(設定=SFD水月END)

カレンダーをふと見た孝之は、少しニヤケ顔になってしまう

まあ、それもそのはず、
彼女いない暦=年齢から8月に解放され、いまや彼女を、大好きな人をGetしたわけだ

というか、まだ水月と出会って(正式には知っていたが、話すようになったのは今年)1年もしてない

グラフにするとなると、大変なぐらいの上昇量で俺の水月に対する想いは増えていた

クリスマスといえば恋人たちの大切な夜という意味合いがある

去年の俺はそんなことはいってなかったがね


見えずとも誰れ恋ひざらめ山の端にいさよふ月を外に見てしか

というような気持ちだ

ああ・・・恋は俺を俳人にする・・・


涼宮「な・・・鳴海くん?」

後ろを向くとちょっと恥ずかしそうな表情をしている涼宮さんがいる

うぉおおお!
何で俺の失態は必ず誰かに聞かれるんだ・・・

と声に出したいぐらいだったがとりあえず抑えてちょっと恥ずかしそうにする

涼宮「鳴海くん、水月のこと大好きなんですね☆」

前という前は、涼宮さんはほとんどしゃべらないような感じだったのだが、
水月に関する相談(?)のあたりからちょっと何かに吹っ切れたような笑顔を見せるようになった
というか、あのころの原因は明らかに俺だろうな・・・

まあ、そんなこんなで、いま涼宮さんがうちにいる理由は、相談しているわけだ

表情に出やすい俺は、どうやってクリスマスまでプレゼントを隠すか
そもそも、何を送ったらいいのか?という質問である

誕生日は二人で歩き、シルバーリングを買ってあげたものだ

そのあと、水泳の後に何かかってあげたりしたことはあるが、
今までのプレゼントは全部「水月と一緒にいたとき」なのである

今回は、1人で選びプレゼントを贈りたいんだが、その肝心のプレゼントが全く浮かばない

変なものを買って怒らせてもいやだし、なんなら、いいものを贈りたいってものだ

立ち話よりもあったかい(?)部屋の中のほうがいいだろうということで入れたわけだ

もちろん部屋は片付いていて、「男の子の部屋でも綺麗なんだね」と涼宮さんは感心していた

さすがに水月を招待するのに汚い部屋でいるわけにはいかない・・・


相談ということで呼んだのだが、よく考えると「ばれないようにする」ということが涼宮さんに出来るのか
後で気になった

というより、涼宮さん・・・無理かもしれない・・

水月に隠し事をするとたいていばればれの行動をとることを思い出した
これじゃあ、2人で挙動不審で、ばれる効果2倍じゃないか・・・

とはいっても渡すまで後2日

何とか・・・出来るだろう

ちなみに何でばらしたくないかというと、そりゃ・・・びっくりさせたいからね


もちろん、水月に街で会ったときプレゼントなんて持ってたら、確実にばれるだろうから
水月が今日は練習ということを知った上でその時間に買いに行くことにした


電車に乗る

切符を買うときに涼宮さんがもたもたしていたので聞いてみると、
自動券売機の難易度が高いらしい。

・・・?と思っていたが、見ていてわかった

1000円札を入れるところがあるんだが、そこに入れるときにちょっと奥まで入れないと
自動挿入の状態にならないんだが、それになる瞬間、「ピクッ」っとなってしまうみたいで、
それゆえに、「変な挿入のされ方」ということで排出される
それの繰り返し

見かねて俺は入れて、買ってあげた

まったく・・・涼宮さんはすげぇよ・・・いろいろと・・・
(そこはかとなく微妙な出来事がたくさん起こる)

さて、そんなこんなで電車に乗る

最近このあたりの電車も新しくなり、電車に液晶がついた

液晶というのは、情報表示画面のことで、
出口の近くに2つずつ
一つは次の駅とかそういう情報
もう一つはCMみたいなのとか、天気予報とかが延々と流れている

こんどはそのCMの雑学クイズが気になったみたいで、必死に答えていた
まあ、全部不正解だったが・・・

「次は〜橘町〜橘町〜」

区間自体は短いので、すぐついた

橘町にはさまざまな買い物施設がある

たとえば商店街

おもに、スーパーで買い揃えるようなものが「専門店」として並んでいる

水月とよく手をつなぎながら買い物に来る
そのときはたいてい店の主人に冷やかされるなぁ
まあ、それでも「いい商店街」って感じがする

一方、駅前には大型デパートが2件ある

左右のデパートは連絡通路でつながっていて、
右にあるデパート四越は、駅にもつながっている


ほかには駅から15分ほど歩いてはなれたところに行く必要があるが、そこには
JAZZCOという、大型スーパーがある

大型スーパーといってもスーパーだけでなく衣料品・文房具などのものも売っているものだ


JAZZCOは遠いこともあり、あきらめデパート中心で商店街を歩くことにする

まずは商店街を歩き、一通りよさそうな店にめぼしをつけてからデパートへ行く


それから一通り涼宮さんの意見を聞きながらフムフムと、買うものを考えている

デパートでも一通りのフロアを見終わり、結局商店街の小さな雑貨屋さんで買うことにした

これは「ここいいなぁ」という俺の考えと、涼宮さんの「ここなんかいいんじゃない?」という意見が
一致したものによる

さて一方水月のほうは、

メインコーチ「よぉし、これで終わりだっ!」

水月「はぁ・・・えっ?これで終わりですか?」

メインコーチ「まあ・・・今日はちょっと私のほうに用事があってな」

水月「このプールを使ってることは出来ないんですか?」

メインコーチ「練習意欲があることは認めるが、
       監督者がいない場合は無理らしいんだ・・・
       よし、えっと・・・今度の練習は26日だ」

水月「コーチ、わかりました。じゃああがらせていただきます」

水月は更衣室へ行き、着替えをする

時計を見るとまだ11:42
持ってきたお弁当も食べることもなく練習が終わってしまった

水月「孝之も待ってるだろうし、食べないで帰ろうかな」

水月は駆け足で地獄坂を降りる

そんな水月はふと考えた

そうだ・・・あさってはクリスマスイブだ と。

水月も孝之を驚かせようと、プレゼントを買うために橘町へと向かったのである

橘町へは水月は走っていった
少しでも安く上げれば、孝之にそれだけ少し高めのプレゼントを送れるからである

JAZZCOの前を通過し、かけて商店街の前に行くと、隠れたくなる光景だった

いや、別に隠れなくてもいいんだが、
すこしだけ独占欲があがっていた水月にとって離れてみるほかなかった

完全に水月の勘違いであったが、運悪く、これからの出来事を目撃してしまうのである


孝之と遙は水月のことで盛り上がりながら話していた

ほとんどは特にたわいもないことで、孝之は少々水月を馬鹿にする発言もある

もちろん、それは愛が故の発言であるということを遙もわかってて
「そんな、水月にいったら怒られるよぉ・・・」とまた笑いながら話しているのである


そんなときある女子高生(白陵とは全く関係ない学校)が
「あ、ヤン様だっ!」と発言すると、またたくまに商店街にいた
おばさんたち+女子高生の流れが出来た

そう、ヤン様はドラマ撮影のため日本を訪れていたところ、
たまたまの自由時間にフリーで行動していたのである

このことはペ・ヤン・ジュンの希望であり、「1人で歩きたい」という言葉で抜け出したらしい

もちろん、そのことはその後にニュースになったのだが、実際そっちは関係ない

その流れは急で遙がふらついていた

孝之が人の流れが緩やかなところに遙を誘導しようとしたとき、
そのとき猛進おばちゃんが遙にぶつかり、そして、孝之のほうにちょっと体を預ける形となってしまった

その時間は3秒ほど、両者固まっていた時間を考えると長いとはいえない

こんな瞬間をたまたま影にいた水月は見てしまった

孝之の肩と遙の肩が接していたそんな形

水月はたまたまそうなった瞬間のみ(ぶつかったところとかそのあたりは見てない)見てしまったので
更なる不運である

水月は誤解とは知らずにショックを受け、走り出していた

そのとき遙は「ごめんなさい、ごめんなさい」と孝之に謝っていたわけだが。

その後、雑貨店での買い物を終え、自宅へ帰る孝之

今の状況がどうなっているのか知らない

いつもの日課である水月との電話もこの夜は出ず、17コール後にとめた


孝之はそのまま寝てしまった


水月との連絡が取れず2日

とうとうやってきたクリスマスイブ

水月は、怒ってはいながらも平然を装って孝之の家に行こうとした

それでも少し顔が引きつる

水月はこのことを孝之に聞いたら、もしかしたら何かが終わってしまうのかもしれないと恐れていた

水月も孝之のことが好きで好きで仕方がない

だからこそ、疑惑をはっきりさせたいながらも、このままでいたい、天秤にかけるような想い


結局孝之の家に着いた

ピンポーンと押す手が少しだけ震えている

「うん、あれは何かの見間違いだよ」と自分に言い聞かせる

だが、見てしまった以上は真相を知らない以上、誤解のままである

押すと孝之が出てきた

「お、水月、待ってたぞ」

そして奥から出てきたのが・・・「遙っ?」

水月はつい声にこの名前を出した後、走り出していた

ちなみにこのパーティーは、お昼は4人でやるつもりだったのである

もちろん、慎二も奥にいたが、慎二は料理を一つだめにした罰であらいものをしていた

孝之は追いかける

とはいえど、水月は運動部に所属しているため足が速い

いくら自分の足も自信があるとは言えど、長期戦になれば、どんどん足が遅くなり、
結局は止まってしまう

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

完全に見失ったのは橘町

そこまで走っていたわけだ

水月も俺が追いかけているのに気づいてながらも逃げていた

孝之には何があったのかわからず、
水月はあの時何があったのかわからない

同じ場面を見た人が違うことを思うことがあるように、人間の思考も面白いもので
よく食い違う

水月はどんどんと逃げていた

遙と慎二は家に待っていながらも何があったのか全く不明


孝之は一度帰った

日付的になんとなく心当たりが思い浮かんだのだ

だからこそ孝之はあのときにかった「プレゼント」を持ったのだ

おれの・・・俺の気持ち・・・

涼宮「どんなのがいいか決めてる?」
「まだ決めてない、だけどゆっくり選んで決めるよ
 こんな今日呼び出して、それで単に自分だけで決めるなんて・・・
 ちょっとごめんね・・・」
涼宮「ううん、水月を喜ばせてあげてね☆」
「あのバカ、俺が水月を裏切るなんて、あるわけねぇだろっ!」

俺は走っていた

とにかく、橘町でいなくなったんだ。
その辺りにいるだろ、と。

慎二はなんとなく事情を理解し、「探すの手伝おうか?」と聞いてきたが、俺は断った

涼宮さんはこのことを理解しているようだ

2人に謝って明日(25日)にパーティーをやろうといった

おれは今日は見つけるまで水月を探す

橘町といえど、広い

店1つ1つを聞き込みし、方向を聞き出そうとするも、見た人が少なく
ばらばらな意見で統一性がない

どこかの店に入ったことも考えると見つけられる確率はかなり低くなる

だけど、見つけられる気がしていた

だからこそ、見つけるまで探そうとしていたのだ


水月の髪型は特徴があり、探し安いのだが、どこを探してもいない

的ハズレってことか?

時計を見ると7時17分

ああ、約5時間が経過したってことか・・・

すれ違いなども考慮し、同じ場所は3周ぐらいしていたので、
かかる時間は通常の3倍

さすが冬ということで、夜になるのが早い

そして寒い

うぅ・・・冷えてきた

それでも探さないといけないんだ

・・・あっ!!

そうだよ・・・あの丘だっ!!

丘から急な坂を下っていけば橘町に着くということは知っていた

だけど一方通行的な認識しかなかった

そう、橘町から丘にいけることを完璧に忘れていた

これで確信した

絶対に丘にいると

学校のほうを回ればある程度坂は楽になる(距離は長くなるが)
だけど、そんな暇はない

水月が待ってるんだ

俺には「確実」という自信があった

上っている間、二度ほど転んだ

だけど、だるまの起き上がり、そして上っていく

すぐだった

いや、時間はかかったのだが、すぐに感じたのかもしれない

もう暗い

それでも丘の上の大きな木の下に1人座っている影が見えた

そこまで走っていって

「よぉ・・」と声をかける

水月はびくっとなりながらもそこに座っていた

どこか遠くを見た感じで

雨は降ってない

ところどころぬれてるのは水月の涙なのかもしれない

「寒くないのか?」

水月「孝之こそ、寒くないの?」

お互いに同じことを聞く

そのあと、
「水月っ」

俺は名前を呼んで1mぐらいの距離からあるものを投げた

そう、「プレゼント」を。

水月「なにこれ?」

何も言わずに渡す

そしてあけ終わったと同時に話し始める

「ああ、22日に買ったんだ、橘町で
 いままでプレゼントを一人で買ったことがなかったから、どんなものがいいか
 まったくわからなくてね・・・」

水月「・・・」

「そう、涼宮さんを誘って買いにいったんだ
 涼宮さんなら水月の友達だし、少しはわかるとおもって、相談したりしてたんだ」

水月「・・・え

「プレゼントがあるということを内緒にして、あとでびっくりさせようと思ったんだ」

水月「え・・・あ・・」

水月が涙をよく拭いてこっちを見る

水月「たか・・ゆき・・?」

水月「でも・・・」

「・・・ん?」

水月「あのとき・・・遙と抱き合ってたのは・・・?」

あちゃ・・・それを見たのか・・・どうりで怒るわけだ・・・

涼宮「あれは・・・水月・・・ゴメン・・・」

えっ・・・?
どこから遙が?

涼宮「あのときね、後ろのほうに人の流れが出来てて、どうしていいかわからなくて、
   困ってたときに鳴海くんが誘導してくれたの
   うん、助けてくれたの
   だけど、そのとき人に当たっちゃって、転んじゃったの・・」

水月「そう・・・なの?」

涼宮「ホントごめんっ!水月、誤解するようなことになっちゃって本当にごめんっ!」

水月「なんだぁ・・・簡単なことだったんだね・・・」

そして水月はもう一度涙を流す

涼宮「よし、じゃあ鳴海くんと水月の仲直りということで、二人ともキスしてみて」

「ぶぅ・・・!」

水月「は、はるかっ!・・・あのねぇ・・・」

涼宮「いいじゃない、仲直りした恋人さん」

・・・なんか涼宮さん変なもの食べたか?妙にハイテンションだぞ?
よし、開き直る

「そうだな」

水月「って、孝之までっ?」

すぐに水月のそばに行き、キスできる体制になる

水月「なんで遙の前だよ?」

「いいじゃないか、オレたちすごく愛し合ってるんだし」

水月はその言葉に反応して顔を赤くする

水月「も・・・もぅ・・・孝之ったら・・・」

水月が力を抜いて俺に体を預けるような形になる

そして・・・オレたちはキスを交わす

涼宮「これで仲直りだねっ!」

水月は恥ずかしそうな顔をしている

涼宮「あっ、雪だっ」

「あ、ほんとだ」

これが世に言うホワイトクリスマスというものだ

雪は寒いだけだが、こんなときだけは特別な存在に思える

今日の予報は晴れだったんだけどなぁ


「ぬばたまの今夜の雪にいざ濡れな明けむ朝に消なば惜しけむ」

水月「なーにいっちゃってるの?」

後ろを向くと水月と涼宮さんっ!

がぁあああ!
気分がハイになってて二人ともいるのわすれてたぁ!!!!


―――あとがき―――

いつもとなんとなく書き方が違うようです
最近シャナの小説を読んで文に触れたからでしょうか

さて、今回は2回短歌がでてきますが、どちらとも万葉集の短歌です
片方は恋の詩、もう片方は冬の詩から選ばさせていただきました

それにしても・・・やっぱり慎二の扱いわるいなぁ・・・
今度はこぼしたから とか言う理由でSSに戦力外通告くらってるし、

一応ちゃんとハッピーエンドということでいいでしょう
孝之、途中からなんとなくかっこいいし・・
涼宮さんはどこから出てきたのか謎だし、
私が水月がメインのSSを書くと、妙なハイテンション+孝之の補助というような役回りになるようです

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