メインページのコンテンツへ移動
 
  1. 発熱性好中球減少症
  2. CRP
  3. γGTP

1-10|11-20|21-30

31-40|41-50|51-60

61-70|

研修医宿題

悪性腫瘍に伴う高Ca血症

Malignancy Associated Hypercalcemia(MAH)

山西正芳

悪性腫瘍ではしばしば高Ca血症が認められる。入院患者の高Ca血症の原因として圧倒的に多く、特に末期癌患者に頻発する傾向がある。経過が急激なことが多いので、悪性腫瘍患者では症状の有無にかかわらず、定期的に血清Ca値を測定することは重要である。

【病態生理】

(1)局所性骨融解性(LOH:Local Osteolytic Hypercalcemia)

 腫瘍細胞の産生物である破骨細胞刺激因子osteoclast activating factor(OAF)が局所の破骨細胞による骨吸収を促進する。腎原性cAMP排泄量は増加しない。乳癌、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫などの広範な骨転移による。

(2)体液性(HHM:Humoral Hypercalcemia of Malignancy)

 腫瘍細胞がPTHrP(PTH関連ペプチド)を産出、全身の骨吸収を促進。PTHrPはそのN末端はほとんどPTHと同一なので同じ受容体に結合し、おおむねPTHに類似する作用を発揮する。腎原性cAMP排泄量が増加しており、原発性副甲状腺機能亢進症とよく似た病態が生じる。

 肺・頭頚部・食道の扁平上皮癌、ATL、腎癌、膀胱癌、卵巣癌など。

(3)その他の骨吸収促進因子

 まれであるが、活性型ビタミンDを過剰産出する腫瘍やPTHを異所性に過剰産出する腫瘍も報告されている。

【症状】

 高Ca血症に起因する症状が出現するが、発症は原発性副甲状腺機能亢進症に比べるとはるかに急性である。急性または亜急性に、多尿、悪心、嘔吐、食欲不振、消化性潰瘍に伴う腹痛を訴え、集中力の低下、傾眠傾向を来し、無治療の場合にはしばしば意識障害に陥る。

【検査】

 PTHrPはPTH類似作用をもっているため、血清Ca値は上昇、血清P値は低下、さらにCaの尿中排泄量は増加する。

 最近では、intact PTHrPの測定が可能で高値となる。他方PTHは低下する。LOHでは血中PTHrPは正常範囲内である。

 PTHrPはPTHとやや異なる作用ももっているため、MAHと原発性副甲状腺機能亢進症はいくつかの点で病態が異なる。第一に、PTHrPの過剰は代謝性アルカローシスを引き起こし、低Cl血症となる。第二に、活性型ビタミンDが減少することである。

【治療】

(1)軽度の高Ca血症の場合(11~12mg/dl)

 一般に血清Ca濃度が11mg/dl程度のときは自覚症状もそれほどなく、慎重に経過を観察していくのみでよい。

(2)中等度の高Ca血症の場合(12~14mg/dl)

 (a)脱水の補正:生理食塩水の点滴静注(2~5l/日)

 高Ca血症では多尿によって脱水状態にあり、その分だけ腎血流量が減少している。すると腎臓の尿細管では水分と一緒にNa+をどんどんと再吸収し、それと一緒にCa2+が入ってくるのでますます高Ca血症になってしまう。よって、まず脱水状態を改善し、尿量を増やすことが最も重要である。

 (b)ループ利尿薬の投与

 脱水状態がある程度改善されたころを見計らって投与する。ループ利尿薬はNa+だけでなく、Ca2+の再吸収も抑制する。

 (c)高度の高Ca血症の場合(14mg/dl以上)

  (c-1)破骨細胞抑制薬の投与

 上記の治療方法により血清Ca値は1~3mg程度は低下するが、高度の高Ca血症がある場合は破骨細胞抑制薬を併用するとよい。ビスフォスフォネートは強力な骨吸収抑制作用があり、生理食塩水などに溶解して点滴静注すると、効果発現までに2~3日要するが確実に血清Ca値が低下する。同じ骨吸収抑制作用をもつカルシトニンは即効性があり副作用が少ないが、血清Ca値を下げる力は強くない。また連日投与しているとescape現象により効果が低下してくるという難点がある。

  (c-2)糖質コルチコイドの投与

 糖質コルチコイドはカルシトニンのescape現象を抑制する作用があるので、併用することでその有効性を高めることができる。さらには、腸管および尿細管からのCa吸収を抑制する作用、腫瘍細胞に働きかけPTHrPの分泌を抑制する作用もあり、MAHに用いると効果的である。

  (c-3)P(リン)の投与

 低P血症があると、骨吸収が促進されるので、低P血症が著しいときには経口的にPを補給するとよい。



Nov 2, 2006

新着情報教授挨拶 | スタッフ紹介学会情報業績集学生教材アクセス

診療科紹介研修医の先生へ研修医宿題京都肺癌をなおす会リンク