明日から冬休みだ
何が楽しみかというと、茜と一緒に過ごす時間が増えるからだ
というわけで、いま終業式前の表彰式
俺はというと、茜と一緒に表彰を待っている
11月に行われた全国大会では全国優勝の記録を出した
あの関東大会での2位の後、茜はさらに練習に力を入れて頑張っていた
茜にはかなりの素質があるみたいで、最高タイムが2秒も上がった
もう、オリンピックでも通用するようなタイムだ
大会当日は万全の体勢で向かえ、本番でもいつもどおりの力を出すことができ、
決勝では2位に1秒以上の差をつける優勝
来年のオリンピックの候補選手にも選ばれるぐらいである
まったく・・・すごすぎる・・
というわけで、改めて校長の前での表彰
もちろん、表彰台においてあるひときわ大きなトロフィーは茜のものだ
俺は茜の専属マネージャということで、茜と一緒に表彰台へ行く
司会者「涼宮 茜」
茜「はいっ!」
名前が呼ばれ、俺はついていく
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表彰式、終業式と終わり、教室へ戻ってくると次はHR(ホームルーム)
生徒の明暗を分けるという「通知表配布」
二度目の高校生活である俺にとってこの儀式は「明」である
まあ、大学に入学するために必死になって勉強したところを今習っているんだし・・・
そして茜にとっても「明」といえる
水泳のことばかりやっているようで、実は勉強もかなりできる
前の通知表ではオール「5」という最高の記録を出していた
それを知らずに俺は勝負を挑んで負けた
だから今回は通知表見せてなんていわない
というわけで、通知表が返ってくる
「5・5・4・4・5・5・5・5」ちょっと下がったか
茜はきっとオール5なんだろうな
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HRが終わって放課後になる
もちろん、今日も水泳の練習だ
茜が優勝して以来、水泳の観戦者が格段に増えた
それと、俺に対し何で専属マネージャーなの?というように疑問視していた人の
見る目も変わったような気がする
今日は半ドンだということで、大勢の人(数えるのが面倒なほど)が観戦している
といってもいつもどおりの練習をするだけだが・・・
今日の練習メニューは
1.インターバル
2.タイム
3.長距離
4.流し
5.長距離
といったように、スタミナUP重視だ
今日は長く時間が取れるため、長距離のメニューが2回できる
朝登校するときや、学校での茜の調子など、いろいろ考慮し毎回練習メニューを選んでいる
今日は結構調子がよさそうなので、スタミナUPメニューでスタミナをあげておこうということである
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インターバルで泳ぐ
これは準備運動みたいなものだ
次にタイムを取るということで、今回のインターバルでは「流し」の部分を長くしている
「10,9,8,7,6,・・・そこまで!」
茜「はぁ・・・はぁ・・・」
「よしっ、2分休憩。次タイム!」
茜「はいっ!」
休憩といっても茜は水の中にいる
で、少し歩いている
休憩が2分だから、プールから上がって休むよりもこっちのほうがいいというところか
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「よしっ、休憩終了!次はタイムだ」
というと、水泳部のほかの一年生が大きなタイム計を持ってくる
SERIKOという会社のタイム系で、これは大会に使われるタイム計と同型のものだ
校長が「水泳に力を入れないでどこに力を入れるんだ」なんて考え買ってくれたものだ
ほかの部員も使うことはあるが、ほとんど茜しか使わない
大会同様、プールにタッチ版(タイムを正確に測るために触れるとタイムが止まるもの)までセットする
ミリ秒単位での争いになることもあるため、それらを正確に測りたいからだ
スタートのシグナルをならした
同時に茜がスタートする
タイムを計るときは決まって観戦者が大きな歓声を上げる
「がんばれー とか、 ファイトーとか」
まあ、大会同様の状況にできるためありがたいが・・・
すこしうるさい・・・
ゴールする
タイムから見ても調子いいらしい
というわけで、長距離重視の練習メニューを確定させる
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すべての練習メニューを終えた
時計を見ると5時
ほかの水泳部の部員は30分ほど前に練習を終え帰っていった
練習に残ったのは俺と茜と、水泳部の顧問の先生だけだ
茜は着替えを済ませてきて、それから先生に挨拶をして室内プールを出てくる
それから、荷物を持って、学校を出てくる
いつもの坂を歩いて、家に帰っていく
明日から冬休み、練習もやるが、「たくさん思い出をつくろうな」などと話しながら歩いていた
〜12月24日(金)〜
恋人同士が炎のように燃えるクリスマスイブ
この日もやっぱり学校にいた
今日の練習は、軽くインターバル、タイム、インターバル、である
インターバルは長めに1時間
タイムはインターバルの間10分休憩後にやる
また、タイムのあとにも5分休憩を入れるので、
実質練習時間は2時間26分ほどか
何で今日はそんなに短いかって言うと、
茜とのデートに決まってるじゃないか!
今日ぐらいはいいだろうということで、茜と俺の意見が一致して、そう決まった
顧問の先生には「軽くやる休養日」というように話したが、気づいているかもしれない
街の中がそういう状態だし・・・
というわけで、2時間26分の練習を終えた後、イブ・デートに出ることにした
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今日の茜の調子も絶好調
タイムのほうも、昨日より少し上がった
練習を終えて、今茜は着替えにいっている
いつもどおり、「覗かないでね☆」なんていって入っていったあと7分
茜は満面の笑みでこっちへ走ってくる
茜はすごく幸せなのだろう
これからはじまる二人の時間が
もちろん俺も幸せだ
茜と一緒にいられることがとても幸せだ
茜が今感じてる幸せよりも幸せだ
なんて、考えている
茜と一緒に電車に乗る
やはり今日はイブとだけあり、電車の乗客のほとんどがカップルだ
いちゃいちゃするカップルばかりであり、「堂々といちゃいちゃできるよ」なんて、茜にいってみたら
すごい顔を赤くして俺にくっついてきた
こんな風に茜をからかったり、甘えられたり・・・やっぱり・・・幸せ・・・
そして、電車はコスモスランドという遊園地につく
昼間はジェットコースターなど過激な乗り物に乗り、
夜は観覧車に乗ろうという計画だ
まあ、今日は観覧車に乗るためにかなり並ぶだろうと予想している
夜の8時とかに乗ろうとしたら1時間ぐらい待たされるか?
とりあえず、夜の7時ぐらいには並ぶようにしよう
時計を見る、午後5時28分
午後7時ごろに観覧車に並ぶためには今ご飯を食べにいかないと無理だろう
さすがにご飯時になると絶対混雑するはずだ
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今、観覧車に乗っている
ご飯を済ませて、1時間以上並んだあとのやっとの到達だ
茜は俺の隣にちょこんと座っている
そして、俺と茜は体を寄せ合っている
ただ、今日が12月24日であるだけで、何も変わらない夜
それなのに、今日は世の中では特別な日ということになっている
地球はいつも通り回っていて、その上に立つ人間がはしゃいでいるだけ
天体的に考えれば何の変哲もない1日
あたりを見渡せば、今日―明日のためにたくさんの家・店が準備しているイルミネーションが
たくさん見えた
一昨年までは何の変哲もない1日だった
あえて変わるといえば、スーパーにおいてあるものがクリスマスパーティー用のものばかりになるので
その日はチキンなどを買ってきて食べていた
ただそれだけの日だった
でも、今は・・・
やめよう
こんなことを考えるのは
茜が隣にいて、想いが通じ合っている
ただそれだけでいいんだ
過去よりも、茜といる現在の方が大事なんだ
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観覧車の一周はあっという間だった
一周にかかる時間は20分だというが、そんなに長かっただろうか?
そして茜と帰宅の道を歩いている
もちろん、ふたりで寄り添って歩いている
茜に甘えたいって思えば甘えられる
茜が甘えたいって思えば甘えてきてくれる
そんなことがとてもうれしい
茜とはこれからのことについて話した
茜のうちで夜通しパーティーなどというものをやるらしい
その夜通しパーティーとは、夜遅くまでパーティーをやるというもの
俺も招待されているみたいだ
「なにか買っていこうか?」と聞くと、茜は「お母さんが腕によりをかけて大量に作るから大丈夫」といった
ケーキとかチキンとか食べきれないぐらい作るらしい
そんでもって、余ったものは次の日のおかずだったり、近所に分けたりするという
ある意味そのあたりの家ではあまり物をもらうというのも年中行事になりつつあるみたいだ
茜と星空の下、二人で歩いている
手を組んだり、手をつないだり・・・
すごく幸せだ
きっとこの幸せはずっとずっと・・・続くんだ・・・
そう信じていた・・・
4月・・・大きな転機が起きることを知らずに・・・