様々なテーマ

5.ある実例
 
ある教会の役員で元中学の教員の方から、その当時のいじめに関する貴重な経験談を聞くことができました。その後、校長になり、もう教員を引退してしばらくになりますから、かなり昔の話しでしょう。
ある大会社の副社長の息子が中学2年のクラスにいたそうです。その子は相当のいじめっ子であったというのです。今ではもう斜陽産業になり倒産して消滅したとはいえ、当時としては名の知られた一流企業に数えられており、その息子もクラスでいばっていたらしいのです。いじめが発生したとき、先生は犯人であるその生徒をとっつかまえてぶん殴りました。今そんなことをしたらそれこそ大問題になるかもしれません。先生はこの生徒と一つの約束をしました。家に帰ったら先生に殴られたことを必ず親に報告するようにというのです。この生徒は言われた通り、会社の副社長であるお父さんに殴られたことを報告しました。すると今度はお父さんにまたぶん殴られたというのです。数日後お父さんは、先生の自宅を訪問し、ケーキと一升瓶をもってあやまりに来られたそうです。お母さんの話しによれば、その後この生徒の一番尊敬する人は長い間この先生であったそうです。
この子は先生と父親が自分に目を留めてくれた、と理解することができたのだと思います。京都で発生したいじめによる自殺の加害者の一人は、その後別の中学校に転校し、またそこでも傷害事件を起こしたと報道されていました。おそらく、最初の事件のときも先生にも親にも殴られなかったのだと思います。先生が殴るのは今では問題ですが、本気でこの子を叱りとばす大人がだれもいなかったのではないでしょうか。本人もだれも自分に目を留めてくれなかったと感じたのではないでしょうか。