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  1. Respiratory Index (その2)
  2. Respiratory Index (その3)
  3. 肺動脈閉塞試験
  4. 抗悪性腫瘍剤の血管外漏出時の対策
  5. 頻脈発作の治療
  6. 局所麻酔薬の基礎知識(その2)
  7. 酸素マスク
  8. PT・APTT
  9. カテコールアミン
  10. 不眠薬・睡眠薬の使い方

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研修医宿題

睡眠薬の使い方

古谷 晃伸

不眠は,睡眠の開始および維持の障害または翌日の疲労残存感として定義されている.ほとんどの不眠症患者には,これらの症状のいずれかがみられる.睡眠薬の有効性をよく理解する上で,医師は不眠には様々な病因が関係していることを認識しておかなければならない.その症状は基本的には入眠障害,中途覚醒,早朝覚醒の3つに分けられる.不眠はその持続期間によって一過性(数日間),短期(1−3週間),長期/持続性(3週間以上)の3つに分類されている.

A. 不眠の原因

 不眠には,原因が不明なもの(特発性不眠症)を除き,なんらかの原因が存在するものである.臨床的には原因別にまず診断を行い,持続期間も配慮しながら治療方針を決定すべきである.不眠の原因は,いずれも英語の頭文字がPで始まる「5つのP」に分類することができる.
(a)身体的(physical):身体疾患が睡眠に影響を与えていないかを検討する.睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害,むずむず脚症候群などもここに含まれる.
(b)生理学的(physiological):日常の活動に変化がなかったか検討する.時差ボケ,交代勤務,運動のパターンや実施時刻の変化,さらには不適切な生活環境や生活習慣(睡眠衛生)による不眠.
(c)心理学的(psychological):様々な出来事を検討する.心理社会的ストレスによる不眠である.一過性あるいは短期の経過をとることが多いが,慢性化して精神生理性不眠に発展することがある.
(d)精神医学的(psychiatric):精神医学的状態を検討する.
(e)薬理学的(pharmacological):様々な薬剤やアルコール,カフェイン,ニコチンなどによる.

 不眠に対してはまず原因による鑑別診断を行い,安易な薬物使用は厳に慎むべきである.薬物療法はあくまでも対症療法であるが,一方で最も有効・確実な治療法でもある.したがって,患者のQOLの改善に必要と判断されたら積極的に薬物療法を開始すべきである.

B. 睡眠薬の用法と用量

 現在用いられている睡眠薬はほとんどがベンゾジアゼピン系薬剤(ハルシオン,レンドルミン,ロヒプノール,サイレースなど)と,より最近になって開発されたベンゾジアゼピン受容体作動薬(アモバン,マイスリー)で,ベンゾジアゼピン受容体を介して作用する.実際の使用に際しては,その排泄半減期に注目するとよい.ただし,高齢者,呼吸器や薬物代謝機能に障害のある者への使用には,過鎮静にならないように慎重に使用する.あるいは,特に,高齢者には長時間作用型のものは避け,初回投与量も常用量の半分以下にする.

1. 入眠障害 超短時間作用型睡眠薬を中心に使用する.
【処方例】

(1)
マイスリー錠(5mg)
1回1−2錠
就寝前頓用

(2)
ハルシオン錠(0.25mg)
1回1−2錠
就寝前頓用

(3)
アモバン錠(7.5mgまたは10mg)
1回1錠
就寝前頓用

(4)
レンドルミン錠(0.25mg)
1回1−2錠
就寝前頓用

2. 入眠障害+中途覚醒 超短時間作用型と中間作用型の睡眠薬を併用,あるいは短時間作用型睡眠薬をやや高用量で使用する.
【処方例】

(1)
マイスリー錠(5mg)1回1錠

ロヒプノール錠(1mg)
orサイレース錠(1mg)1回1-2錠
就寝前頓用

(2)
デパス錠(1mg)
1回1−2錠
就寝前頓用

(3)
リスミー錠(1mg)
1回1−2錠
就寝前頓用

(4)
エバミール錠(1mg)
or ロラメット錠(1mg)
1回1−2錠
就寝前頓用

3. 中途覚醒

a.軽度の場合
【処方例】

(1)
ドラール錠(15mgまたは20mg)
1回1錠
就寝前頓用

b.中等度/高度の場合あるいは中途覚醒+早朝覚醒 中間作用型睡眠薬をやや高用量で使用.
【処方例】

(1)
ロヒプノール錠(2mg)
orサイレース錠(2mg)
1回1錠
就寝前頓用

(2)
ユーロジン錠(2mg)
1回1−2錠
就寝前頓用

(3)
ネルボン錠(5mg)
or ベンザリン錠(5mg) 
1回1−2錠
就寝前頓用

4. 早朝覚醒 3-bの処方例に準ずるが,原因がうつ病の場合には短時間/中間作用型睡眠薬に抗うつ薬を併用する.
【処方例】

(1)
デパス錠(1mg)
1回1−2錠


(2)
デジレル/レスリン錠(25mgまたは50mg)
1回25−50mg
就寝前頓用

デジレル/レスリン以外の抗うつ薬ではトリプタノール/ラントロン,プロチアデン,テトラミドなどを使用.

5. 常用量依存からの離脱 超短時間作用型あるいは短時間作用型を常用している場合は,それらを非常にゆっくりと減薬していく方法と,長時間作用型睡眠薬に一度置き換える方法とがある.
【処方例】

(1)
ダルメートカプセル(15mg)
or インスミンカプセル(10mgまたは15mg)
1回1−2カプセル
就寝前頓用

(2)
ソメリン錠(5mg)
1回1−2錠 
就寝前頓用

■患者説明のポイント

・医師の処方できる睡眠薬は一般的に以下の効果があることが示されている.(1)入眠を早める,(2)中途覚醒を減らす,(3)睡眠時間の延長,(4)睡眠の質を改善する.

◆まとめ

術後患者の不眠に対してはおそらく2の入眠障害+中途覚醒であると推測されるので

マイスリー(レンドルミン、ハルシオン、アモバン)+ ロヒプノール(サイレース、ユーロジン、ネルボン、ベンザリン)

が効果的だろう。

◆セレネース

日中のうとうとした仮眠状態のために睡眠自体は足りており、そのため、夜間眠れなくなる場合、家族や医療スタッフが頻繁に出入りし、テレビやラジオから絶え間なくさまざまな映像や音声が流れている日中のほうが眠りに誘われやすいようである。刺激が極端に乏しくなる午後9時以降の夜間帯に目が冴え渡るのである。自分自身の症状と家族の将来が唯一の関心事となる翌朝の6時まで、このような人は長い長い夜を過ごしている。ナースコールを頻繁に眠らして(日中はほとんど苦にしなかった)比較的軽度の症状を執拗に訴えたり、眠りたいと訴えたりする。このようなとき、大量の睡眠薬を用いて強引に入眠させることもできるが、予想外の短時間で覚醒し以後もうろう状態になることが多く、睡眠薬に頼るのは得策とはいえない。このような際には、抗精神病薬のセレネースが効果的なことがある。 


Aug 7, 2004

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