孝之編(孝之視点) 遙編(遙視点) 完結編
 
<孝之編>


〜9月9日(水)〜

いつものように孝之は学校に来ていた

孝之「相変わらず・・・担任、HRの話なげーよ」

慎二「しょうがないんじゃないか。全部重要な話だし
   ほら、孝之に関係する話もあったけど、聞いてたか?」

孝之「えっやば!!聞いてない」

慎二「おいおい、しっかりしろよ・・・
   ほら孝之、白陵大に進路変えただろ、
   白陵大に行く人は、今日このHR終わったらプリント配るから
   ちょっとだけ待ってろだって」

孝之「えっ、あーよかった
   慎二、教えてくれてありがとな」

そう・・・学校ではいつもと変わらない生活

でも、今日の孝之の生活には大きな変化がある

それは、ちょうど一週間前のことだ

テストで平均95点以上取ったら、1週間遙のうちに泊まるという約束をした

今までテストでいい点を取ったことが無かった孝之が、
(そもそもエスカレータ式の進学をあきらめろといわれていたぐらいですから)
いきなりこんな高得点を取ってしまうなんて・・・という驚きはあったが・・・


そして、その1週間という日々が今日終わる

楽しい時間というものは、すぐに過ぎてしまうもので、あっと言う間に終わってしまった1週間

そのあっという間にもたくさんの思い出があった

遙の家族の生活ぶりは、イメージどおりであったが、
一緒に過ごしてみて、今まで以上に温かさを感じた。

遙のうちに着いた

荷物をまとめて、遙のうちを出る

お父さんや茜ちゃんはいなかった

遙母「鳴海さん。泊まりたくなったらいつでも来ていいですからね」

孝之「はい。そのときはまた厄介になります・・・」

遙「孝之くん。また泊まりに来てね」

孝之「わかってるって。遙。
   じゃあ、1週間お世話になりました。」

遙のうちを出てきた

1週間というのは約束だ

守らなくてはならない

遙の家族からの感じを悪くするわけにもいかないし
それよりも、遙に、「約束を守れない人」なんて思われたりしてもいけない

おれは、そんなことを考えていた

家に着く

1週間ぶりに帰ってきた

新聞もたまっていて、郵便も少しだけ入っている

それ以外は、俺が出てきたときとかわりが無い

郵便受けから新聞1週間分と、わずかな郵便を取って、家の鍵を開ける。

家の中もほとんどかわらない

すごく懐かしさを感じた

今までずっと遙のうちに住んでいて、1年ぐらい家に帰ってきてなかったかのように・・・

懐かしい・・・でも、なにか、物足りなさを感じた

なんだろうか?

窓を開けて空気を入れ替える

さすが何もしなかっただけあって、窓を開けると、空気がすごく変わる・ほこりも舞う

今までの生活を思い出した

まず、家に帰ってきたら、エアコンをつけて、ベッドに寝転ぶか、イスに座るんだ

それから、冷蔵庫を開けて、何かを飲むんだ

最近はまっていたのは麦茶

夏から秋にかけては麦茶に限る

麦茶のパックを買ってくれば、安く出来るし、のどが渇いている時には最高だ

その、【いつものように】をする。

しかし、やはり何かが違和感を感じる

物足りない

とりあえず買いだしに行ってこよう

家をでて、近くにあるスーパーに買い出しに行く

スーパーに着いたのは5時45分

6時まであと15分ほどある

6時になると店の人がどんどんと値下げのシールを張っていく

その貼られてからほかの人にとられるまでの短時間が勝負だ

失敗すると飯の量が少なくor単価が高くなってしまう

それは免れたい

6時だ!!

その瞬間、アルバイトらしき店員や、結構長く勤めているであろう人まで動き出す。

狙っているのはササミチーズフライだ

いつもより安いのだ

残り二つ

店員が近づいてくる

3割引のシールを貼った

よしっ

貼られてからまもなく手に取る

200円→140円は大きな得だ

それと、色々と3割引〜半額の商品を手に取り、買って行く

あと、明日の料理用の肉も買って、大収穫だ!!

家に向かう

家について、早速飯を用意する

ご飯の用意が出来たのは7時過ぎ

買ってきたササミチーズフライと、煮物、サラダなどを開ける

そして、炊けたご飯を茶碗によそる

そして残ったご飯をラップにくるみ、冷蔵庫に入れる

いただきます

悲しかった

突然悲しくなって、食べる気が一瞬失せた

なにか、寂しい気分

遙の家に泊まりに行く前と同じ生活なのに・・

ササミチーズフライを口に入れた

あの茜ちゃんとの一件の記憶がよみがえる

これほど悲しくなった食事は初めてだ

それでも、ご飯を食べ終え、お風呂に入る

懐かしいお風呂だ

1週間ぶり

お風呂を沸かす

沸かしている間もなにか、違和感を感じた

そうか、遙のうちにいたときは、この時間帯は
みんなで遊んでいたり・・・お風呂に入る前はきまって茜ちゃんがちょっかい出してきたっけ・・・

やはり思い浮かべてしまう

昨日までの日々を・・・

お風呂に入っても落ち着かなかった

ぽっかりと空いた穴が、自分の中にある

俺は、行動に移した。

今日持って帰ってきた荷物を持って外へ出た

外は、いつもより肌寒い

昨日までは蒸し暑かったのだが、それが嘘のように少しひんやりしている

帰ってきたときよりも荷物が軽く感じた

歩き出す・・・

そして、すぐ走り出す

遙のところに行くために・・・

遙の家族に「約束を守らないやつ」と少し思われても仕方が無い

おれは、遙に会いたい

また、遙と一緒に過ごしたいんだ

 
<遙編>

遙「あぁ・・・孝之くん、帰っちゃったなぁ・・・」

遙のほうも気が沈んでいた

ほんとうは、あのとき孝之くんを止めていれば、
1週間って言ったけどこれからもずっといて。

ってあまえていればよかったのだが、

やっぱり「1週間」と言い出したのは自分で、
父や母にもそのように話していたため、それを超えてはいけないだろうと
直前に考えてしまったのだ

というわけで、気が落ちていた

遙「そうそう、今までの生活に戻るだけ」

そうやって、いつもどおりの生活に戻ろうと、机の前に向かい、勉強しようとしても
集中できない

孝之くんのことを考えてしまう

ノートに予習として英文を写そうとしても、集中できない

いつの間にか無意識になって、ぼんやりしていて、その後ふとノートを見ると
孝之くんの名前を何回か書いていて・・・

そのままいつのまにか6時になっていた

遙父「ただいまー。」

お父さんが帰ってきた

遙父「鳴海君は帰ったのか?」

遙母「ええ・・・今日荷物を取りに来て帰りましたよ」

遙父「そうか・・・」

少し時間がたつと、茜も帰ってきた

茜「ただいまー!!」

遙父「おぉ・・・お帰り茜
   今日は早かったな?」

茜「うん。今日は部活はミーティングだけだったから・・・
  まあ、5時ごろ終わったんだけど、6時まで自主練して・・・
  で、お兄ちゃんは?」

遙父「ちょうど約束の1週間ということで帰ったみたいだ。」

茜「そっか・・・」

今日は茜が帰ってきたのが早かったということで、いつもより早くご飯が始まる

台所からいいにおいがする。

いつもなら、これでご飯を食べる気がいっぱいになるのに

なんだか、今日は気が進まない

いつもの席に座っても、ついぼーっとしてしまう

そしてそのときは決まって、空いている席―つまり、今まで孝之くんが座っていた席を見てしまう

遙父「そんなに気が沈んでるなら、また今日から鳴海君をうちに呼べばいいじゃないか?」

遙「だって・・・1週間ってお父さんとお母さんと約束したし」

遙父「そんな約束なんて破ってしまえばいいんだ
   よしっ、じゃあ、その約束は無かったことにしておこう
   1週間じゃなくてこれから毎日いいぞ」

茜「お兄ちゃんだって、同じ事考えているはずだよ
  ほら、お姉ちゃんはおにいちゃんを迎えに行くの!」

遙「うん!」

走り出した

家をでて、孝之くんの家に向かう進路を行く

孝之くんのうちへの道は3通りあるが、
この道に孝之くんがいるんじゃないかと感じた

早く孝之くんに会いたい

あってたくさん甘えたい

だって、少し寂しかったんだから

もう、孝之くんを孝之くんのうちに帰さないんだから

今日からずっと、うちに泊まってもらうんだから。

 
<完結編>

孝之「遙!!」

遙「孝之くん!!」

遙と孝之の家の中間地点のあたりだろうか

ついに会うことが出来た

孝之「あぁ・・・すごく寂しかったんだ
   あれからずっと気落ちしてて、
   時間があれば遙のことばっかり考えちゃって・・・」

遙「私も、孝之くんのことばかり考えちゃって
  今日、何も出来なかったんだよ。
  寂しかったんだから」

孝之「ごめんな、あの時かえらなければ良かったんだけど・・・」

遙「ううん。私が止めてれば良かったんだから・・・」

孝之「これからずっと、遙のうちで過ごしたい」

遙「うん。私も、孝之くんがずっとこれからも泊まってほしいなぁって。
  もう、孝之くんをうちに帰さないんだから。」

孝之「ははっ。
   でも、帰らないから。
   俺もずっと遙のうちで過ごしたいんだから。」

遙「うん。」

二人は抱き合う

力強く抱き合う

たった数時間の寂しさも耐えられないほどになっている。そんなことにお互い気づいた

いろいろ強がっていたこと。

変に約束を守ろうとしたこと、馬鹿馬鹿しく感じた

ちょっと肌寒い秋の夜

二人は手をつなぎながら歩く

遙「ただいまー!!」

孝之「おじゃまします。」

茜「おかえりー、お姉ちゃん。
  ほら、お兄ちゃんも・・【おじゃまします】じゃなくて【ただいまー】でしょ」

孝之「ただいま。」

茜「おかえり。お兄ちゃん」

遙父「おぉ・・・鳴海君。お帰り。」

孝之「あっ、お父さん。」

遙父「ほら、そんな、【これからも泊まらせてくれ】なんていわなくていい
   鳴海君はうちの家族だからな。」

遙母「そうですよ、鳴海さん。」
ぐぅーーー

遙と孝之のおなかが同時になる

茜「変なところでも息ぴったりだね・・」

遙「だ、だって・・・さっきご飯食べられなかったんだから(焦)」

孝之「俺だって、飯買ってきたけど、一口も食べてない」

遙母「鳴海さんの分もありますから
   ご飯にしましょう」

茜「さすがお母さん。お兄ちゃんの分まで用意するなんて」

遙母「まあ、こうなることは分かってましたし。」

ご飯を食べて、ゆったりする

茜ちゃんが いつも ・・・ のように、トランプを持って

茜「お兄ちゃん、今日は負けないからね!!」



いつもどおりの、そして新しい生活が、また始まった


<FIN>



―――あとがき―――

ついに完結しました
最後のシーンは考えてありましたが、意外と6作品の中で1番難しかったような・・・

特に、最後の遙と孝之が走り出すシーン
あれは、かなり悩んで作ったものです
今回は笑いシーンなしという事で
最後は、そういうシーン作れないんですよね
終止お笑いだったら完結しないと言うか・・・
孝之は遙との同棲を決めました
このまま結婚しちゃっても大丈夫のような・・・
孝之の誕生日はいつか知りませんが、
もし孝之が18歳になっているとしたら、もう結婚できますし
(男性は満18歳・女性は満16歳から結婚できます)

さて、最近、展開の確認のため、テストインラブを1から全て読んでみたのですが
一瞬、なんだこれは?と思ってしまいました
いやぁ・・・自分で読んでいる時、かなりニヤケがとまりませんでしたよ
なんですか、あの恥ずかしい文章は、と思ってしまいましたし・・・(自分で書いたのに・・・)
あれ読んだあとは、小休止を入れたほうが良いと思います
そうしないとニヤケが暴走する可能性が・・・
そうなったとしても一切責任は負えません(笑)

テーマは「家族愛、そして愛」でしたかね
24時間テレビのテーマになりそうな名前ですが、
とにかく「家族愛、そして愛」なんです

遙母は、孝之が帰って来るのは分かっていたみたいですが、
だからといって孝之の分までご飯を作るのはすごい
絶対来るって相当自信あったんでしょうね

孝之がこの日自炊をしなかった理由は、面倒だからです
帰ってきて間もないということと、
こんな気分で自炊なんかやりたくないという理由です

遙の家から自分の家に帰ってきてから、ずっと気落ち状態だったので
そんな自炊なんてする気力は無いのでしょう

いつものテストインラブとは違った形になりました
やっぱり締めということで少しだけ難しかったです
気づきあげてきたテストインラブの作品を
締めでも崩さずに守れたでしょうか?



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