本との出会いを記しただけ。感想文になっていない読書ノート

----- こんな本に出会いました -----

 書名など
 太田浩一著:マクスウェル理論の基礎,(相対論と電磁気学)
         東京大学出版会,2002.7初版,332ページ,3,990円




 凝り性の物理学者の力作。著者は信州人らしい。


 なんとも凝った本である。

 本書では,クーロンの法則,電荷保存則,相対性理論を基礎的事実として採用し,あとは,数学的取り扱いによって,他の様々な現象を導き出し,最後にマクスウェルの理論に到達している。

 さらに,古今東西の研究者の論文499件を参考文献に取り上げているが,それらはすべて原典である。いうなれば,すべて一次資料を採用している。
 私がかつて探したけれど,探し出せなかったアンペールの論文も入っている。
 こういう本は,凝っているくらいでは済まず,長年にわたる熱心な文献調査と,その文献に行き着くことができる恵まれた環境が必要である。

 本書は,丸善へ寄った時,手にしたものである。まえがきを読んだだけで,勝手に感動してしまった。
 なにしろ,ゲーテの「ファウスト」と,シャーロック・ホームズの「四つの署名」を引用して,本書の成り立ちを説明しているのだから。

 著者がどう探しても原典が見つからない場合は,それに頼らずに,独自に厳密に話を進めるから,読む方(この場合は私)も大変である。
 著者略歴を見たら,岡谷市生まれ,東大教授,とあった。意味もなく納得。

 本書を読み終えるにはまだ相当に時間が掛かりそうである。生きているうちに読み通せるものかさえ不明。

 電磁気学の発展,という観点で読めば貴重な本であろう。電磁気学の参考書としては癖がありすぎる。 
 電磁気学の勉強をしたい場合は,同著者の「電気学」(丸善)がある。これも凝っていて,レベルが高い。