◇ 音づくり♪1


ずいぶんと長いことお勉強と試行錯誤をしてきまして、
どーやったら鳴る三線になるのか。
とりあえず目標達成、ひと段落です。



音づくり

塗り終えて完成している棹を
削り直しています。。




◇ 振動が音になります。

その力のもとは、弦を弾いた手の力ですね。
で、弦が伸び縮みしながら震えて、
弦を支えているウマが皮にその力を伝えると、
皮は空気に触れている面が大きいので、
たくさんの空気を震わせて、
弦の振動は拡張された音になるのです。


でもそれだけだと、
皮の張り具合が勝負の太鼓みたいな三線になってしまいますよね。

弦を支えているもう片方に歌口があります。
同様に、弦が伸び縮みしながら震えて、
弦を支えている歌口に。。。というよりは、
カラクイが引っ張られて棹が反り、
その反動で逆方向に跳ね返り、
また弦が引っ張られ。。。
この棹の動きが余韻を長くしたり、三線特有の音色を作り出しているのです。

なので、皮張りももちろん重要ですが、
やはり棹をどれくらい動かせるか。振動させられるか。
これですよこれ。


◇ 棹の形の意図

棹を振動させる為にはこうするしかないっていう明確な目的があって、
それで棹を削っていくと
みんなが良く知っているあの三線の形になるのであって、
でも実はそれが解ると初めて見えてくる形ってのがありまして。

音づくりの為の形が理解出来ていないと、盲目のまま、
このサイトで使っている三線の音は予想も出来ないでしょう。
実はこのサイトにある三線のひとつは、全然鳴りません。
これは随分前に作ったものですが、
これが鳴らなかったからこそ僕の音づくりに火が付いたワケでして、
それ以前は塗りとかトゥーイとかね、
キレイに仕上げる修行ばかりが先行していたという事ですね。


◇ 「鳴る」三線って

ちょっと難しい話ですが、
倍音というのがありまして、
例えば男弦を弾くと、低いドの音が出て、
それと同時に高いドの音も出ています。
それと同時にもっと高いソの音も出ています。
それと同時に、もっともっと高い音がたくさん出ているのですが、
聴こえますかー?
そして、他の2本の弦にも振動が伝わって、
それまたそれぞれの倍音も出てくるわけでして、
これがたくさん、より多く強く出ている三線が、
「鳴る」と言われる三線だと思います。
一発一音の音量が大きいだけじゃないんですよ。

で、倍音は、最初の基本の音よりも高い音しか出ませんし、
ある程度以上高い音になると聴こえなくなってしまうので、
これをたくさん聴かせるには、
基本の音がなるべく低い方が有利です。
であれば、例えば三線を叩いた時に低い音がする方が鳴るという事になります。
なるほどーって言ってお店で三線ひっぱたいて選んじゃダメですよ。

この、低い音が欲しいので、これを、
ちんだみで弦の音程を下げてもダメです。
張りが弱くなって音量が下がってしまいます。
なので、弦を太くするという手段もありますが、
大きく変化させればそれは三線らしい音ではなくなってしまうでしょう。

皮は張りが強い方が鳴りますが、
強いほど高い音になりますね。

では、鳴る三線の低い音はどこからくるのでしょうか?
それが、棹です。


◇ 重低音が必要

棹単体を叩いた時の音を聴いてみると、
棹の材種や個体差によって、
高い音、低い音、さまざまですが、
この音がそのまま楽器として弾いた時に出ているかというと、
疑問です。
僕にはわかりません。
違いがあるにはありますが、
その素材を叩いた音というよりは、
素材の硬さや重さが振動に影響した結果が出ているのでしょう。

素材がいいから鳴るだけなら、誰が作ってもいい事になりますが、
そんな事はありませんね。
棹のつくりで、欲しい重低音が出せるのです!

演奏で使うドレミの音階よりもはるかに低い音です。
聴こえる音というよりは、雷の地響きのような振動です。

3本の弦のうち、1本だけはその重低音がする、
という三線に出会う事がたまにありますが、
3本とも見事に鳴る三線ってのは、、なかなか無いですよね。

そんな夢の三線作りに挑戦するべく、
三線という枠にこだわらずにあちこちの民族楽器や西洋楽器を
いろいろ触ってみたり文献を調べたりして、
それら可能性のある事をすべて実際に三線で試してみて、
ようやく3本とも重低音が出るようになりまして。

なんとなく、ほんのかすかに、ではなく、
こうするしかないという作りで、
狙い通りにはっきりと振動が増えるというものを積み重ねて、
3本ともに、という答えが出まして。

これって、耳のいい人じゃないと解らないというレベルではないです。
左手に、スマホのバイブ程度の振動が来るか来ないかの違いですよ。

これが作れたら、三線職人って呼んでもいいんじゃないかなーって、
自分で言っちゃいました(笑)


◇ 糸蔵の内面が塗られていないのは?

振動の調整は本当に絶妙で繊細なもので、
糸蔵あたりに塗料がボテボテしているようじゃあ
音づくりも調整もされていないという証拠ですね。
糸蔵の内面が、、
塗られていないのは、
最後の最後にそこを削って音の調整をしていたからであり、
金箔を貼ったものは、
そこに重量を足したかったのか、
完成の意味での封印だったのか、
いずれにしても今ではほとんどの場合、
それらの真似や名残でしかないようですね。


◇ ちんだみは

三線屋さんで、これは鳴るとかいい響きだねとか、
ちんだみも適当での音づくり談義じゃあ話になりません。
やっぱり3本が共鳴してはじめて鳴る楽器ですのでね。
お客さんはともかくとして、
店主がチューナー使って合わせてるのは、
音が解らない証拠ですね。
絶対音感のドレミの話じゃなくて、
3本の弦の相対的な関係を正確にちんだみ出来るかという事です。
それが出来なくちゃその三線の本当の能力が発揮出来ないって事ですからね。
製作者はもちろん、ちんだみが正確に出来なければ、
その三線の出来映えを正確に評価する事も出来ないし、
修正も改善も的確に行えないのです。

2丁弾き比べての音づくり談義、
材や型が違う、
作りや作者が違う、
そんな事以前に今そこでチューナーで頑張って
なるべく合わせたというそのちんだみが、
どれほど大きな差を生んでいるのかが
音で解らないってのは、
こりゃー話になりませんて。
2丁の音程の差じゃないですよ?
それぞれ3本の弦の相対的な関係をですよ。


◇ 3本が共鳴する時

ルービックキューブみたいな感じでしょうか。
三線は3本、キューブは6面ですが、、
色が1面だけ揃ったーってのは、なんとかできそうですよね。
2面、3面はいろんなドラマがあるのでしょう。
さて、あと一歩、なんとか5面まで揃った、、という状況って、
無いんですよね。5面揃えば全面揃っているはずです。

三線もね、女弦を弾いた時は中弦も男弦も共鳴するんだけど、
中弦弾いてもどっこも共鳴しないとか、、
そんなのがほとんどですが、
これが、どっちかひとつ解決すると、
あれ?こっちも、あっちも、
というふうに共鳴しあってくれるんです。
不思議ですね〜三線って。
最小公倍数とか、最大公約数とか、
なんだかそんな部分での関係が3本ともうまくいく、
そんな棹に仕上がったという事なのでしょうねきっと。


ちなみに僕はルービックキューブを6面揃えられた事は、、
まだありません^^;


よじ登る。。

とりあえず戻ってみる。