはり悩んだだろうな
それが故に、オレたちもみんなに支えられているんだ と感じた
遙、俺は遙を絶対に幸せにしてやるんだ。だから、一緒に幸せになろうな なんて思う
とうとう3月22日がやってくる
夢なんかじゃない
現実世界の俺は、いまスーツをきて立っている
ドアが開く
遙と、遙のお父さん
赤いじゅうたんの上を、ゆっくりと―
ウェディングドレスを着た遙
ああ、きれいだ
そんな思いと共に、あの夏の日が思い浮かんだ
遙と始めてあった日
花火を怖がっていた遙
絵本の話をして、とても楽しそうに話していた遙
告白を受けたとき
それでもなかなか燃え上がらず傷つけてしまった日々
自分自身気づいて、遙に告白したとき、そしてそんなときでも温かく包んでくれた遙
ホームでミートパイを食べた日・・・ああ、ほんと、幸せだって思えたんだ
絵本作家店にいったとき。あのときハート型コロッケたべたっけな
・
・
・
時間にすれば10秒〜20秒ほどだっただろう
そんな短い間だったが、20,30もの思い出がどんどんと思い出す
そして、再びおもう
おれは遙と一緒にいたいんだ
おれは、遙を幸せにするんだっ!という決意
遙が隣に到着する
そしてオレたちは歩き始める
沿道には招待した何人か
そのなかに速瀬や慎二もいる
慎二「このぉ、幸せになりやがって」
水月「遙、似合ってるよ」
ケーキ入刀を行う
乾杯を行う
途中お色直しがあって、
その後、慎二と水月からはお祝いのうたをもらった(・・・まあ慎二は1回だけ音程外したのわかった)
そして手紙朗読がやってきた
「お父さん・・・お母さん・・・私いっぱい幸せになるから
私は、お父さんとお母さんのところに生まれて本当に良かったと思っています
(中略)
本当に本当にありがとう・・・
お父さん、お母さん、今まで本当に・・・」
遙は涙を流しながらの手紙朗読だったが、ここにきて大きく涙を流した
「ありがとう。」
最後の言葉を言い終える
この手紙を読みえるということは、つまり、
いままでのお礼でもあり、新しい生活への転換の決意でもあり
小さな集団でいう「家庭」からの別れでもあるわけだ
ああ、お父さん、お母さん、遙を、娘さんを、
絶対幸せにして見せます
お父さんやお母さんにはかなわないかもしれません
それでもそれに追いつくぐらい、いや、抜かすぐらい遙を幸せにしてみせます
孝之「遙。」
遙「孝之君。」
孝之「二人で、幸せになろうな」
遙「うん(はあと)」
誓いの口付けを交わす
これから助け合って幸せになるんだ
・
・
・
その夜、2家族合同で食事を取った
俺の親のほうは、付き合っているのを知っていたのと、プロポーズする前にも宣言
結婚するというのも報告したのだが
びっくりはしたが、反対もほとんどしないような、まああっさりしていたのでとくには書かなかった
とはいえど、「大きくなったな」とか、「幸せになれよ」とか、思うことはやはりあって
結婚式の間でも泣いていた
遙の家族に溶け込んでいたこの数ヶ月間もあり、あっさり許可してくれた親には何も思わなかったが
こうやって式を行っているときに、親のありがたさなどが始めて気づいた気がする
そんな、まあ勢ぞろいな状況で食事をとったのだ
孝之母「ほら、あなた・・・飲みすぎですよ」
孝之父「いいじゃないか、こんなに孝之がりっぱになって、こんないいお嫁さんみつけて」
遙父「いや、ほんとうにいい息子さんじゃないですか。うちの遙にはもったいないぐらいに」
孝之父「いや、こちらこそ、うちの孝之にはもったいないぐらい」
褒めあいとともに、お酒を勧めあっている
ひとつ「お父さんやお母さんの気があわなかったらどうしよう」という心配もあったが、その心配はないようだ
まあ、こんなときちょっと遙に
孝之「遙、ちょっと抜け出そうか」
遙「うん。」
小声での話
そしてそぉっと、抜け出し、外へ行く
孝之「星、きれいだね」
遙「うん。」
孝之「式とかあって、言いそびれちゃったけど、誕生日おめでとう」
遙「あ、うん(照れ)私も、こんな、すごいプレゼントありがと☆」
孝之「遙の誕生日なのに、俺まで、遙というすごいプレゼントもらったからな」
遙「あはは☆
ありがと(はあと)」
孝之「おまじない、しようか」
遙「うん!」
遙「夜空にほしがまたたくように」
孝之「とけた心は離れない」
遙「たとえこの手が離れても」
孝之「二人がそれを」
遙&孝之「忘れぬ限り」
流れ星が1つ流れる
星空までオレたちを祝福してくれているのだろうか
孝之「遙、」
遙「孝之君。」
キスを交わす
言葉は必要ない
名前を呼ぶだけでオレたちの心は通じ合う
お互いの顔をみつめて、ちょっと笑う
おれは後ろから遙の肩にてをあてる
そして二人で空を見上げる
茜「やっぱりお姉ちゃんたち抜け出してたんだ」
まあ、いないんだからそうだな
茜「みんな待ってるよ。記念写真とるんだって」
そうだな・・・みんなところへ行くか
3月23日
この日のことがあるために、前日はお酒をのまずにいた
そう、卒業式
高校在学中に結婚するという、白陵では前代未聞のことをした俺だが、まあ普通だ
二人で登校
学校へつくなり、
水月「お、お二人さん。相変わらず仲いいね」
慎二「涼宮、じゃもうないのか、鳴海ーって呼べばいいのか?」
まあ、冷やかし。
とはいえど、やはり「支えられている」わけで、なんとなくうれしいわけだ
それから、いくらか昨日のことなども話した
プロポーズしたときのことも少し話した(もちろん、警察に職務質問されたことは闇に閉ざした)
卒業式の会場へ
いろいろあって、いまいち「卒業」という言葉が思い浮かばないままの着席だった
開式の言葉
国歌斉唱
・
・
卒業証書授与
遙の名前が呼ばれるとき、「涼宮 遙」となっているのはまあ、仕方ないな
送辞
答辞
式歌斉唱
ここで急に思い出す3年間
まあ、1・2年の想い出はとくにないものの、3年の想い出が濃い
勉強をするようになってから、学校も楽しくなってきたものだ
また、あの丘の上の木のところで寝そべっていたこと
サボリと考えると悪い想い出だが、それでも今考えるといい想い出なんだ
学校にもたくさんの想い出があった
学校にいることが普通だと思っていた
この歌が終われば、この学校でのやるべきことが終わる気がする
そう考えると少しうるっときた(泣いてはいない)
閉式の言葉
卒業式が終わった
もう俺は、この学校の生徒ではないんだ
卒業生退場
オレたちは教室へ帰る
本当に、最後の瞬間のために
先生から言葉をいただく
ああ、この先生もこんなことがいえるんだな
最後だからという心理的なものがあるかもしれない
それでも、担任の先生がとても偉大なものに感じた
言葉、一つ一つの重み
最後の言葉がおわったあと、俺が呼ばれる
そして昨日の結婚についての話
批判とかそういうもんじゃない
応援。
「お前はそうやって自分の人生を決めたんだ
だから、お前はこれからその決断を大事に
決断が間違っていなかったってみんなに自慢できるぐらいに幸せになるんだ」
〜白陵大付属柊学園・・・3月23日卒業〜
校舎から出て行くと、遙が待っていた
オレたちは言葉を交わすまでもなく手をつないで、校舎を出て行く
ところどころ古びた校舎
だけどここには、たくさんのものが詰まっている
さようなら・・・柊
校門を1歩出た
そして振り返る
もういちど、さようなら・・・柊
【僕たちは幸せになるため、この旅路を行くんだ】
手をつないで歩く。
桜、か。
満開とはいえないが、いくらか桜が咲いたこの並木道
【ほら、笑顔が、とても似合う】
走って追いついてくる速瀬と慎二
速瀬は実業団入りがきまった
でも速瀬は言った。
「遠くに行くわけじゃないんだから、会おうと思えばいつでもあえるんだよ」
そう。仲間なんだ
【色あせることなくよみがえる、儚く美しき日々よ】
孝之「ありがとな、速瀬。ありがとな、慎二」
速瀬「なによ、いきなり?」
慎二「どうしたんだ?」
孝之「いや、いままで、ありがとな。とかおもっちゃってさ」
速瀬「じゃあこの感謝は、1回のおごりで」
孝之「よし、じゃあ慎二と遙にだけおごろう」
速瀬「なによそれ!」
遙「二人とも変わらないね☆」
【まぶしい海焦がれた季節も雪の舞い降りた季節も】
孝之「じゃあ、オレたちはこっちだから」
慎二「おう、二人とも幸せになれよ
いつでも電話してくれればあえるからな」
孝之「そうだな、慎二のほうからも電話してきていいからな
ほら、速瀬からも」
速瀬「二人でいちゃついてるときだったら取ってくれないんじゃないの?」
遙「大丈夫だよ、孝之くんと一緒にいるときでも大丈夫だよ」
孝之「ほら、そこ、誘導しない。遙も墓穴を・・・」
【いつだって振り向けば あなたがいた】
ふたたび二人になって歩く
手は自然につないでいる
今日は遙の家に行く予定だ
まあ結婚したといってもいままでとほぼ変わらないわけで・・・
うちに泊まりにくる頻度が増えるみたいなかんじだ
遙の家の門を開けてドアを開ける
遙&孝之「ただいまー」
【僕たちは幸せになるためこの旅路を行く】
遙母「遙、鳴海さん、お帰りなさい」
茜「あ、お姉ちゃん、お兄ちゃん、お帰り
今日からお兄ちゃんは本当のお兄ちゃんだからね
というわけで、お兄ちゃん、ゲームしよ!」
孝之「ちょっとまっててくれ、30分ぐらい、そしたらやるか
遙も含めて」
遙「えっ、いいよ。私弱いし」
孝之「大丈夫だって」
【誰も皆癒えぬ傷をつれた旅人なんだろう】
茜「で、これからお兄ちゃんはおねえちゃんの部屋でいちゃいちゃするとっ」
遙「!!」
孝之「ほらほら、茜ちゃんは無駄な詮索しないっ」
茜「否定はしないんだね(ニヤリ)」
孝之「ちょっと、お母さん、茜ちゃんの監視、お願いしてもらっていいですか」
遙母「あら・・私ものぞきに行く予定で・・・」
孝之「って、お母さんっ!」
オレたちは部屋に入る
もちろん鍵をかける
そしてふたりイスに座って話す
【ほら笑顔がとても似合う】
孝之「遙、愛してるよ」