ああ、もう!おわんねー!

孝之が悲鳴を上げたのは8月30日のことだった

エスカレーター式の白陵大付属柊学園

ここの夏休みの宿題は悲惨だった・・・

ほとんどの人はほとんど受験勉強というものを意識することがないため
夏休みの宿題もほとんど受験と関係がないものであった

それは・・・理科研究!!

名前からして小学生や中学生の宿題っぽいものである

とはいっても高校生の考えるテーマはそんな生易しいものではない

一人ひとりかなりの研究材料でやってくるのだ

さて、孝之のテーマだが、それは「夜空の星の観察」

どこの、小学生のテーマだ?と問いたいぐらいだが、これはしょうがない

夏休み前にテーマを決めなくてはいかなくて、あのころの孝之は「脱力症」的な状態であった

今テーマを決めれば、もっと高度なテーマが思い浮かんだだろうに・・・

よくこのテーマで先生はOKしたな・・・


このようなテーマを決めておきながら天体望遠鏡などの小道具をまったく持っていない孝之である

だからといってプールでの茜ちゃんとの勝負や遙とのデートによりお金はほぼ使ってしまい
買うことすらできない(あっても買わずに遙とのデートに使うんだろう)

そんなわけで、ぜんぜん観察できずにこまっていた


宿題はこれだけではない

ただ、孝之は月の中盤から勉強に目覚め、それにより、他の数学やらの宿題はこなしてきた

それでも星の観察は終わらない

天気の日が少なかったといういいわけもあるのだが、今日も晴れているし明日も晴れる予報

せめて今日だけでも観察をしておきたい

そう、遙に相談すると「もぉ・・・じゃあ今日やろうね☆」

と、快くOKしてくれた

なんでも遙のうちには天体望遠鏡の最新のやつでスゴいやつがあるらしい

とりあえず今日は星空の下、遙と星を見に行こう

〜夜〜


で、なんで速瀬と慎二がいるんだ?

というか微妙にこういうときは暇なんだな・・・

速瀬「孝之、なーに、不満そうな顔して、まあ遙と二人きりじゃなかったからねぇ(ニヤリ)」

まるで心の中をすかしたように話す

慎二はやれやれ・・・といった表情でみている

ちなみに茜ちゃんは今日、友達の誕生日会があるとかで家をずっと空けている

速瀬「まあまあ、孝之、不機嫌にならない」

孝之「・・・」

遙「綺麗な星みつけたよー☆」

まずおれを手招きする

望遠鏡がずれないように一生懸命固定(?)しているのは遙らしい

とはいっても、この望遠鏡ならめったにずれることはないだろうが・・・

おれは早速メモした

暗くてノートに字を書くときが不自由なので、ダンボールと厚紙での机セット

と、懐中電灯(持つ役が慎二)でそれを解決


星を見ているとなんか心が澄んだかんじになる

望遠鏡で大きくみるのもいいが、なんだかこうやって草に寝そべりながら全体を見るのも綺麗

きっとこれらはみんなでみんなを輝かせているのだろう

一人ぼっちの星は、とても輝いていても綺麗に見えないかもしれない

でもこうやって星がたくさん集まっていれば、光が強いもの、弱いものがたくさんあっても、
みんなでそれを綺麗に目立たせる

そう・・・一人ひとりに個性があるように・・・

そんなことを考えていると、望遠鏡を見ている遙の姿が目に入った

一生懸命綺麗な星を探している(もちろん孝之のため)姿はとても綺麗でかわいく、
なんだか今すぐにでも抱きしめたい気分で・・・

速瀬「私たちがいるからそんなことしちゃだめだよ!」

孝之「って、速瀬!」

心の中を読まれていたのか?

さすがおれ、態度と気持ちが外に出やすい・・・

とりあえず望遠鏡の周りに4人集まった

星ほどではないけど、遠くから見ればこの4人の仲間も輝いて見えるんだろう

一人ひとりが輝いて、そしてみんなで光を放つ

最初は遙と二人だけがいいと思ったけど、なんだかこんなのもいい気もする

ゆったり流れる時間

かけがえのない時間

こんな「時間」はいつしか思い出になる

そしてこの4人の出来事も思い出になる

だけど、誰も忘れない

この4人がであったこと

この木の前で写真を撮ったり、こうやって星を見たりしたこと

誰も・・・誰も忘れない

だって・・・すばらしい時間だったから

おれの大切な・・・仲間との思い出だから・・・





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