もしかしたら私は起きていたのかもしれない
孝之くんは、私の病室に何回も来てくれた
いつも話し掛けてくれた
私はそれを聞いていた
でも、その話にあいづちを打つことも、笑ってあげることもできない
私から孝之くんのそばに行きたかった
でも、それもできなかった
ある秋の日、孝之君はこなくなった
私はずっと待ちつづけた
こなかった
それからずっと・・・
あの事故から約3年が経ったとき、私は目を覚ました
3年間の記憶などはない
自分は3年の出来事を知っていたのかもしれない
でも、それを夢として否定しつづけたのも自分だった
孝之くんはまた来てくれた
そしていつか、「マヤウルのおくりもの」を買ってきてくれた
あの絵本はお別れの話
孝之くんとの出会いはお別れの絵本
孝之くんはお別れを教えてくれる人
人はお別れを知る
私もいつか、お別れを知る
それは孝之くんから知る運命だと思う
孝之くんとはお別れ
いつか、孝之くんがお別れの事を教えてくれる
でも、孝之くんは弱かった
お別れの言葉は教えてくれた
でも本当のお別れは教えてくれなかった
「永遠というものの終わりを見たとき、教えてやる」
そんな孝之くんは、今も私の隣にいる