「カンカンカンカン」

朝から大音量の音が聞こえる

この音は、あのフライパンとお玉か?

そしてその音は俺のほうへ近づいてくる

隣を見ると・・・って、遙がいない

隣を見ると「実家へ帰ります・・・」というメモがおいてある

ってなんだこれ!

俺は一瞬ビックリするも冷静に考えると、ここ遙の家じゃないか・・・

そう、今日は遙の家に泊まった日なのである

結婚してからお互いの家・一泊ずつ交互に泊まっている

新婚さんというよりも、仲のよいカップルのような感じだ


そしてどうみても、あのメモの字体は遙の筆跡ではない

この字は・・・

茜「ほらほら、お兄ちゃん!はやくおきろー!」

絶対茜ちゃんの字だ

俺は遙と結婚してから、茜ちゃんが大のいたずら好きだと知った

というよりも、前から知っていたか・・・

で、そのいたずらは毎日飽きることなく繰り返される

大体そのアイディアはどこから持ってくるんだ?

この前も、俺が風呂に入ったとき着替えの替えがなぜかメイド服にかえられていたし

それはどこから手に入れてきたんだ?

茜「ほらほら、お兄ちゃんがゆっくり寝ているから、お姉ちゃんは実家に行っちゃったよ!」

孝之「・・・」

なんとつっこめばいいんだ・・・

俺が階段を下りていくと遙はイスに座っていた

そして遙のところへ駆け寄る

すると、遙の家族はみんな後ろを向く

これからはじまる儀式「おはようのキス」のために気を遣っているのだろうか?

というより、こういう風にされたほうが恥ずかしいのだが・・・

というわけでキスをしたあとは、再び時間が動き出す


ご飯が出来上がり、いつものように自分の場所へ座る

この順番は初めて遙のお父さんやお母さんと食事をしたときと同じ順番になっている

いつものように家族団らん

「食べながらしゃべるな」なんて言葉があるが、こうやって家族で楽しく話ができるのならば
そんなもの守らなくてもいいかもしれないと思った


さて、そんな中新婚旅行の話になった

遙と結婚してから1年以上がたつがそういえば旅行に行っていなかった

そもそも、ずっと交互に家を訪問していて、そういう時間がなかったともいえるか・・・


とても急な話だが、来週から新婚旅行に行く というように決めた

といっても場所はまだ決まっていない

俺は遙と一緒ならどこでもいいと思っている

でも、さすがに治安の危ない国に行こうとは思わないが・・・

遙も同じみたいだ、よってこのままじゃ決まらない

というわけで、思いついた場所をいくつか書いていって、それをあみだくじで決めることにした

かなりいい加減な決め方だ・・・


遙は
ちょっとずつ書いている

思いついた国だからまあ妥当なところが沢山書いてある

イタリア

フランス

イギリス

それと、日本から降別(くだりべつ)温泉というのが書かれている

まあ、国内もいいかもしれない


俺も同じように、ヨーロッパ系の国と国内を中心にいくつか書いた

これならどこに決まってもいいかもしれない

遙の意見でも俺の意見でもお互い納得できる

っと、茜ちゃんが一箇所書いているぞ?

どこと書いたのかを公表せずにあみだをの答えの部分を折ってしまう

最後まで秘密というわけか


最終的に遙が選んだ場所9箇所

俺が選んだ場所10箇所

そして茜ちゃんが選んだ場所1箇所がある

どこになるかというのは20分の1で決まる

あみだはどこがいいか遙と相談したら、遙と同じところを考えていたみたいで
そのままそこを選んだ

やっぱり俺たち息はぴったりだ


目の前で茜ちゃんによるあみだ追いがはじまった

俺たちが選んだ場所から下へと進んでいく

右へ行ったり左へ行ったりしながらもゆっくり下へ進んでいく

そして、下へたどり着いた

茜ちゃんが紙をめくる

茜「わぉ・・・」

そう、そこは茜ちゃんが唯一書いたところだった

そして書かれていた場所は・・・


茜「じゃあ、お兄ちゃんたちの新婚旅行は南極に決定しました!」

だいたい、二人して南極を引いているじゃないか・・・

要するに今日はそういう流れだったのか・・・

だいたいどうやって行けばいいんだ・・・?

もちろん俺は南極なんていったことがない(まあ、あるほうが少ないだろう)

そのため、行きかたもわからないし、第一飛行機出ているのか?


という状態だが、俺も行ってみたかったりはする

それは好奇心である

ちなみに遙はというと、目をきらきらさせて南極の景色を思い浮かべているようだ


遙母「ちょっと買い物頼んでもいいかしら・・・」

そんなときにお母さんがこういった

何でも今日食べるためのおコメがなかったというのだ

遙のお父さんはさっき出かけてしまって、男は俺しかいないということ

コメを買ってくるということで20Kgぐらいあるものを持つのだから
やっぱり男の仕事だ

遙もついてきてくれるかなと思ったが、いまメルヘンの世界にいる真っ最中なので無理だろう

しょうがなく一人で買いに行くことにした


財布には13000円

3000円がおコメのお金で、残りは自分のお金だ

おコメを買って、帰り道

なんとなくその日はいつもと違う道を通ってみたくなった

一本違う場所から曲がる

っと、この道ではいけないのか・・・

結局T字路に出てしまう

その瞬間、あることに気がついた

T字路の道のない方向に露店が立っている

いつもならこんな風に露店があっても通り過ぎるのだが今日は話しかけたくなった

これは何故だろうか?

運命なのだろうか?

「すいません・・・旅行券販売というみたいなんですけど
 何を売っているんですか?」

俺は聞いてみた

露店の人「結構何でも売ってますよ・・
     アメリカやら、イギリスやら・・・・
     あなたはたぶんコレをほしがっていますね・・・」

最後の言葉はぼそぼそといったのだが、きちんと聞こえた

そしてその露店の人から差し出されたのはなんと・・・南極への航空券

「えっ!えっ!!」

何でそんなのを知っているのかと一瞬戸惑った

「い、いくらですか?」

露店の人「700円」

「や、安!」

なんだこの安さ・・・

もうこれは買うしかない!

「く、ください・・・」

露店の人「毎度!」

なぜか毎度!の声だけは魚屋のように威勢がよかった


結局おコメと南極の航空チケットを買って家に帰る

家に帰ると遙がしょんぼりした感じで待ってた

遙「おかえり・・・」

「何があったんだ・・・?」

遙「お父さんに聞いたら・・・南極行きは行く方法がないからあきらめろだって・・・」

続いて茜ちゃんが入ってきて

茜「つまんないの・・・あーあ・・・いいアイディアだと思ったのに・・・」

つうか、南極行きの航空チケット手に入れてしまったんですが・・・

おコメをお母さんに渡し、今に戻る

俺の手にはあの航空チケット

しかし出す機会を失ってしまった

続いてお父さんが入ってくる

俺が帰ってくるまでに家に帰っていたみたいだ

つうか、どこ行ってたんですか・・・?

遙父「はっはっはっ、まあ、南極に行くというのは無理かもしれない
   面白いかもしれないと思ったのだがな」

お父さんは笑顔で話す

手に入れてしまったチケットを思いながら複雑な表情でいると

遙父「ん?鳴海君どうしたんだ?
   なんだか、違う世界にいるみたいだぞ
   もしかして、南極行きの方法でも見つけたのか?」

「!」

突発的過ぎますよ!

何で俺の今の表情だけでそんなのわかるんですか?

まあそうですけど

すると、遙と茜ちゃんが期待の目で俺を見る

よしっ、あのチケットを出すか

「今日、このチケットを見つけてきたんだ」

俺が航空チケットを遙に渡すと遙は目をキラキラ、うるうるさせながら俺に抱きついてくる

遙「ありがと☆」

茜「お兄ちゃん、やるじゃん!」

遙父「ほんと、鳴海君は遙のこと大事にしてくれているみたいで
   そんな鳴海君が好きだぞ!」

ちょっと待ってください!

お父さんまで顔をすりすりしないでください!!


こうして南極行きが決まったのである


チケットの日付は1週間後

露店の人・・・どこまで正確にわかっているんだ・・・


そのまま成田空港に行き、入り口を通り、飛行場に向かう

もし、いんちきなチケットだったら入り口で止められるだろうが、
それがなかったのだから、ちゃんとしたチケットなんだろう

まあ、JALという文字が印刷されているのだから大丈夫だと思ったが・・・

成田発、南極行きってなんだよ・・・


飛行機に搭乗を済ませ、後は出発を待つだけだ

俺たちのほかにも客は沢山いる

なんかのツアーなのかな?

俺たちは普通の荷物のほかにカメラが20個渡された

なんでも茜ちゃんが沢山写真とってこいというのだ

24枚取りのカメラを20個って、480枚も写真取るか?

いや、取れるかもしれない・・・

南極といったらやっぱり俺たちの未知の世界だからな


飛行機は離陸する

日本を離れ南極へと旅立った

すぐに到着したというのはうそかもしれないが

遙とたくさん話をしたり、周りが見ていないのを見計らっていちゃついてみたり・・・

そんな時間を過ごしているうちにいつの間にか到着していた

空気が少し違う

なんだか寒い

そして、外を歩いているとペンギンがたくさん歩いている

ペンギンの歩きかたはよちよちよちよち・・・

やべぇ・・・可愛い!

いきなりずるーっと滑っていったり

とりあえず巣にかえったり・・・

可愛すぎる

遙とちょっとずつ歩いて回る


氷山の塊もあった

その塊は手で触ると冷たすぎる

力いっぱい押しても動くはずもなく、ただ冷たさが残る

氷を彫って、俺たちが来たというのを記念に残しておこうと思ったが、
南極を管理する人に怒れられた嫌なので、やめておいた


ペンギンの群れだ

たくさんのペンギンが歩いている

ふと、あのハトの大群を思い出した

冗談がてらに

「遙、あのペンギンに連れてかれることはないようにしろよ!」

遙「もぉ・・・孝之くん」

といいながらも笑顔で俺の体に顔をうずくめる

やっぱり幸せだ

これを幸せというんだ

遙と俺の想いが通じ合っている

南極というと、南極点がある場所だ

つまり、ここを中心に世界が回っているのだ

俺たちは世界の中心で愛を味わっているんだ

俺たちの愛は、どこへ行っても変わらないんだ

周りは氷の世界

人は沢山いるのだが、俺たちが住んでいるところほど人は見えない

そんな世界で二人愛を感じる

神秘的だ

そんな想いから、遙を抱きしめる力が少し強くなった


ちゃんと南極にも泊まるところがあるみたいだ

航空券だけできたという事情を話すととめてくれた

ホテルでは南極というのを忘れてしまうほど暖かい

さっきまでちょっと冷えていた体をあっためるのには最適だった

俺たちはいつも以上にいちゃつく

ここは二人だけなんだ

本当に二人だけなんだ

そして2日目の行動

今日も見て回る

南極行きのチケットを見ると、帰るのは今日の夜ということである

そのため、今日は朝早く起きてみた

南極の日の出は早い

といっても珍しく日が出ていない時間に外へ出た

外へ出るとまだ少しくらい

そしてかなり寒い

防寒具を万全にして外へ

遙と一緒に外へたっていた

次第に外が明るくなっていく

これもまた神秘だった

ただただ、自然の偉大さに感動することしかできなかった

地平線から昇る太陽は綺麗で、氷の世界をキラキラ輝かせる


それから明るくなってまた歩き出す

やっぱりペンギンが歩いている

ちょっと見慣れてしまったせいか、ペンギンがここを歩いているのが本当に普通に見えてきた

一匹のペンギンが、俺の足をコンコンと叩く

その姿、可愛すぎる

何か伝えたいのだろうか?

コミュニケーションが取れない人がが身振り手振り伝えているといった感じに見える

そして途中、いきなりペンギンが驚いてはねだす

あっちを見てといったように伝えているように見える

俺はそっちを見ると、

「・・・」

遙「たかゆきくーん!」

「は、遙?」

さっきまで隣にいたはずの遙は、ペンギンの大群に連れられている・・・

といってもペンギンの力はそんなに強いわけでもないため、それほど離れていない

「・・・」

俺は急いで・・・カメラを出した

かなりシャッターチャンスだ

ペンギンと戯れるといった感じの題がつけられそうだ

50枚ぐらいの写真をとった後、俺は遙を救出(?)した

「わはははは」

遙「もぉ・・・孝之くぅん」

「遙、だって、ペンギンに連れ去れるなんて
 よほどペンギンに好かれているんだな
 でも、ほんと
 わははは・・・
 すごいよ、遙!」

遙は俺のほうに顔をうずくめる

まさか、冗談で言ったことが本当になってしまうなんて

ほんと、すごいよ・・・遙

それから遙はペンギンに連れ去られることはなかったが、氷で滑って何回も転んでいた

この日も楽しい日々だった

遙と一緒に地球の原始のような場所を見て回る

楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうようで、もうちょっとで帰らないといけないという時間になった

最後に俺たちはたくさん写真を撮った

飛行機に乗ってからこの2日間の思い出をずっと話していた

尽きることがなかった

そしてあっという間に日本に帰ってきてしまった


成田空港に着くと、お父さんやお母さん、茜ちゃんがお出迎え

遙父「遙、鳴海君楽しかったかな?」

茜ちゃん「お姉ちゃん?楽しかった?
     お兄ちゃんも。」

そうやってお出迎えを受ける


家に向かって車は走り出す

遙は疲れていたみたいで寝てしまった

俺は遙の頭をなでる

そして俺は小声で「遙・・・ありがとな・・・」

そういった

特に意味などはない、だけど心からのお礼

そして俺はその後遙に寄り添って眠った



―――あとがき―――

南極旅行編
BAMの続編が完成しました
このシリーズは、BAMの続編で新婚旅行はどこがいいか?というアンケートにより
確定したものです
2位に4票差をつけ「南極」というのが決定しました
そのため、南極に旅行に行くという設定になったのです

といっても私にとっても南極は未知の世界でした
知識は、マンガとかアニメで見たぐらいだけで、ペンギンがいるとか、
昭和基地があるとかそんな知識しかないんですよ
どうやって行くのか、どんな寒さなのか、地理的にはどうなっているのかなんて全くわかりません
というわけで、かなりSSの作成が困難だったのですが、とりあえず完成させたところです

そこでちょっと調べてみたんですが、意外と南極旅行ってあるんですね
かなり珍しい話なのかと思っていましたが、何気に1万人とか、南極に旅行しているそうです
そして南極に行く方法ですが、主にクルージングが多いそうです
飛行機という話はあまり聞きません

そして、南極に行くときには環境省かどこかへの届出が必要だそうです
届出とか確認証とかそんな良くわからない手続きが必要になります
ここに書いていると長くなってしまいますので、その説明は省略します

ほかにも、南極へ行くツアーなんかも存在するそうです
南極に興味があるなぁ なんて人は、「南極 旅行」みたいな語句でYahooなどで検索してみてください
いろいろと南極旅行に関する体験記や、行くための手順などが載っているサイトなどがありますよ


さて、いつもどおり裏設定などを公開します
SSを書く際は表設定よりも裏設定のほうが充実していることが多いですが・・・

まず、あみだくじですが、茜ちゃんは本当に不正はしていません
本当に孝之と遙が選んだところがそこになったんです
イリュージョンをつかって不正をしたということは全くありません
それと、茜ちゃんは何故、南極と書いたか
本当に気分です
ただ、世界地図を見て「あっここいいかも」なんて書いただけです
茜ちゃんはそこにあたるとは全く思っていませんでした

そして、南極のチケットの件です
実は、お父さんが手配したんです
どうやってかというと、遙父の友人にそういう旅行が好きな人がいて、その人経由で譲ってもらったんです
そのため、少し出かけていたんです
その露店というのは、その友人が立っていたのです
その友人は遙父をかなり尊敬しているので、進んでこの役を引き受けてくれたんです

ではなぜその道のほうで露店をやっていたか
まあ結局孝之のルートを見てからだったんですね
実際、遙父は孝之のコメを買いに行ったときの動きをチェックしていますから、「こっちに立っていてくれ」
なんてことができるわけです
ちなみに、孝之が露店に気づかなかった場合は、後で遙父が買いに行くというシナリオでした

孝之が露店で買ってくれるのを祈って遙父は家に帰ります
そして、遙には南極の旅行は無理だと伝えます
帰ってきた孝之の表情から見て「あっ、買ったな」と予測します
そして、あの場面になったわけです
無理だと伝えてあってから、買ってきたなんていったほうがかなり感動するだろうという遙父の作戦です
もちろんその作戦を知っている人は遙父・遙母しかいません
遙母がコメを買いにいかせたというものも遙父の作戦の一環だったのです
(700円というのは単に気分です)

ちなみに飛行機に乗っていた人は、ちゃんとした客です
普通に南極行きの飛行機ということなので、いろいろな人が乗っています
もちろん、現実ではこんな飛行機存在しませんが・・・

それから南極での行動は、自然の偉大さを前にした旅ですかね ただ歩いていろいろ見ていたわけです
まあ、二人でいるわけですからずっと同じ景色でも絶対に飽きることはないですね

泊まったホテルはちゃんとしたところで、全く普通です

2日目の伝説については、まあ遙伝説ですから・・・
孝之がペンギンと話して(?)いるときに
目を放した隙に遙がペンギンの群れに連れて行かれたんです
というより、すぐ脱出できるとは思いますが・・・これは伝説ということで

その後もいろいろ見て回って帰ってきたわけですが撮った写真は450枚ぐらいです
480枚使い切ることはなかったですが、かなりの数を撮っています
まあ、ほとんどが氷山やらペンギンですがね


さて、それからどうなったかというと、
現像した写真を見て茜が大笑いします
で、「お兄ちゃん、これなに?」
と聞いてそのときの様子を話します
そのときに家族全員集まってきて、その話の披露会になって・・・
そのとき遙はもうずっと顔を真っ赤にしています

そんな後日談もありますが、今回は一応南極から帰ってきたところで打ち切りました



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