「お姉ちゃん、何してるの〜?」
「はっ!!もぅ〜茜ぇ〜びっくりさせないでよぉ〜」
「別にびっくりさせてないけど・・・え、もしかして、それお姉ちゃんの彼氏に作ってあげるため?」
「・・・・・・」
「黙っちゃった、じゃあ、そうなんだ〜」
「もぅ、茜!!からかわないでよぉ〜」
「だってホントのことじゃない」
「今回のやつを食べさせてあげるんじゃないんだから」
「おいしいものを食べてもらうための練習・・・?」
「・・・・・・」
遙はそのときミートパイを作っていた
1個目ができたのは大体午後4時
できのほうは、悪いとも言わないがよいともいえない
「こんなんじゃ、彼氏に嫌われちゃうよ?」
「うぅ・・・」
遙は泣き出してしまった
「あっ、もうお姉ちゃん・・・私も少し手伝うからさ〜、ほら、もう・・・」
「うん・・・」
茜は家事全般が苦手でもちろん料理の腕もよいとはいえない
殺人料理とまではならないが、少し悪いほうに傾いているといえる
遙はそのことはすでに知っていた
茜もそれぐらいは認識していた
ただ、ふたりの姉妹の団結力がそれを超えられるような気がした
・
・
・
「・・・・・・」
「・・・・・・」
予想したとおりの出来だった
「茜ぇ、なんかさっきより悪いよぉ・・・?」
「うぅ・・・」
茜はそのまま自室に帰っていった
ただ、遙はそれでやめようとはしない
ミートパイを作っている理由はもちろん孝之君に食べさせてあげるため
別に明日じゃなくてもあさってでもいい
ただ、なるべく早く食べさせてあげたいという想いで、遙は作っていた
茜のあの一言が気になって遙はなかなか納得できずにいた
「よぅし 孝之君に喜んでもらえるような物を作れるまでがんばるぞぉ!!」
・
・
・
そして、作り出すこと5時間
時刻は9時を回っていた
ちょうどその日は母も父も帰りが遅く、5時間もずっとやっていたことに遙も気づいていなかった
「できたぁ〜」 とても満足できる味に出来上がった
「さっき茜に少しひどいことしたかなぁ・・・。よし、謝りに行くついでに茜にも食べさせてあげよう」
「茜ぇ〜入るよぉ〜」
カチャ
「お姉ちゃん・・?」
「さっきはごめんねぇ〜。茜ぇ。ミートパイで来たから食べてみてぇ〜」
「もしかしてお姉ちゃんずっとそれ作ってたの?」
「うん、そうだよぉ〜」
5時間もの時間をかけて作り上げたミートパイを茜は少し食べた
「おいしいよ、お姉ちゃん」
「ホント〜」
「これで彼氏もイチコロだね〜」
「もぅ!!茜、一言多いよ!」
「ははっ。でも喜んでくれるよ、絶対」
「孝之君の舌に合うかなぁ〜?」
「大丈夫、こんなにおねえちゃんの愛が入ってるもん」
・
・
・
〜8月6日〜
その日は、茜の声で起きた
「お姉ちゃん、ミートパイたくさん作って。二人分ぐらい」
「えっ・・・昨日食べたでしょ〜?」
「いいからいいから、二人分ぐらい作って」
「うん・・・」
眠いながらも遙はミートパイを作り始めた
「茜ぇ、いきなりどうしたのぉ〜」
「まぁ、いいから作って」
そして昨日と同じ味のミートパイが完成した
「茜ぇ〜できたよぉ〜」
「うん、じゃあお姉ちゃんはもう即実行だね!!」
「えっ?」
「ほら、ミートパイを作ったんでしょ」
茜は受話器に手を伸ばし、そのまま電話帳機能の中から”鳴海孝之”という名前を探し出した
「お姉ちゃんの彼氏、鳴海孝之っていうんだね。はい、姉さん」
茜から受話器が手渡される
「もぅ、まだ心の準備ができてないのにぃ〜、あっ繋がっちゃった」
「ファイト、お姉ちゃん。」
その茜の声は聞こえていただろうか?
そして、
「孝之く〜ん、今日、もしよかったら会いたいな〜」
孝之君はキッパリとOKしてくれた
ミートパイだけのために会いたいなんて変に思われるかな
でもいいや、頑張ろう
「お姉ちゃん頑張ってね!」
「うん」
そして、遙は・・・
孝之君に会うために、
ミートパイを食べさせてあげるために
出かけたのだった
〜ミートパイ記念日1 END〜