「あけましておめでとう、はい、これ」
「もうちょっとちょうだいっ」
「今年もいっぱいあげたでしょ?」
「えーっ、じゃあ、お父さんとお母さんの昨日の夜の写真、今度幼稚園に持っていっていいのかなぁ?」
「うっ・・・」
「あのねぇ・・・美玖(みく)・・・」
これはお正月、鳴海家の風景である
孝之は茜が高校卒業、そしてオリンピックで金メダルを取ったあと、めでたく結婚した。
ちなみに俺はそのときのコーチである
大学は行っているのだが白陵はそんなに忙しい大学でもないため、
茜の大会のときや、茜が部活をしているときちょくちょく抜け出しては、コーチしている
(いまでもしている)
そしてオレたちは1人の子供(美玖)を授かり、大変ながらも幸せに暮らしているのである。
そしてお年玉をもらって早々第一声がこれである
まったく・・・誰に似たんだろう
ちなみに美玖は4歳・お年玉の中身は2000円
お金の価値とか理解しているのか
そもそもどうせお年玉をもらっても結局母親である茜に渡しちゃうわけだから、別にねぇ・・・
結局美玖は親戚とか合わせて10000円、
そしてさらに慎二から10000円(美玖は慎二を操るのはうまいようだ)もらっている
「そろそろいくか。」
茜「そうだね」
茜はいつもの私服のままで出かける準備をする
これから初詣に行くのだ
行くメンバーは6人(美玖も含めて)である
涼宮さんは絵本作家になり、それも1作目である「ほんとうのたからもの」がヒットし
雑誌などに引っ張りだこ
速瀬は茜と同時期にオリンピックに出場、距離が違うもので金メダル
要するに二人で金メダルを取ったことになる
そして、慎二はなにもなし。ただの大学生
オリンピック出場2人・そして金メダリストのマネージャー・人気絵本作家と並ばれると
慎二はかなり惨めなものである
とはいえど、まあ仕方がない。そういうメンバーなんだし・・・
そこはかとなくこのグループが注目されながらも、近くの神社に到着し、お参りする
美玖は人が多いのがいやなのか、それとも単に飽きたのか、今にも泣きそうな表情をして
茜にくっついている
そして茜は優しそうな表情で美玖をみつめ、はなしている
数年前まであんなにませていた茜だが、やはり母。しっかりしている
じゃんけんをし、負けた慎二が人数分のお札(ふだ)を買ってくることになった
みんな、慎二がじゃんけんの最初は90%の確率でチョキを出すのを知っている
ぐー・ぐー・ぐー・ぐー・ちょき で、1回で決着がついた
「俺、じゃんけん弱いよなぁ」と慎二は自覚しているのだが、その法則に気づいているのだろうか
並んだら確実にイライラしそうな長蛇の列に慎二を置いてきて、みんなでおみくじのほうへ行く
速瀬「やったっ!大吉ッ」
速瀬は大吉を引いて喜んでいる
茜は引く前にこういった
茜「孝之、今日の昼ごはんをかけておみくじ勝負しない?」
おみくじって勝負するものなのか・・・?
とは言えど、断る理由もないので
「よしっ。」
そして茜ちゃんが引く
「大吉っ!!!」
茜は「えっへん」といった感じでこっちを見る
くそっ、負けてられねぇ!
次に涼宮さん、大吉
・・・・ここは大吉が出やすいのか?
楽しそうに引いているのがうらやましく見えたらしく美玖も
大吉っ!
これは結局、俺も大吉を引いて引き分けーってなるのかな?
考えずに引く
・・・・・・
末吉・・?
茜がのぞきこむ
茜「やったっ!孝之末吉だ☆ご飯おごってね」
痛い出費だが、まああんな笑顔で言われたら断れるはずがない
それ以前に勝負だったからな・・・
慎二「なに盛り上がってるんだ?」
速瀬「ああ慎二君、慎二君もおみくじ引いてみれば?」
慎二「ああ、そうだな」
わかってる・・・慎二が今引いたら確実に「大吉以外のものを引く」ということを
・・・・
慎二はおみくじを引くなりかなり暗そうな顔をした
「慎二、どうしたんだ?」
とおみくじを覗き込むと「凶大大 番四四四」
・・・なんだこれ・・?
大大凶?
それを察したおみくじの前にいる巫女さんが、「あっ、それは1枚しか入れないおみくじです」
と話しかけてきた
慎二はさらに暗い表情をする
巫女「おめでとうございます、1年で一番運が悪い人ということになりました」
・・・慎二の魂が抜けたような気がした
すると、美玖が慎二のところにいって、「これあげる」と大吉のおみくじをわたした
慎二「ありがとう・・・美玖ちゃんはやさしいな・・・」
脱力したような言葉だった
にしても・・・4歳児に慰められる24歳独身男性・・・なんか惨めだ・・・
まあ、結局そのあと美玖が暇そうにしていたので、「お先に帰らせてもらうね」と言い残し
涼宮さんと、速瀬と慎二を置いてきた
そしてそのあと3人でご飯を食べに行った(もちろん俺の奢り)
大吉だったから高いものを頼むという意味不明な理論から茜は1900円のセット+デザートを頼んだ
美玖も茜に性格が似てきた(というより速瀬のほうが近いかもしれない)ようで、
なぜか俺の奢りの時には高いものを頼むのだ
茜が奢るときには安いものを頼むのに・・・
とはいえど、まあ二人の笑顔が見れるだけでいいかな
おいしいものを食べているときの美玖の笑顔、茜の笑顔、見ているこっちが幸せになってくる
おみくじは末吉だったけど・・・俺にとっては今年もまた大吉な一年になるだろう
茜と美玖がいるからな。
ちなみにわかっているとは思いますが美玖は完全にオリジナルです
特にこれから登場することもないでしょうね・・・
本当にオチなしのSSでした