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  1. 発熱性好中球減少症
  2. CRP
  3. γGTP

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研修医宿題

重症筋無力症に対して投与禁忌の薬剤

山崎 早苗

重症筋無力症は、神経筋接合部の後シナプス膜に存在するニコチン性アセチルコリンレセプター(AchR)に対する抗体が生じ、この抗体により神経筋伝達がブロックされる自己免疫疾患である。

 神経筋接合部に作用して伝達障害をきたす薬剤および呼吸抑制を起こす可能性がある薬剤は筋無力症状を増悪するおそれがある。

投与禁忌薬を以下にまとめた。

1)ベンゾジアゼピン系薬剤

 投与禁忌薬剤のうち、半分以上がベンゾジアゼピン系薬剤で占められている。ベンゾジアゼピン類の作用はGABAA受容体に対するGABAの結合を増加させることによって発現する。GABAが神経膜上のGABAA受容体と結合すると、Cl-チャネルが開口し、細胞内にCl-が流入して神経細胞膜が過分極を起こす。それにより神経細胞膜の興奮性が抑制され、筋の弛緩が起こる。  

2)抗生剤:アミノグリコシド系、ポリミキシンB、コリスチンは、神経筋遮断作用を有するため、使用すると症状が悪化するおそれがある。リンコマイシン系薬剤は、筋への直接作用により筋緊張が低下し、症状が悪化するおそれがある。アミノグリコシド系薬剤、リンコマイシン系薬剤については、慎重投与となっている。ニューキノロン系薬剤のノルフロキサシン、シプロフロキサシンは、機序は不明だが使用すると症状が悪化するおそれがある。

3)抗不整脈薬:プロカインアミドは細胞膜のNa+透過性を抑制するため、筋の興奮に必要な脱分極が起こらず筋緊張が低下する。

4)鎮痙剤:硫酸マグネシウム・ブドウ糖(マグネゾール)は血中のマグネシウムイオンが神経筋接合部におけるAchの放出を抑制し、終板電位の発生が阻止され、神経インパルスの伝達が遮断されることによる。  

5)筋弛緩剤:ツボクラリンなどは終板受容体をAchと競合しAchによるインパルスの伝達を遮断する。

6)感冒薬:ダンリッチは配合剤に含まれるヨウ素イソプロパミドの抗コリン作用により筋緊張が低下する。

7)利尿薬:K喪失作用を有するもの。Kが低下するとAch放出が抑制されるためである。

参考文献:

重症筋無力症の臨床 好永順二著. 新興医学出版社, 1990
薬物治療の実際:小澤ら      
薬理学 薬資教育センター:木皿ら


Nov 4, 2007

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