◇ 音づくり♪3


弦楽器の最高峰、バイオリンなんかとも比較しまして。
うんちくを少々。。



◇ 開鐘って。

なぜ開鐘はそれぞれ1丁ずつしかないんでしょうか?
それがいちばん鳴るヤツだったから?
2番目とかそれ以外のヤツはみんな処分しちゃったの?

これだけ色んなアイデアを積み上げて設計されている楽器ですから、
同じようなものは何丁でも再現して製作出来たでしょう。
もちろんしていたでしょう。
その中でも、何故かこれは特に鳴るぞっていう、
とびきりのヤツが代表作に選ばれたのでしょうかね。
で、それはやっぱり、
そこまでのヤツはなかなか再現出来なかったという事なのでしょう。
という事は、彼らにも理解出来なかった、
まだ謎に包まれたままの何か秘訣があるのでしょうね。


◇ バイオリンって。

さて、バイオリンでは有名なヤツがありますね。
現存する数百丁はほぼ全てすんばらしく鳴るんだそうで。
その秘訣を探るのに、政府機関や科学者らがお金を掛けて調査しまして、
20世紀末に出した結論は、
特殊なニスが良かったんだ。
ですって。
三線も、アイツの漆はズルイんだぜっていう事にしましょうか。
その後の調査で、そのニスは、
当時一般的に使われていたごく普通のニスと同じ成分でしたとさ。
で、さらなる調査をしまして、
21世紀になってから出した結論は、
300年くらい前の若干冷え込んだ氷河期に生長した木材が、
寒暖の差が少なく均質でとても良かったんだ。
ですって。
「マウンダー極小期」と呼ばれる氷河期ね、
1645〜1715年ごろだそうですが、
年輪百本も出来ないウチの材がそんなによかったんでしょうか。
そもそも年輪がハッキリ出来ているのは寒暖の差の証拠ですけども。
氷河期みたいな環境で育ってる樹木なんか世界中にいくらでもありますけどね。
それら著名なバイオリンを写真で見る限りでは、
年輪の間隔も色味具合も寒暖の差も、
ごく一般的な材にしか見えませんよ?
しかも、かなり目の粗い材が使われているものもあります。
三線も、アイツの使っている材は氷河期の黒檀で。。。
いやいや黒檀系は温かい地域でじっくり均質、ですけどね。

それで、1丁ずつしかない開鐘とは違って、
数百丁もあるバイオリンがみーんな良く鳴る材なのでしょうか?
それならその材を使って、某メーカーに復元モデルを製作してもらったら、
ホンモノさながらの音が出るのでしょうか?
今なら機械加工で精密に3Dコピーを製作出来ますけど、
ええ、結果はもちろん、たぶん、おそらく、ね。
偶然にも、というのは限りなく有り得ないという事は、
現代の製作者たちが保証してくれています。

では、開鐘はみんなの大好きな八重山黒木で作られていたのでしょうか?
どうやら違うようですね。
八重山黒木なら多少は作りが悪くても鳴るのでしょうか?
そんな事もありませんね。

ではでは、
鳴るモノの形や設計を複製してもダメ、
材やニスを同じ種類のものにしてもダメ、
いったい何が必要なのでしょうか?
それは、
最終的に微調整をして仕上げているという事なのです。

もちろん基本設計などは重要ですので、
ある程度は鳴るであろう作りにするワケですが、
数百丁も鳴るものばかりというのは、
やはり1丁ずつ音づくりをしていったという事なのです。
で、三線の場合はというと、
鳴る形、鳴る設計の基本が出来上がった、
という段階で、開鐘という型として認定されたような感じでしょうかね。
だから、1丁ずつ、型の見本として保存されたものなのかもしれませんね。
であれば、それを基本設計として製作したら、
やはり1丁ずつ微調整をして音づくりをしていかなければなりません。


◇ 図面を描く

さて、バイオリンの図面を何度か見た事がありますが、
メインはボディ、箱ですね。
箱を水平に描いて、ネックは傾ける設計として描かれます。
三線はどうでしょうか?
そもそも図面を書いている人、たくさんいらっしゃるかと思いますが、
あまり人には見せない自分なりの設計図というか、
木を削る際の寸法確認図として使っていたというか、
たくさん製作する方なら寸法が頭に入っているでしょうから、
もう図面も必要ないかもしれませんが、
実際に製作する時は、単純にトゥーイ面を机に置いて、
芯の根元がいくつ、先端がいくつ、
という感じでしょうかね。
その方が測定しやすいですし。

三線の側面図を描く時に、
バイオリンのようにボディを基準として、
つまり太鼓を水平にして棹は傾いているように描く人って
なかなかいませんよねぇ。
棹の設計図として、棹単体で側面図を描く場合、
前のページに書いた通り、
芯は重心軸であり、基準線です。
であれば、芯を水平に描いて、
野がどれくらい傾いて、天はどんな位置関係にあるべきなのか。
こういうのが設計図と呼べるものではないでしょうか?

設計者が頭の中に思い描いている水平線は、芯を貫いています。
図面を描くとすれば、そういう図を描かなければ、
設計者の意図を理解していない事になりますね。

開鐘の図面ってのがネットでも雑誌でも見る事がありますが、
調査測定して図面にまとめた方々が、
三線の設計を理解していなかったのは残念な事です。

デザインしか伝承してこなかった。
これは三線もバイオリンも同じような状況のようです。
設計の最大のポイントである楽器としての音づくりは、
どうやら後世の作り手が大いに悩んで楽しめるように封印されていたようで、
僕はもうだいぶ楽しんじゃいましたので、
これからはどんどん公開しちゃおうと思います。
あ、バイオリンは僕の専門外ですよ。


というわけで、
バイオリンもしっかり分当てしているんですよ。
イタリアのクレモナ地方でブーアティーっていったら
新しいハーブティーか何かかい?って言われそうですけどね^^


よじ登る。。

とりあえず戻ってみる。