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  1. 発熱性好中球減少症
  2. CRP
  3. γGTP

1-10|11-20|21-30

31-40|41-50|51-60

61-70|

研修医宿題

低血糖発作

小島章光

低血糖の定義

厳密な定義はないが、ブドウ糖濃度が50or60mg/ml以下になること。

低血糖症状

 低血糖症状は2つに分類され、1)低血糖時に分泌されるカテコラミンなどによる自律神経系の症状(交感神経刺激症状)、もう一つは2)ブドウ糖欠乏による中枢神経機能低下に起因する症状(中枢神経系低血糖症状)である。

 また、血糖低下に伴い段階的に生体反応が起こる。血糖が80mg/dl付近まで低下すると、インスリン分泌が抑制される。70mg/dl付近まで低下すると、グルカゴン、エピネフリンが分泌される。60mg/dl以下まで低下すると、成長ホルモン、コルチゾールの分泌が起こる。50mg/dl以下まで低下すると、低血糖症状が現れる。40mg/dl以下まで低下すると、傾眠。30mg/dl以下まで低下すると痙攣、脳障害。10mg/dl以下まで低下すると死亡する。

(1)交感神経刺激症状

自覚症状:不安、神経質、心悸亢進、

他覚症状:顔面蒼白、冷や汗、低体温、振戦、頻脈、高血圧、瞳孔拡大

これらの症状には個人差があり、また血糖の値の落差によると考えられる場合もあり、血糖値が70mg/dlでも症状を訴えることもある。

(2)中枢神経系低血糖症状

血糖値が50mg/dl以下になると中枢神経系の機能低下による症状が出現する。

自覚症状:頭痛、かすみ目、一過性複視、異常知覚、空腹感、嘔気、倦怠感、眠気

他覚所見:意識障害、錯乱、奇異行動、発語困難、興奮、譫妄、嘔吐、傾眠、失語、失調、眼振、麻痺、痙攣、昏睡、浅呼吸、徐脈

高齢者では血糖が徐々に低下する場合は交感神経刺激症状が現れにくく、中枢神経症状や精神症状が主として現れる。

低血糖昏睡の治療

(1)ブドウ糖の経口摂取

 10gブドウ糖をなめる.

(2)ブドウ糖静注

 内服できない場合.5%ブドウ糖(50ml)+50%ブドウ糖(20ml)を急速点滴静注する。

 ブドウ糖25gを静注すると、血糖値18mg/dl未満の最低値から5分以内に平均225mg/dlまで上昇する。血糖が回復しても意識レベルや摂食状況が十分でないときは、引き続き5-10%ブドウ糖を点滴して血糖を100-200mg/dlに維持する。スルホニル尿素(SU)剤による低血糖昏睡の場合は、低血糖は持続しやすく、また血糖がいったん回復しても、低血糖を再発することがあるので注意する。

低血糖昏睡の経過・予後

 ブドウ糖投与後、冷汗、頻脈などの交感神経刺激症状はよく改善するが、中枢神経系低血糖症状はブドウ糖投与による回復が遅く経過を見なければならないことがある。糖尿病患者の場合は血管障害の合併を持つことが多く、低血糖発作に伴う眼底出血、心筋梗塞、脳梗塞などの併発に十分注意が必要である。

 また、統計上SU剤による低血糖は重大事故になりやすく、死亡することもある。飲酒を起因とする低血糖昏睡も死亡、脳障害を残すものなどあり患者教育が重要である。

 低血糖昏睡が5時間以上経過すると植物人間または死亡を来たし、90分以上経過した症例ではブドウ糖投与にあわせ、マンニトール点滴が有用であるとされている。

糖尿病型での違い

 1型糖尿病患者は、まずインスリン分泌抑制という最初の抑制ができないため血糖を維持するホルモンによる拮抗作用が減弱し、低血糖の自覚が乏しくなる。

 1型糖尿病と比べて、2型糖尿病では低血糖自体が少なく、緊急処置を必要とするような重篤な低血糖は少ない。しかしながら、厳密な血糖コントロールにより新たに2型糖尿病と診断された患者や、8年以上の糖尿病歴を持つ患者では低血糖のリスクが高い。無症候性の低血糖も2型糖尿病ではしばしば起こる。高齢者2型糖尿病では、なんとなくふらふらするなどの非定型的な症状で現れることがあり、他の疾患と誤認されることがある。

参考文献:日本臨床 新時代の糖尿病学4−病因・診断・治療研究の進歩−


May 1, 2007

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