研修医宿題
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrom: SAS)
吉井三佳
【定義】
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrom:SAS)は「一晩の睡眠中に無呼吸(10秒以上の口,鼻での気流停止)が30回以上出現し,かつその無呼吸がREM睡眠とnon-REM睡眠時の両方に見られる病態」と定義されている。
【症状】
強い眠気
抑うつ
頻回の中途覚醒
集中力の低下
(家族などが気づく)睡眠時の呼吸の停止
(家族などが気づく)大きな鼾など
家族などの同居者がいない場合、この病気の発見は非常に遅れる。特に自覚症状が弱い場合は誰にも発見されない為、その状態が徐々に悪化して深刻な問題を起こしてしまう。よくある深刻な問題の例は、自動車の運転中に強い眠気が発生し運転操作を誤って人身事故になる事である。そしてこういう事故をきっかけにこの症状を知るというケースも多い。また、同居者がいてもこの病気に関する情報を持っていなければ、単に「いびきをかきやすい性質」としか認識されず、治療開始が遅れる事もありえる。
睡眠時無呼吸症候群に特有のいびきは、普通の「すーすー」「ぐーぐー」「くーくー」といった、音の長いものではなく、「・・・・・・(しばらく無音の後)ぐばあっ!」という衝撃の伴うような特徴を持っている。水中に長く潜っておき、急浮上して息を吸い込む時の音色に近い。どちらもその直前まで呼吸をしていない事が共通している。
【検査】
睡眠ポリソムノグラフィ検査
睡眠ポリグラフ(PSG)とも呼ばれる。入院して下記のようなデータ収集を行なう。アプノモニターのような携帯型の簡便な装置で在宅検査を行なう場合もある。
脳波、眼電図、頤筋筋電図による睡眠ステージ
口・鼻の気流、胸・腹部の動きによる呼吸パターン
パルスオキシメーターによる経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)
PSGの結果から,無呼吸・低呼吸指数(apnea hypopnea index;AHI)が5以上を睡眠呼吸障害(Sleep disordered breathing:SDB)と診断する。
無呼吸:口、鼻の気流が10秒以上停止する事。
低呼吸:10秒以上換気量が50%以上低下する事。
無呼吸・低呼吸指数:1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせたものを指す。
現在最も汎用されている診断基準はSDBに日中過眠を伴う,あるいはSASを疑わせる自覚症状がある場合をSASと診断している。
【分類】
睡眠時無呼吸症候群は、次の3種類がある。
(1)閉塞型睡眠時無呼吸症候群
上気道の閉塞によるもので呼吸運動はある。肥満者に多い。睡眠中の筋弛緩により舌根部や軟口蓋が下がり気道を閉塞することが原因。
(2)中枢型睡眠時無呼吸症候群
呼吸中枢の障害により呼吸運動が消失するもの。脳血管障害・重症心不全などの呼吸中枢障害で呼吸運動が消失することが原因。
(3)混合型睡眠時無呼吸症候群
閉塞型と中枢型の混合したもの。殆どは閉塞型で中枢型は少ない。
【治療】
(1)閉塞型睡眠時無呼吸症候群
減量療法:患者が肥満者の場合、減量により上気道周辺の脂肪の重さによる狭窄を改善する。
持続陽圧呼吸療法:CPAP(continuous positive airway pressure )よりチューブを経由して鼻につけたマスクに加圧された空気を送り、その空気が舌根の周りの空間を広げ吸気時の気道狭窄を防ぐ。
スリープスプリント(マウスピース)療法:スリープスプリント(マウスピース)を用いて下顎を前進させた状態を固定し、気道の狭窄を防ぐ。
外科的治療(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術):口蓋垂、口蓋扁桃、軟口蓋の一部を切除し、気道を広げる.
(2)中枢型眠時無呼吸症候群
原因となる脳疾患などの治療
在宅酸素療法
BiPAP(バイパップ)療法が有効であるとの報告あり
【合併症】
肥満、高血圧、高脂血症、不整脈、多血症、虚血性心疾患、脳血管障害、糖尿病など。 動脈硬化性疾患の危険因子である。
Nov 20, 2007
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