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  1. 発熱性好中球減少症
  2. CRP
  3. γGTP

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研修医宿題

抗MRSA薬(バンコマイシン・リネゾリド)の使用方法

古谷竜男

■バンコマイシン(商品名:塩酸バンコマイシン)

分類:グリコペプチド系

抗菌スペクトル:グラム陽性球菌 (グラム陰性菌、嫌気性菌はカバーできない )
→ 特に MRSA(Methicillin-resistant Staphylococcus Aureus:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌), PRSP(Penicillin-resistant Streptococcus Pneumoniae:ペニシリン耐性肺炎球菌 )

薬理機序:細胞壁前駆体の D-Alanyl-D-Alanineに対して作用し、細胞壁の合成を阻害(静菌的)

使用上の注意:

@投与時間は 1時間以上かける!
→ 投与速度が速いとRed person症候群をきたす。

Red person症候群:バンコマイシン投与時に起きる上半身の蕁麻疹様の発疹、痒み、発熱。バンコマイシンを投与した際のヒスタミン放出が原因であるがアレルギーではない。

Aトラフ値を測定する
腎排泄であるが、CCrを測定してもバンコマイシンの排泄には個人差がある。したがって血中濃度を測るのが重要。
測定する時期は、3〜4dose目を投与した後の次の投与の30分〜1時間前(体内で薬物動態が安定し、より正確な値が出るようになるのが3〜4dose目なので)
目標としては耐性化を防ぐために10μg/mL以上は必要であり、治療効果を得るためには15μg/mL以上が必要。 15〜20μg/mLを目標とするのが一般的。
また、厳格な投与計画が必要な場合はTDMソフトを用いる必要があり、薬剤師に相談する。

Bトラフ値 30μg/mL 以上が持続すると腎毒性、耳毒性が出現することがある
→ バンコマイシン単独では稀であるが、アミノグリコシドとの併用で出現頻度が増加するので併用しない。腎毒性は多くは可逆的であるが、耳毒性は不可逆的であることが多い。

(投与例)
成人: 1g ×2回 /day(12時間毎) または 0.5g×4 回/day(6時間毎)
→ ただし、初期投与は1回15mg/kg,1日2回12時間毎を基本として、腎機能に基づいて投与間隔を延長させる方法をとる。

高齢者: 1g (力価)× 1回/day(24 時間毎 ) または 0.5g(力価)×2 回/day(12時間毎)


■リネゾリド(商品名:ザイボックス)

分類:オキサゾリジノン系

抗菌スペクトル:グラム陽性球菌 (グラム陰性菌には無効)
保険適用はMRSAとVRE(Vancomycin-resistant Enterococcus:バンコマイシン耐性腸球菌) にしかない
(注)MRSAの第一選択はあくまでバンコマイシンであり、リネゾリドが適応となるのはバンコマイシンのMICが2μg/mL以上のとき。

薬理機序:細菌の蛋白合成の際に翻訳開始反応におけるリボゾーム50Sサブユニットに結合し、70S開始複合体の形成を阻害(静菌的)

組織移行性:骨、脂肪分、筋肉、肺などへの移行性が良い。→骨:60%, 筋肉:94%, 肺:400%(血中濃度の4倍)

使用上の注意

@副作用:骨髄抑制 (特に血小板減少)
→  2週間以上連続して使用すると出現しやすい。また、腎機能障害患者では出現しやすくなる

A小児に使用する際には投与間隔を短くする
→ 小児ではリネゾリドの排泄が成人の 3倍速い( 特に 1歳未満) 。

(投与例)
成人: 経口 → 600mg×2 回/dayを 12時間ごとに経口投与
    静注 → 600mg×2回/day 30分〜2時間かけて点滴
小児: 経口 → 10mg/kgを8 時間ごとに経口投与
    静注 → 10mg/kgを8 時間ごとに30分〜2時間かけて点滴

(参考文献)
「絶対わかる抗菌薬はじめの一歩」羊土社
「抗菌薬について内心疑問に思っていること」羊土社
「抗菌薬の考え方、使い方」中外医学社
「治療薬UP-TO-DATE」メディカルレビュー社

Mar 3, 2013

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