研修医宿題
はじめに
現在、我が国における肺癌患者数の増加は著しく、肺癌の予防・早期発見早期治療は重要な課題となってきている。その中で胸部単純X線写真、喀痰検査に加えて非侵襲的な検査である血清腫瘍マーカーの測定の有用性が問われてくる。今回は当科で入院時にルーチーンで検索している6つのマーカー(SCC, CEA, NSE, CYFRA, ProGRP, SLX)について考察してみた。
各腫瘍マーカーcut off値
SCC | CEA | NSE | CYFRA | ProGRP | SLX | 1.5ng/ml | 3.0ng/ml | 7.0ng/ml | 2.0ng/ml | 46pg/ml | 38U/ml |
各腫瘍マーカーの組織別感度
| SCC | CEA | NSE | CYFRA | ProGRP | SLX |
扁平上皮(32症例) |
19/32(59%) | 18/32(56%) | 11/32(34%) | 28/32(88%) |
2/32(6%) | 5/32(15%) |
腺癌(42症例) |
3/42(7%) | 21/42(42%) | 13/42(30%) | 20/42(48%) |
5/42(11%) | 20/42(48%) |
小細胞癌(7症例) |
0/7(0%) | 2/6(33%) | 6/7(85%) | 2/2(100%) |
6/7(85%) | 0/3(0%) |
大細胞癌(3症例) |
0/3(0%) | 1/3(33%) | 0/3(0%) | 3/3(100%) |
1/3(33%) | 1/3(33%) |
臨床病期との相関
扁平上皮癌において陽性率の高かったSCC, CEA, CYFRAにてマーカーと臨床病期について検討したところ、CYFRAと臨床病期は相関関係が認められた。また、早期(I期)陽性率はSCCが22%(2/9)CYFRAが88%(8/9)、CEAが66%(6/9)でありCYFRAが非常に高い陽性率を示した。進行した症例でもCYFRAはほぼ全例で陽性であった。腺癌においてはCEA, CYFRA, SLXについて考察したところ、CEAのI期とIIIb期、SLXのI期とIV期において統計学的有意差を認めた。I期陽性率はCEA38%,SLX25%,CYFRA33%であり全体に早期陽性率は低かった。今回CYFRAが腺癌全体でも48%の陽性率があったが、IV期症例の陽性率が87%(14/16)と高く、このためによると考えられる。またCYFRAは各病期間で有意差を認めず、腺癌のマーカーとしてはCEA, SLXに劣ると考えられる。
特異性のスコア
特異性のスコア=検出頻度 x (12-順位)x 有用性
参考文献:バイオメディカル ファジィ システム学会 第11回年次大会講演論文集、p51-54.(1998)
July 30, 2002
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