◇ 型、かたち



面(チラ)



三線のかたちはある程度決まっていますが、
幾つかの種類があります。
昔の名工の名前などで呼ばれ、それらを型(かた)といわれます。
一番有名なのは、真壁型です。
まかべがた、と読みますが、沖縄ではマカビーと呼ばれます。
僕が作るのは、真壁型です。
といっても、ひと言で典型的な真壁ですとは言えないです。
とはいえ勝手なデザインをしている訳でもないのですが。

また、真壁型といっても、さらに細分化された伝統があるようで、
それぞれに特徴があり、印象が違うのですが、
それはまあ、作り手それぞれが、
お手本を見て、作って、見比べて、を繰り返した歴史の中で
枝分かれしてきたものだと思います。

で、僕はといえば、例えばどこかで頂いた図面に基づいて、
盛島とか西平という名工の作品のコピーを作っていますという訳ではなく、
どなたかが作ったお気に入りの棹を真似している訳でもなく、
現代の三味線屋さんに修行に行った訳でもありません。
従いまして、自由形です。オリンピックの水泳みたいなもんです。
いやちょっと違うか。
クロールと決められた種目の中でも、それぞれ違いがあるという事ですね。
ただ、タイムレースではないので、最終的には好みの問題になります。
立体の彫刻物ですから、毎回同じものは出来ません。
似たようなものを作る事はできますが、
いつも前作と比べて、こっちの方がいいなぁとか、
この中間くらいがいいんじゃないかとか、
そんな事を考えていると、
やっぱり次を作りたくなるんですね。


◇ やっぱり天です。

まずは天の形状がどんな印象か、
職人さんそれぞれに味わいがあり、
甲乙付け難く、
これが一番良い形なんだと決められません。僕には。
で、色んな形のものを作っています。
大きい天小さい天、縦長か幅広か、
曲面で反りが大きいもの、膨らんでいるもの、
平べったく折れているもの、
棹の型って、一体どれくらい共通性のある形なんでしょうかねぇ。


◇ 真壁と与那

よく対照的に見られますよね。
どちらも好きですが、自分で作りたいと思う形が真壁なので、
今のところ与那はひらめきませんが、
そのうち作ってみましょうね。

さて、真壁と与那で天や糸蔵周辺の特徴が
大きく違うのはひと目でわかりますが、
これもまあ、好みという事で選ぶだけで良いと思います。
何か格式ばった使い分けをする訳でも無いでしょうし。

楽器としては、演奏する側としては、何か違いがあるのでしょうか。
音は、ちょっと難しい話になりますので違うページにしまして、
左手が触る野丸の形状に違いがありますね。
与那はトゥーイ側が若干すぼまっているのです。
そうです。
みなさんご存じです。
与那とはそういうものなのです。
与那じゃなくちゃあの手触りは手に入りません。
さて、果たして本当にそうなのでしょうか。
もちろん僕もそういう知識を持っていたのですが、
なんだか最近、違うような気がしませんか?


◇ 最近?

伝統的に、真壁と与那という異なる種類の型なのですが、
作り手によってそれぞれにも差があり、
ある程度は自由が認められているようです。
それは昔から、こうじゃなくちゃダメだとは
決められていないのかもしれません。

さて、初めて三線を購入する時、
例えば初心者セットなどで販売される三線は
普通に真壁型ですよね。
それが、2丁目を購入しようと思った時に、
違う型がある事を知っている人は、次はやっぱり与那かなぁ、
という事でその2種類を持ち、
実際に弾いてみるとそれぞれに良い所があり、
やっぱり甲乙付け難い。
それは作り手も同じ事を感じているのではないでしょうか。


◇ それなら

ならば沖縄、チャンプルーです。
何となく、真壁は与那に、与那は真壁に、
近付いてきていると思いませんか?
真壁の良い所は、こじんまりと収まりが良く、
与那の良い所は、左手の触り具合が心地良い。

野丸のトゥーイ側がすぼまっていて、
糸蔵が若干面長であったりする真壁とか、
重過ぎず、全体的に少々細め小さめの与那であったりとか。

そこで、逆に目一杯真壁側に振った真壁を作ろう!
と思って横長で平べったい印象のものを作ったのですが、
なんといいましょうか、
流行に乗っていないというか、
時代はこういうものを求めていないというのが
ひしひしと伝わってきまして、
こりゃもっとナウいもの(?)を作らんといかん、

という訳で次ははち切れんばかりに膨らみ感のある、
小さくまとまりながらにして
もちもちした真壁を作りたいと思っています。
野丸も、真壁が膨らんじゃって与那っぽくなっちゃったというような、
細いのにすぼまった系にしてみますね。


◇ 実際には

まあまあ普通の真壁になっているものをお譲りしていますが、
なぜ色んな形を作ってみているのかといいますと、
やっぱりそれで色んな事が解ってくるからですね。

自分はこれがいい、これが一番だと思って
いつも同じものを作っているのは、
自己模範と申すのでしょうか、
進歩が少ないのだと思います。

また、荒割からおおよその仕上げの定規は作ってあって、
それに沿って線を引いて削っていくのですが、
例によってこれも先の丸まった色鉛筆です。
シャープペンのような細いけがき線で
完璧に正確ないつもの形を描く事はしないんです。
ある程度まで形になったら、
その先はその材を見て、
その時の思いで削っていきます。

で、それらはゴミになる訳ではなくて、
自分用の三線でもあり、
また、形状のサンプルとなっている訳です。

どういうものが欲しいのかというのを
言葉で伝えるのはなかなか難しいですよね。
それで、過去に作った色んな形のものを見て、
天はこれ、虹はこれ、野はこれ、チマグはこれと
現物サンプルで指定して頂ければ
その組み合わせで作りましょう、
というお誂え方法でございます。

で、基本的な真壁が今、ウチにありません。
みんなどっか行っちゃいました。
それで、たまに修理で里帰りしてくるんです。
嬉しいですねぇ。




よじ登る。。

とりあえず戻ってみる。