こんな短い間には語れないようなごたごたがあって、
俺は誰を選ぶか迷った
誰もがみんな幸せ なんてことは無理らしいということを知った
決断の大切さを知った
そして俺は遙に対する想いの大きさも知った
もちろん、水月とは遊びで付き合っていたわけではない
水月のことは愛していた
だけど俺の心の中の想いは、遙への想いが勝っていたのである
〜3月21日〜
いつもどおりゆったりとした朝がやってきた
最近は遙と一緒に過ごしている
俺は目が覚めた
隣には遙がいる
遙は退院こそした
病院にいく回数も減った
だけど、やはり事故の影響が完治したわけでもない
だからこそ、今は俺が遙をいっぱい助けていかなければならない
朝食を準備しようと、ゆっくり布団から出る
遙を起こさないように物音を立てないように注意した。
すると遙はおきてしまう
遙「あっ、孝之くん☆おはよ」
遙はいつもと変わりない笑顔を見せてくれる
その笑顔は俺の選んだ笑顔だ
高校時代とは髪形も違う、そして少しやせこけてしまっている
だけど、俺の愛した遙が居た
遙とはおはようのキスを交わし、朝食を作ってくるという
遙にはできるまで待っているように言った
朝食が出来上がって、遙と一緒に食事をする
コーヒー一杯を飲むと、なんだか一日が始まるような気がする
俺は本当は今日もバイトだった
明日もバイトの予定だ
だけど、俺はこの2日間は休むことにした
大空寺のやつは猛反対していたが、その反対を逃れてきた
店長は、「OK」をくれた
まあ、それをもらうために、コレまでずっと一生懸命頑張ってきたんだから
明日は遙の誕生日、よく考えると、遙の誕生日を俺が祝ってあげたことは一度もない
だからこそ、今年は盛大に祝ってやる
そうやって、いろいろと準備をしてきた
もちろん、遙には内緒である
ケーキやオーダーメイド品の注文はしてある
ほかにも、装飾の準備にかんしては、遙に見つからないように押入れに隠した
つい最近、また絵本作家店が始まったということで、欅町のところへいってきた
「絵本作家店にいく」というのは少し恐怖があった
なぜかというと、3年前それができなかったから・・・
ただ、その言葉だけが残って俺を不安にさせていた
そのとき、一番安心させてくれたのは遙だ
「孝之くんも私も、はここにいるんだよ☆」と明るい笑顔で言ってくれた
ずいぶん楽になったと思う
そしてやり直しデートをこなしてきた
今日はどこへ行こうかと遙に話す
すると、動物園へ行きたいといった
遙は少しはしゃいでいる
キリン・パンダなどといった定番中の定番の動物を見ては、目を丸くしたり
時には動物と話しているときもある
そんな遙を見てやっぱり可愛いと思った。
それから、動物園の前の喫茶店へいった
そこでゆっくりと遙とはなす
家にいるときに話すのとは何か違うような感じがする
今日のデートについてやたわいのない話までたくさんの話で盛り上がった
動物園の思い出も、この喫茶店の思い出も前は水月のものだった
一度来たことがある
いまの状況と同じような感じで着ていた
そんな動物園の記憶を、また遙のものに置き換えた
動物園に再入場し、その後晩御飯を食べると、あたりは暗くなっていた
家に帰ることにする
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうようだ
それでも、俺と遙は明日を信じていられるからこそ、こういった時間の流れを認めていくことができる
時計を見る
誕生日は0:00におめでとうを言うというように俺は決めている
なぜかというと、何が起こっても1番を取られることはないからである
1番最初におめでとうがいいたい!
そんな風に思うのである
11時42分
11時43分
きっと、遙は俺がこうやって時計をずっと気にしているのに気づいている
遙は笑顔でいる
11時57分
11時58分
11時59分
あと1分だ
こんなときだけは秒針の遅さを感じてしまう
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
・
「遙、誕生日おめでとう」
日付が切り替わったとき、待ってましたとばかりに遙におめでとうを伝えた
遙はすごくうれしそうだ。なんか顔をあかくしちゃって!
遙の誕生日はやってきた
昔は当たり前のことが起こらなかったのである
当たり前じゃないことがたくさん起こって、当たり前のことがかき消されたのである
俺は遙のことが大好きだ
そして、遙は俺のことを好きでいてくれている
来年も、再来年も、ずっとずっと、俺たちは一緒にいたい
だからこそ、今遙にささげる言葉
「遙の生まれた日にありがとう。また来年もこの日を一緒に迎えような」