愛するという感情をうまく知らなかった

家庭環境などそういったものもあったのだろう

しかし高校に入学して、それらしいものを得たような気がする

みんなの考えている「愛する」とはどういうことだろう

私にはわからない、だけどそれは私だけの「愛のカタチ」



出会いの春−妄想の夏


「穂村愛美」
「はい。」

入学式の入学生紹介

私の名前が呼ばれた

それは、「私がこの学校に受け入れられた」ということ

別にこの学校をのぞんだわけでもない。
一応このあたりでは頭がいいほうの学校なので、入学できた=うれしい
という方程式が成り立つはずだが、私の場合は違っていた

だから感動もほとんどない


クラス発表。別にどうでもない

唯一良かったこととしては保健委員にすんなり入れたことだろう

希望の委員会

私としては教室にいるよりも保健室にいるのが好き

保健委員なら、気分悪い人が出ればちょくちょく保健室にいけるし、
なにかあれば、保健室にいられる

サボりたいんじゃなくて保健室にいたい

周りは私の性格が変だとかいうけど、普通だと思う


そんな普通の高校生活というイメージを払拭する出来事が起きた

そう、先輩との出会い


私がただ廊下を歩いているときに先輩に出会った

向こうは覚えているはずもない。わたしが一方的に見入ってしまっただけだから

先輩に会った瞬間ズキューンと心臓を貫くような、そんな胸の痛みを感じた

それとともに、先輩を獲得(?)したいという欲望も表れた

先輩がほしい、そんな想い

もちろん先輩のことは何も知らない

名前も知らない、趣味も知らない、何をしているか知らない、スクールカラーで学年はわかるが
クラスもわからない

このままじゃいけないんだ

私から近づかないと、先輩にとってただの後輩というより、ただの背景にしか過ぎないし、
とは言ってもいきなり話しかけても、不思議に思われる


調査開始!!

趣味とかわかれば話が合うかもしれない

そうすればいつか知り合える日が来るかもしれない

だから、調べよう


緑悪魔は、孝之のことを調べ始めた

そんな調査は、探偵顔負けの内容というより、力込みすぎ、
いってしまえば「ストーキング」

1日の3分1以上、視点に孝之があり、体調悪いといったり、保健室に誰かを連れて行く口実でちょくちょく
授業を抜け出しては、追いかけていた

もちろん、孝之があの丘にいつもいっている なんてことはすぐに気づいた

そんな孝之を影からのぞいていた緑悪魔


趣味がわかろうと、それではどうしようもない現実

結局合えずじまい、だけど、神様はチャンスをくれた

そんなチャンス、それは夏のある日である


作戦を練り直し練り直し失敗し、また新たな作戦を考えていたとき、
患者現る

教室で気分が悪くなった人がいて、その人を保健室に連れて行く日

結局体調が優れなかったみたいなので、先生が家に連れて行く

1人でまた作戦を考え直したかったところなので、保健室の番をすることにし、待っていた

そんなときドアがガチャっとあく

「こんにちは〜」

「え?」

小声だが思わず声に出てしまった

憧れの先輩がいるんだ

先輩は派手に転んだらしく、なんか怪我している

この先輩の傷口をもっとひらいたら、どうなるんだろうな?

私が先輩の中に入り込めるのかな?


ドキ・・・ドキ・・・

心臓が痛い

でも話しかけないとなにもはじまらない

「あの・・・」

「先生はちょっとでかけてるんです・・・怪我ですか?」

 ・

 ・

 ・

傷口をぱっくりさせる・・・なんてことはせず、ちゃんと応急処置をした

話すきっかけをこんな感じで消すのはいやだ


「鳴海先輩はどうしたんですか?」

・・あっ!、名前聞いてないのに名前でいっちゃった・・・

何で知ってるの?って突っ込まれないかな?あ、でもそう突っ込まれたら話も弾みそうだしいいか


きづいてない。

「ふふ・・・そうですか」

いろいろと合ってなぜか笑えた

話せたこともうれしかった

憧れの先輩がこんな近くに

先輩を感じる

「ふふ・・・先輩らしいです」


先輩がほしい

そうだ、毎日先輩が怪我すれば、毎日きてくれる

先輩の家の入り口に糸を数本引いておけば転んでくれる

あ・・・でも、家だったら、家でなおしちゃう

じゃあ、廊下。

先輩がきそうになったらその通路に糸を仕掛けるんだ

そうすれば転んだ瞬間も助けられて、いいかな。

でも糸だとばれちゃうかな・・・

ピアノ線でも買ってこよう


こんど、先輩が怪我したら、どんな治療しよう

わざと間違えて炭酸でもぬって、もがいているところを抱きしめちゃったり
ちょっと痛そうにしている先輩もかわいいかも

包帯巻くときに手と足をしばったらどうなっちゃうのかな?

先輩動けないから、そんなときならなんでもできそう

傷口をふやしちゃったりして、治療を増やせるかな


先輩の怪我したところ、かじってみたいな

治療はなめたほうがいいんですよっていって、なめたり、間違えて(?)かじってみたり、
してもいいかな?


そうだ、先輩が全身を怪我したら・・・ふふ・・・どうなるんだろ?

私が全身を治療できるのかな?

全身を怪我させるにはどうしよう・・・


こんな妄想をしている間にまあ先輩はいなくなっていたわけで、
いつのまにか次の時限がはじまっていた

私はまだ保健室で妄想をしている

さっき先輩が座ったイスのぬくもりを感じたり、
ホームアローンの少年の計画みたいに、紙にいろいろと今後のことを書いてみたり


その後(その日)、計画のために先輩の家まで突き止めた


まだ中に入ることも出来ない

だから外で、ドアの外かその当たりで妄想しか出来ない

先輩の家から湯気が見えてくる

きっとお風呂に入っているのだろう

先輩・・・無防備・・・フフ・・・

今なら先輩は無防備・・・


先輩の一日が知りたいな


そうだ。先輩の家には入れないけどカメラがある

ビデオカメラさえ仕掛ければ、先輩の家に2度だけ入るだけで1日が観察できる

どうしよう。

そうだ、合鍵屋さんに頼んで、

合鍵を作ってもらえばいいんだ


3日後

孝之「ないっ!ないっ!」

慎二「今度は何をなくしたんだ?」

孝之「家の鍵がないんだ・・・」

慎二「はぁ・・・じゃあ帰れないだろ・・というかこの前サイフなくしたばかりなんだから
   注意しろよ・・・」

孝之「注意してたよっ!だけど・・・ないんだ
   そうだ、体育の時間に誰かがとっていったのかもしれない」

慎二「まともなことを考えろよ・・・鍵とるなら財布取るだろ・・・
   それに別にお前のうちをつきとめたってお金がわいてくるわけでもないし
   どうせなくしたんだろ?」

孝之「まあそうだけどさ・・」


「これの合鍵、作ってください。
   なくしたらいけないのでもうひとつ作ってほしいんです」

合鍵屋「はい、じゃあお時間かかりますが・・・いいですか?」

「はい」


先生「また、愛美はサボりか?まじめなやつだとおもってたけど最近サボリがおおいな?」


(その後・・・)
「これで先輩の家に入って先輩の1日が観察できる」

うれしかった。
先輩がもっと身近に感じられるんだ

先輩が夜どんなことをしてるのかな?とか
身近に感じられるんだ


その日はもう遅かったので、次の日に実行した

そして翌日の昼に回収し、その日家に帰ってじっくりみる
「先輩(はーと)」


夏・・・先輩との別れが来た

そう、この地にいられなくなったんだ

北海道。毎日願った

先輩との結ばれを。


1年目はほとんどが「先輩と会いたい」だった

2年目はほとんどが「先輩がほしい」だった

そして最後、先輩のいる近くの病院に勤められるようになったときから
「先輩とずっと二人きりでいたい」という思いがあった


まあそんな夢は先輩にあってからじゃないとかなわないもの

でも、神様はまたチャンスをくれた

私がこれまでがんばってきたことのご褒美なのかな?

目の前に先輩、そして話しかけてくる

また私の「時間」が動き出す



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