〜8月5日〜
5時55分

目覚まし時計が鳴る5分前

今日も予定通り目が覚めた


今は夏休みなのだが、積極的に早寝早起きを続けている

茜との練習などのために、基礎体力をあげておかないといけないので、
こうやって朝早く起きて、ジョギングをしている

マネージャーなんだからそんな必要ないんじゃないかと慎二は言うが、
やっぱり体力は必要なんだ

茜と一緒に水泳やったりすることもあるし、練習メニューを考えるためには
人間の体力とかその辺の知識をつけないといけないから
こうやって自分でいろいろ実践している

周りから見れば、俺は健康優良児そのものらしい

まあ、そうだろうな

途中でラジオ体操軍団に参戦したり
朝ジョギングしている人と仲良くなったり・・・
すげえよ・・・

俺という人物が1年でどれだけ変わってるんだ?

茜の事が大好きだからこそ、こうやって変わることができるんだろうな


で、着替えて、今日もジョギングっと・・・


〜昼〜

やっぱり学校にいる

今日は、茜の大会前日ということで、少しだけ練習を多めにしている

といっても、大会前ということで、これ以上やっちゃいけないというような量もあるみたいだから
その辺だけは気をつけている

水泳のトレーナーが読むような本というものが本屋に多く置いてある

速瀬のおかげだろう

その関係の本の品揃えは東京のかなり大きな書店に匹敵する

それらを読みあさり、良いと思ったものは買っているのだが
最近買った本の量が15冊を越えた

それらを掛け合わせたり、そこから生まれる独自の練習法なんかも開発している

今日も、そんな練習を中心に行った


「よしっ、今日は終わり!」

茜「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

さすが疲れているみたいだな・・・
「じゃあ、明日がんばろう!うん、着替えたらまた、いつもの場所で待ってるから!」

といって、茜といったんわかれ、校門前に来る

茜が出てくる

そして俺を見つけると、急に笑顔になって走って向かってくる

いつものことだがなんかうれしい

こうやって俺だけに向けてくれる想いは
いつまでもうれしいものだ


そして、茜と並んで歩き出す

学校付近では手をつないだりすることはない

よく茜の友達が隠れて尾行していることもあるし・・・
まあ、そういうことが気になるお年頃だからね・・・

で、ある程度はなれてから、手をつないで歩き出す

手をつなぐときは、茜からつなぐときもあるが
たいてい俺が手を差し伸べて、というより俺から直接手をつなぐことが多い

そのとき、一瞬茜が照れる
その表情がまた好きだったりするんだよな・・・

手をつなぐと、今度は茜の方から腕を組んできたり
寄りかかってきてくれたり
学校帰りは「愛のシルクロード(謎)」なわけで
すごく楽しみだったりする

いつもどおり幸せを感じていると、

茜「孝之、明日の大会優勝したら・・・?」

このように、甘えた口調で、聞いてくる

だから、甘え口調は反則だって!

その口調で言われたら、なんだってOKしちゃいそうな勢いなんだから


商店街のあたりに差し掛かったところで茜が言った

茜「うーんと、じゃあ、孝之と旅行に行きたいな(はあと)」

「えっ!っと、旅行ってことは、ずっと二人だよね・・・?」

明らかに動揺していた

だって、1泊だとしても、最低1晩は茜と二人きりだぞ

茜が俺の部屋に来たこともあるし、俺が行ったこともある
でも、泊りって事は、夜の暗い間ずっと一緒にいて・・・

孝之はいつの間にか顔を真っ赤にする

茜「でも・・・覚えているよ(はあと)孝之と一晩だけ一緒にいた日」

孝之はもちろん忘れてはいない

茜「去年の誕生日、私のところへ来てくれたんだもんね(はあと)」

茜はこれを言うと、顔を赤くして、俺に寄り添うようにくっついた

照れるなら思い出すなよって言おうと思ったが、照れた顔がとてもかわいかったのでやめた

そう、去年の茜の誕生日のとき、茜と同じ部屋に止まったのだ(結果的に)

茜の学校で泊りがけの会議があったみたいで、相模湖のほうまで茜は行っていたのだ
その日、茜の誕生日とは知らず、1度も話していなくて、だから「おめでとう」だけを伝えようと
夜遅く、茜のところへ行ったのだ

忘れはしない

あの大雨の中走り続けたこと

まあ、あの後の茜の笑顔と比べれば、あのぐらいの苦労ならへっちゃらだけど・・・

あれは、二人(+管理のおばちゃん)だけの内緒だったからなぁ・・・

「あっ、そうだ、旅行って行っても、茜のお父様が許すかどうか・・・」

茜「あっ、大丈夫だよ!お父さんにこうなったらどうするって聞いたら、OKだって」

そうか・・・

もう断る理由なんてない!!

茜と二人なんだ!

大好きな茜と二人きりで過ごせるんだぞ!

ほら、これほどうれしいことはないんだぞ!

もう、流れに身を任せよう!

「いいよ。何泊でも!」

茜「やったー。孝之、絶対優勝するからね!!」

で、それから茜は家に帰った

なんでも、宿を探すらしい

まだ優勝してないのに気が早いな・・・

まあ、それだけ優勝する気満々なんだろう

でも、ほんと、優勝してからでも間に合うんじゃないか・・・?

ああ・・・せっかく茜と今日はハンバーガー屋でも行こうと思ったのに・・・

まあいいや、大会が終わったら、茜といっぱいデートしよう!

〜大会後〜

で、茜は想像通り優勝したというか、

大会記録を1秒も破るというかなりやばい記録でゴールした

で、この前同様、インタビューではハチャメチャなことを言う

茜「孝之ー、優勝したよー、うん、だからご褒美の旅行行こうね!!」

って、この会場にいる人全員にそのことが知られちゃったじゃないか!

まったく、慎二はまた驚いてるし

涼宮さんは、「旅行がんばってね」っていうし

もう、ラブラブだ!

ラブラブなんだ!

世界が認めるほどラブラブなんだ!

茜「優勝したよ!」

走って茜が帰ってきた

俺も走って茜の方に行き、そのまま抱き合う

慎二「って、いきなりかよ・・・人前で・・・」

人前だろうと関係なかった


優勝を目指していた理由はたくさんある
そのなかに、俺のためというのも含まれていただろう

昨日、茜が優勝したら俺と旅行がしたいって言った

俺がOKしたとき、すごく喜んでいた

そして、インタビューでもそのことを言った

笑顔で俺のところへ走ってきた

理由はそれだけじゃないけど・・・でも少しでも俺のためってものが含まれてるなんて・・・

うれしいじゃないか・・・

少し抱く力を強くした

そして、大好きだよと小声で・・・

茜はまた顔を赤くした

で、旅行に行くということが決まったのだが、その内容を見て少し・・・というかかなり吃驚した

24泊ってなんだよ・・・
確かに、今日は8月6日で、これから24泊すれば、31日に帰ってくるということだが・・・

何この長さ・・・

めちゃくちゃだ・・・ははは。

すごいよ・・・

それよりも、こんなに俺と一緒にいたいと茜が思っていることがうれしかった

24泊でもしてやる!

大好きな茜と一緒に・・・

プチ結婚生活だ!

「あっ、そういえば、水泳の練習はどうするんだ?」

茜「あっ、うん、ホテルでは室内プールつきだから、そこで練習OKみたい
  私の名前出したら、快くOKしてくれたよ」

やっぱり、24泊確定だ・・・


泊まりは今日からみたいなので、早速準備をする

今日からだから、昨日予約してたのか・・・

家まで急いで帰り、泊まりの支度をする

ああ、24日間この家は誰も入らないのか・・・

新聞溜まるだろうな・・・

24泊用のといっても、夏なのでそんなに重くない

というより、Tシャツは12枚しかないから、24泊分はないのだが・・・

あとは「なるようになる」に任せよう

あっ、そうだ!水着も持っていかないと・・・

練習するんだしな・・・

で、ほかにも身支度を済ませ、涼宮家の前に行く

すると茜が待っている

茜も24泊分の服はないみたいなので、荷物は軽い

まあ、一日中水着着て練習しているときもあるかもしれないから、それで十分だろう


そして、俺たちの24泊旅行は始まった


〜1日目夜〜

ホテルに着いた

お互い疲れているみたいなので、とりあえず寝ることにした

なぜか、ベッドがひとつしかないという状況なので、二人で寄り添って寝た


〜2日目朝〜
朝起きると、1cm前に茜の顔があって、一瞬吃驚した

そうだ、茜と旅行に着たんだ

改めて茜の顔を見る

そういえば、寝顔は見たことなかったなぁ・・・

茜はまだ眠っている

急にキスしたくなって唇を合わせた

そしたら、茜が起きて、「もぅ・・・」といいながら照れていた

くぅ・・・かわいい


〜2日目昼〜

早速、水泳の練習
結局やってることは変わらないんだな・・と思いつつも、茜の練習マネージに力を入れる

茜が使うということで、このプールは24日間貸切になっている

なんかすげえ・・・

今日は大会の次の日ということで早めに切り上げ部屋に行って少し休む


〜2日目夜〜

夕方の6時ぐらいになってよるご飯を食べた後いちゃいちゃタイムがはじまる

幸せだ・・・毎日が幸せだ・・・!
そして、後こんな日が22日もあるなんて・・・すごく幸せだ!!


〜5日目朝〜

だいぶこの生活に慣れてきた・・・
この分なら茜と結婚しても大丈夫だ!
今すぐ結婚したい!!って言ってもまだ無理だが・・・
で、今日は起きるときにちょっと新婚気分を味わおうじゃないかということでいる

というわけで起きてないふりをする

茜「孝之ー朝だよ。起きて〜!」

孝之「茜がキスしてくれないと起きれない・・・」

茜「・・・もぅ・・・」

目を開けることはできないので、しばらく待っていると茜の口が俺の口に触れる

とおもったら、ほほやいろいろな場所に・・・

なんか、これ何気に恥ずかしい光景じゃないか・・・?

チュッチュッって、いろいろな場所に・・・

孝之「おはよう」

茜「もぅ・・・孝之があんなこというから・・・
  だから、私も今から寝ちゃうよ」

孝之「・・・?」

茜「また起きるには孝之がキスしてくれないと・・・」

一本取られたような気分になった

もちろん、その後は俺がまたやって、次に茜がやってと、何回も繰り返したのは言うまでもない

それだけで1時間半が経過していたが・・・

で、今日は練習休みということで、どこかに遊びに行く

ちょうど近くに大きな遊園地があったので、そこへ行くことにした

茜「あれ乗ろう!」

と、茜が決めることが90%以上だったが、それでもまあ良かった

茜の笑顔が見ることができれば

ここには観覧車があった

これに乗る?ってきいたが、これだけは乗らない!といった

高所恐怖症なのだろうか?

まあいいや・・・

で、ホテルに帰り、やはりいちゃいちゃする



〜12日目〜

この生活の長さに、ここがうちのような感覚がうまれてきた

そういえば、この宿の宿泊費はどうなってるんだろうか・・・?

茜によると、茜のお父さんが全額払ってくれるらしい

なんか悪いような気がするが・・・


で、今日も朝起きるとき、新婚夫婦気分で行く

バリエーションはたくさんあり、茜もノッてくるのでなんだか楽しい


とりあえずこれまで7日間がんばったので、今日は練習は休みだ

で、今日はさらに電車に乗り、台場へ行った

いろいろなアミューズメント・買い物施設が整っていて、1日中歩き回っても見きれなかった

帰るときには俺の両手には荷物の山だったが・・・


やっぱり今日もホテルに帰ったらいちゃいちゃタイムだ



〜19日目〜

今日は、1週間ぶりの練習休み日

昨日まではずっと一日練をやっていたので、ちょっと疲れがあるみたいだが
「デートに行きたい」って俺が言うと、茜がいきなり元気になった

で、ホテルでちょっといちゃついた後、外に出る

「今度はどこ行こうか?」と話したら、「今度は孝之に任せる」といった

とりあえず孝之は、「じゃあ、あそこでもいこうかな!」と決めていた

もちろん、どんなところかはまだ茜には内緒で
電車に乗り20分ちょっと

ローカル線の終点「白塚」に到着した

そこで下車をする

この駅は結構田舎である

ただ、ちょうど1年ほど前から降りる人がかなり増加した

それは、このあたりにできた大型ショッピングモールの影響だろうか

田舎で土地が安いという状況のため、大きなショッピングセンターが作られ、
車から、そして電車からの来客の両方とも便利な状況が作れたのだ


で、そこにはほかのショッピングモールにはない特徴がある

その「特徴」のために来たといっても過言ではない


そして俺は「こっち」と、茜を案内する

3階に着くと、ショッピングセンターの中ではないような景色が広がっている

「1年中縁日が楽しめる新感覚ショッピングモール」なのだ

その規模も、大きなショッピングモールの1/3を占めているわけだから
かなり大きい

そして、縁日といえど侮れないのが、祭りのように神輿が通ったり
バーチャルリアリティーによる花火も楽しめるわけだから
どこかのデパートで夏にやる縁日とは違う

なぜ、ここにつれてきたかというと、今年は8月15日の祭りにいけなかったからだ

まあ、24泊旅行をしてたからという理由なのだが・・・

去年、俺たちは2人で祭りへ行った

出会いの場というわけではないが、俺の気持ちが動いた場かもしれない

断言はできないが、その可能性は十分ある

だから、祭りは茜との大切な思い出の場なのである

やっぱり茜はこういう祭りとか好きなのかな?

浮かれて、目を輝かせている

ほら、そんなに急がなくても、逃げたりはしないから・・・

茜に引っ張られること多々ある

まあ、こんなふうにはしゃぐ茜もかわいいかな・・・

面白そうな出店を見つけては、直視する

本当に気に入った出店だったら、俺の袖を引っ張る

茜の方からは「これいいなー」とは言わないが、まあ、行動からしてそうなんだろうなと理解し、

お金を出してあげる

そして、茜は喜んでその出店に駆け込む

まあ、茜が甘えてくれてるわけだから、なんかうれしい

そんなこんなで、4時間かけて回り、使ったお金は5000円ちょっとかな・・・

茜は射的や輪投げででとったもの(俺が取ってあげたもの)や、
くじ引きの中当たり品などをもってとてもうれしそうだ

で、茜が俺の腕を組んでいる状態で今、2階のあたりを歩いている

?「鳴海と涼宮・・・」

どこかで聞いたことのある声だ

?「相変わらずラブラブだな・・・」

げっ、そうだ、この声は秋田先生だ!

秋田「ほんと、まあ幸せになれよ!俺からは言うことはない
   まあ、鳴海も前は授業抜け出して高い丘のほうに昼寝に行っちゃうこともあったけど、
   最近はちゃんと【優良児】っぽくなってるし、もう言うことはない
   二人とも、幸せになれ!そして、結婚式は俺に祝辞を・・・」

孝之&茜「け、結婚!」

二人で顔を赤くして、お互いの顔を見る

秋田「なんだ、まだ考えてないのか?まあいい。とりあえず邪魔者は退散するよ」

といって、秋田先生は走って逆の方向へ行ってしまった

まったく・・・秋田先生ってあんな先生か?

生徒指導の先生ということで、もっと厳しくカタい先生だと思っていたが意外とやわらかい?

まあ、茜と結婚するということは何度も考えたことはあったが、あの先生からこの言葉が出るとは
予想してなかったので吃驚してしまった

しばらくお互い照れたまま歩く

で、結局その後は、ほとんど店などを見ることができず時間が過ぎていた

店を出て今電車に乗ってホテルに向かっている

今日も遊びすぎた

もう7時か・・・

よしっ、今日もホテルに帰ったらいちゃいちゃするか・・・


〜23日目〜

やはり今日も練習している

昨日までは好調だったため、今日は水泳の練習総仕上げといきたいところだが・・・

なんだか調子が上がらない

疲れなどを考慮し、この2日間は練習を少なくしたのだが、それが裏目に出たか?

いや違う、泳ぎかたが少しおかしいのだ

直しても、すぐそうなってしまうし、
そのせいでタイムが上がらない

昨日までの平均タイムを3秒以上も下回る記録しか出ない

悪いときには、平均タイムよりも5秒ほど遅れるときがある

どうしたんだろうか?

もしかしたら、疲れているのか?

いくら休みを入れたといっても、この23日間のうち、20日は水泳をがんばっていたわけだから
疲れているのは当たり前か・・・

「よしっ、今日はこの辺りで切り上げよう!
 後は明日だ・・・今日はゆっくり休んでおこう」

そういって、練習を終了し、それから睡眠時間とした

布団に入ると茜はすぐに寝てしまった

疲れていたのだろう

きっと・・・

俺もいつしか寝ていた


〜24日目(8月30日) 午前5時45分〜


朝起きると、茜は隣にいなかった
水泳道具がおいていないということは一人で練習にいったのか?

昨日の記録が悔しかったのだろうか・・・

自分も身支度をし、プールへ行った


茜がプールで泳ぎの練習をしていて、バシャバシャと音がする・・・はずなのに・・・

近くになっても音が聞こえない

「・・・!?」

変わりに誰かの泣く声が聞こえた

聞き違うはずがない・・・そう、茜が泣いているのだ

走って茜のもとに駆けつける

すると、茜は「見られてしまったという表情でいた」

泣いているところを見られたくなかったみたいだ


茜は4時ごろから練習をしていたらしい

ただ、記録が出ないというより、むしろどんどん下がっていく一方のようだ

休養は十分にとったのだから、疲れではないだろう

だとしたら・・・

ひとつだけ心当たりがあった

記録というものは、体調管理ができていて、心理状態がよければ出るものである

体調管理はできている

つまり、心理状態が良くないということだ

去年の9月、速瀬に言われたこと思い出した

「メンタル的なものはすぐ記録に出ちゃう」ということ

なにかしら、茜は心理的な悩みがあるということだ

前回はもし、そんなことがあったら、今度は俺に相談しろといった

だから、俺は聞いてみた

でも茜は「大丈夫・・・大丈夫・・・」といって何も話さなかった

孝之「今日は練習は終わりだ・・・そんなんじゃ無理だ・・・」

茜「・・・」

こういうときはどうすればいいのか?

こんな状況になったは初めてである

恋のプロってわけでもないのでどうすればいいのかわからないし、
エスパーでもないので、茜の気持ちを完全に読み取ることはできない

まあ、それが恋愛の基本なのだろう
それを乗り越えられるかどうかがまた問題なのだ

でも、俺には何もできなかった・・・

茜はそのまま更衣室に閉じこもってしまった

鍵を閉められてしまった以上、どうすることもできない

「落ち着いたら部屋に戻って来い」といって、部屋に戻った

こんなときはそっとしておくのが一番だろうと判断したからだった・・・

〜10時25分〜

茜はどんなことを考えているのだろうか?

2時間以上閉じこもりっぱなしだ

8時ごろ、おなかがすいたらしく一度戻ってきたが、食べ終わった後すぐに行ってしまった

俺は茜を怒らすような、心当たりはなかった

多分何か悩んでいるのだろう


何度も更衣室の前と、部屋を行ったりきたりしたが、状況はほとんどかわらない

ふと、今日が24日目であることに気がついた

つまり、今日泊まれば明日帰るということだ

もしかして、この生活に慣れすぎて、この生活の終わりが嫌になったということか?

いや、それだけだったら、すぐに出てきて、この生活を続けたいと思うだろう

茜なら「こうしている時間がもったいない」というはずである

じゃあなんだ?

でも、昨日までは異変がなかったことを考えると、関係ないわけではなさそうだ

・・・わっかんねぇ・・・

〜13時25分〜

更衣室の前に行くと、泣いている声が聞こえる

本当は側に行って声をかけ、抱きしめてあげたいところだが、
それはすべきではないのだろう

12時ごろ食事に出てきたのだが、そのときあえてそれはしなかった

こうして、鍵を閉めてずっと閉じこもっているということをしている以上、
この問題は一人で考えたいのだろう

そっとしておくべきなのだ・・・

茜の心の整理がつくまでは・・・

〜16時00分〜

くそっ!!

何で何もしてやれないんだ!!

茜がこうして悩んでいるというのに・・・

もうあれから10時間以上経つというのに・・・
全く状況が進展しねぇ・・・!

くそっ!

何度もベッドを殴った

ベッドを殴っている反動で、茜の寝ているほうの布団から、日記帳みたいなものがとんだ

そういえば、いつも書いてたっけな・・・

書くときはきまって隠しながら書くんだ

見ようとすると顔を膨らまして怒るんだよな・・・

「恥ずかしい」っていって

だから、いつも見なかったんだけど・・・

でも・・・日記なら何か答えが書いてあるかもしれない

ごめん・・・茜

日記見るわ・・・

ページをめくった

すぐに目に飛び込んだのは、この24泊旅行の予定表だ

毎日前日に書いていたんだろう

で、24日目のところだけはペンを乗せた跡だけしかない

これを書こうとしたとき何か思ったというのか?

それだけではわからないので、ページをさかのぼってみる

23日目、22日目、21日目、20日目・・・というように、さかのぼっていくが
特に今の状態の原因となりそうなことは載っていない

パラパラ・・・

そして、1日目のページをめくった辺りで、雑誌の切抜きのようなものが落ちた

それを見て、何かひらめいたような気がした

俺は、走って、更衣室の前に向かう

そして、ドンドンと扉をたたく

「茜、出てきてくれ!」

少し強くたたく

これ続けてたらきっとホテルの人に怒られるだろうな・・・という事を思ったが、
そんなのは関係ない!!

怒られるなら怒られるでいい!

とにかく、「今は今」なんだ

茜・・・出てきてくれ・・・

ずっと続けて手が痛くなってきたころ、やっと茜が出てきた

いっぱい泣いたんだろう

茜の顔は誰が見ても「いっぱい泣いたんだな」とわかるような顔だった

目は赤く、涙の跡がいっぱいできている

茜「孝之・・・?」

孝之「よしっ、じゃあ来い。俺についてきてくれ!」

そういって、茜を連れ出す

迷いもなく、あるところへ向かう

時間はもう5時を回っていた

向かった場所は遊園地

俺の予想が正しければ、茜の悩みはここで解決する

茜はただ何も言わずついてくる

きっとあたっているはずだ

入場料は茜の分も含め、二人分を払う

そして、乗り物の券はA券(一番高い券)を2枚だけ

この遊園地の絵の中に一番大きく描かれる観覧車へ・・・

よかった・・・

だいぶすいているみたいだ

この状態だと、2分ぐらいで乗れる

茜は何も言わず、泣いた跡の表情で俺にくっついている

そして、俺たちの乗る番がやってきた

二人きりになる

すると、茜が口を開いた

茜「わかったんだ・・・」

どう返事していいものか迷っていると、

茜「じゃあ、この観覧車の言い伝え知ってるんだよね?」

「ああ」

茜「この観覧車の一番てっぺんでキスをすると、その二人は何十年も一緒にいられる
  結婚してずっと一緒にいることができる って言い伝え」

俺はうなずく

茜「本当に・・・私でいいの?
  ずっと、何十年も、孝之と一緒にいるのは私でいいの・・・?
  孝之は優しくて、本当にやさしくて・・・
  私・・・水泳の練習とかで、いつも孝之に迷惑ばっかり掛けて・・・
  孝之が休みの時だって、いつも私に付きっ切りだし・・・
  これからもずっと水泳やってて・・・だからずっと迷惑掛けて・・・」

また茜が泣き出す・・・

ここまで考えていたのか・・・

観覧車のゴンドラは中ぐらいの高さまで上がってきた

運命の場所まであと3分ほど

茜「私は、ずっと孝之と一緒にいたい
  孝之のこと、大好きで大好きで・・・仕方がないから・・・
  でも、そのために・・・これからも孝之にいっぱい迷惑掛けちゃうから・・・
  観覧車のって、この話したら、孝之は優しいから、きっとキスしてくれるって思った
  だけど、本当の気持ちじゃなかったらやだなって・・・
  私欲張りで・・・孝之を独り占めしたいって・・・思っちゃって・・・
  だから、これに乗って聞くのが怖かった・・・
  だけど・・・孝之とずっといたいって・・・
  どうすればいいのかわからなかった・・・」

「茜とずっと一緒にいたいにきまってるだろ」と言おうと思ったが直前で止めた

それじゃあ、茜の言っている「優しいから」のような形になってしまう

茜はこれまで何時間も悩んで悩んでいたんだ

あれだけじゃまた悩んでしまう

俺は何も言わなかった

ゴンドラがてっぺんのエリアへさしかかる

俺はすぐ茜の隣へ行き・・・

「これが俺の気持ちだ・・・」といい茜とキスをした・・・


茜はまた泣き出す・・・

茜「だって・・・ずっとだよ・・・?
  本当にいいの?
  ずっとこれから迷惑掛けちゃうんだよ・・・?」

「これは・・・俺の気持ちだ・・・
 俺は本当にこれからもずっと茜といたいと思っている
 水泳やってるせいで迷惑かけちゃうとか言うな
 水泳やってる茜も好きだ
 それと、俺のことを独り占めしたいって言っている茜も好きだ
俺こそ、茜を独り占めしたい
 俺だって茜の事が大好きなんだ
 茜と一緒にいたいんだ・・・俺自身が
 だから・・・一緒にいたいから・・・この観覧車の言い伝えを信じて、てっぺんでキスをしたんだ」

茜は俺の胸に飛びつき、また泣き出す

力いっぱい抱きしめてあげた

そして、茜の顔を上げ、もう一度キスをした

まったく・・・こんな大きなこと一人で抱え込むなんて・・・

本当に悩んだんだろうな・・・
観覧車に乗っている時間は残り30秒ほどになった

最後に・・・
「絶対、これからも茜の事幸せにしてやるから・・・だから茜も俺とずっと一緒にいてくれよ・・・」

茜の耳元でこういった


それからすぐに遊園地を出る

茜は観覧車を降りてずっと照れた表情をしている

そして、何度も何度もくっついて甘えてくる

やっぱりこうでなくちゃ!

ホテルに帰り、いつも以上にいちゃいちゃする

今日のことはあえて何も聞かなかった

日付が変わるころまでいちゃいちゃ(茜は終始照れっぱなし)していた

そして、そろそろ寝ようということで部屋を暗くし、眠りに入る

といっても、俺は寝ずにいた

そのあと、茜の寝顔を見る

「こんなに笑顔になっちゃって・・・いい夢見ているんだろうな・・・」

その安心したような寝顔を見て、俺は眠りに堕ちた

多分俺もいい夢を見ていたと思う


〜25日目(8月31日)〜

今日はこの旅行の最終日ということである

今までどおり、新婚夫婦のようにおはようの挨拶を交わし、ご飯を食べに行く

そして、「ちょっとプールへ行こう」と茜に言った

茜「最終日だけどやるの?」

「まあ、とりあえず来て!」

茜はついてくる

で、練習をする

よしっ、これならいけるな!記録は元に戻った!

俺は、「じゃあそろそろOKです」と入り口の方へ言った

すると、門が開き、30人ぐらいの人が入ってくる

孝之「じゃあ、茜がいい泳ぎを見せますので、オリンピック期待の新星の泳ぎ見ていてください」

茜「えっ?これなに?」

孝之「まあ俺たちはずっと貸切でやってきたわけだから、最終日ぐらい披露しようかなと」

茜「聞いてないよっ!」

孝之「抜き打ちテストみたいなもんだ
   茜は茜らしく、がんばっていけ!」

茜「・・・うん!」

スタート台に立つ

タイマーは用意されていないので、ストップウォッチで

孝之「レディー・・・ゴー!」

バシャーンと、音を立てて、茜は泳ぎだす

観客は泳ぐ前は歓声をあげていたが、泳ぎだして、あまりの速さに目を疑っている

そして、すぐに50メートルでターン

よしっ、いつもどおり出せてる!

ガンバレーといった声が聞こえてくる

もうちょっと・・・

そして、今ゴールへタッチ!

時間は・・・いつもより少しだけ遅いか・・・

でも、ゴールした瞬間大きな歓声が上がった

水泳に興味のないといった人たちも、これを見て、急に興味を持ったようだ

みんなちゃっかり色紙とマジックなんか用意しちゃって・・・

で、茜はそれに気をよくして、サインしにいっちゃったし・・・

まあいいや、これで自信がもてたなら・・・

そして、帰りの電車の中にいる

まったく、ホテル側はこれからサインをフロントのところに飾るなんていってるし・・・
いや、でも本当に24泊って長いようで短かったな・・・

茜は俺の肩もたれて眠っている


そして、茜の寝顔を見ながら、1時間ぐらい電車に揺られ、いつもの駅(柊町)に帰ってくる

孝之「今日まで疲れただろ・・・明日は学校だし今日は早く寝て疲れ取れよ!」

茜「そうだね!孝之・・・ほんとうにありがと☆」

孝之「茜、大好きだ!」

俺からキスをする

すると、茜は「あっ、私からもしたいのに」といった表情でこっちを見る

で、わかったよということで、次に茜からキス

水泳をやっているところと、こういった甘えてくるときのギャップもまたいい

とにかく、茜のすべてが大好きなんだ・・・

っと、ここで、いちゃいちゃしてると回りを通る人に何思われるかわからないので、とりあえず解散する


で、俺は家に歩いてく

そして、部屋の前に来ると、あるものに気づく

「新聞か・・・」

全く新聞屋も、丁寧に1日分ずつ積み重ねて置いてくれて・・・

でも、きっと24日前の新聞なんて読まないよ・・・!

それから鍵を開け、部屋に入る

むっとした空気が流れる

暑いなと思いエアコンをつける

「明日から学校(高校)か・・・」

もって行くものを準備・・・

えっと、筆記用具に、成績通知書に・・・雑巾に・・・

「あっ!!」

その先に書いてあった文字・・・

そう、夏休みの宿題

高校なので、そんなに量はないが、1つ宿題があった

それは、政治に関するポスターだ

時計を見る

夕方5時か・・・


「こんなんじゃ終わるわけないだろ!!」



―――あとがき―――

なんて、ベタな終わり方なんでしょう。
やっぱり・・・宿題ですね
全く・・・茜は7月中に終わらせていたというのに、
孝之は1つだしという理由で残しておき、
そして、24泊旅行があって、忘れていたわけで・・・
結局、大雑把にやって終わったんですがね

さて、今回は夏休み編ということで結構長くなりましたね
メインに書いたのは4日分ぐらいの行動なんですが、かなり長くなりました
まあ、あの観覧車事件の日の記述が200行以上あるわけですから、まあしょうがないですね

1ヶ月ぶりのSSということで、ちょっと設定を忘れてきていたり、というものもあったので、
前のバージョンを見ながらの作業となり、ちょっと時間がかかってしまいました
とりあえず、1週間以内に完成したので、良かったと思います

観覧車のところ、記述が少なかった(孝之の心遣いや、設定上の都合から)ので、
裏設定という形で書きたいと思います

茜は、この観覧車にそういう言い伝えがあるというのをずっと前から知っていたんです
だから、孝之と乗って・・・というように、計画していたんです
そんでもって、孝之と旅行という形でそっちへ行き、それを実現しようとしたのです
また、24泊という数字は、ただ夏休みの最後までいたいからという理由だけではありません
長く一緒にいればいるほど、それまでたくさんの出来事があります
孝之の本当の気持ちを知るために、24泊目に観覧車に乗ろうというように決めていたのです
その観覧車を特集している雑誌の切り抜きに茜は24と大きく書いていたのです
また、1日目にはその日が楽しみだなと手帳に書いてありました

で、何で不安になってしまったかという問題ですが、
結局これは積み重ねによっておこってしまったことです

23日目に記録が悪くなったこと、これは、茜が24日目のことでどきどきしていたからなのです
次の日の観覧車のために
べつに24日目のようにあんなにマイナス思考に悩んでいたわけではないんです

そのとき孝之は疲れているというように思い、ホテルで休むようにしました
茜は疲れていないので、ホテルで休もうにもまだ眠れないわけで・・・
一方孝之は疲れているかのようにすぐに眠ってしまったのです
ほんとうは、茜はいちゃいちゃしたがっていたのですが・・・

孝之が早く寝たのは、自分が起きていたら茜も寝づらいだろうという考えからだったんですがね

で、あまりにも孝之が早く寝てしまうわけですから、孝之は疲れているのかなと茜が思ってしまい
それから、夜特有の寂しさから、マイナス思考な考えしか浮かばず・・・
孝之が疲れているのは私のせい
   ↓
私がいなかったら孝之は疲れない
   ↓
私は孝之を疲れさせている
   ↓
私は孝之に迷惑を掛けている

という発想の転換を行ってしまい
結局こういうことになってしまったわけです

まあ解決して何よりですけどね・・・

それと、テストインラブを一通り読んだことがある方は「白塚」でぴんと来たかもしれません
はい、そうです。
あのときに出てきたショッピングモールです
まあ、設定が違いますから、出してもいいかなと思い、出してみました
3階に縁日、白塚にある、といった設定は同じですが、今回はちょっと記述を詳しくしてみました




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