研修医宿題
鉄欠乏性貧血の治療
武田孝輔
診断基準
|
正常 |
鉄欠乏性貧血 |
ヘモグロビン |
女性 |
≧12g/dl |
<12g/dl |
男性
| ≧13g/dl |
<13g/dl |
血清フェリチン |
≧12ng/ml |
<12ng/ml |
治療
1原因疾患の治療
2鉄剤:原則として経口鉄剤をもちいる.
経口鉄剤には還元鉄、有機物と結合した有機酸鉄、および徐放剤がある。還元鉄は副作用が強いので現在ほとんど使われない。テトラサイクリン系薬剤、制酸薬は鉄吸収を抑制するのでなるべく避けるが、胃腸症状がある場合は制酸薬を併用してもよい。ビタミンCは鉄吸収を促進するので併用薬剤として用いるとよい。注射剤は術後など経口摂取が困難な症例、あるいは胃切後など鉄の腸管吸収が著しく悪い症例に対してのみ静注にて使用する。(多量の鉄を静注すると、鉄結合能を超え、鉄が直接能や大腸に重篤な障害を起こす。)経口投与では組織沈着を起こすことは少ないが、静注の場合過剰の鉄は体内に沈着し、組織障害を起こすので、必要量を計算しておくとよい。
計算法(中尾の式)…治療前ヘモグロビン値をXとすると、
総投与量(mg)={2.2(16−X)+10}×体重(kg)
(例えば、Hb10g/dl,BW50kgのモデルケースでは、23.2×50=1160mg,フェロミア2T/dayで2週間弱の投与が必要となる。)
鉄剤の副作用…悪心、嘔吐、腹痛、下痢、便秘などの胃腸症状が主で、症状が強いときには食直後の投与あるいは制酸薬の併用を行う。
代表的な鉄剤
薬剤名 |
物質名 |
剤型 |
用量 |
備考 |
フェロ・グラデュメット |
硫酸鉄 |
錠:鉄として105mg |
1日1〜2錠
1〜2回分服 |
錠剤が大きいので老人には飲みにくいかも? |
フェロミア |
クエン酸第一鉄 |
錠:鉄として50mg |
1日2〜4錠
1〜2回分服 |
胃内pHに影響されないので胃切後、胃酸低下例でも吸収がよい。 |
インクレミン |
ピロリン酸第二鉄 |
シロップ:6mg/ml
15〜6歳:90〜60mg/day
5〜1歳:60〜18mg/day
1歳未満:24〜12mg/day |
3〜4回分服 |
お子様用シロップ! |
フェジン |
含糖酸化鉄 |
鉄として40mg/2ml |
1日40〜120mg
ゆっくりiv |
電解質と反応すると塩が析出するので点滴投与時はTzで希釈する。 |
ブルタール |
コンドロイチン硫酸・鉄コロイド |
40mg/10ml |
1日20〜40mg |
ゆっくりiv |
治療経過
通常は鉄剤投与後1-2週間でヘモグロビンは増加し、1-2ヶ月でヘモグロビンは正常化する。貧血改善後も血清フェリチン値を目安として、貯蔵鉄が回復するまで3-6ヶ月ほど投与する
◆ 文献◆
・ 臨床医Vol.27増刊号 青木三千雄 中外医学社
・ 今日の治療薬2000 水島裕 南江堂
June 9, 2002
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