◇ 膠で響板を接着
いよいよ接着です。
接着剤は膠(にかわ)を使います。
膠って、豚などの皮とかを煮詰めて取った、天然モノの接着剤です。
というとちょっとだけ、ゲ。と言いたくなる気がしますが、キレイなもんです。
気になる匂いは、します(笑おう)。
みなさん嗅いだ事のあるおなじみの、絵の具の匂いなんですねーこれが。
絵の具に似ているのではなくて、絵の具の原料が膠なんです。ね。
パレットに付けたまま絵の具が乾いてしまうとカチカチですが、
水をつけて筆でゴシゴシやってるとちょっとずつ溶けてきます。
膠ってそういうものです。
水で溶いて、塗って、ピタッとくっつけて乾かせばくっつきます。
が。。。これが意外と難しいんですねぇ。
◇ 温度と水分
絵の具のように常温で溶けて、乾けば固まるのですが、
あれは膠の濃度が非常に薄くて、着色成分が多いので、
接着力はかなり低いのです。
だから筆を洗い忘れて固まってしまっても、すぐに水で溶かせるのです。
しかしトンコリの接着が絵の具程度だったとしたら、
弾いていたら手にくっついてきて、手の湿気で響板が剥がれたとか、ね。
それでは困る訳です。
なので、高純度なヤツを使います。
というか膠100%と、水分です。
◇ 膠の使い方
使う人はあまりいらっしゃらないと思いますので、適当にさらっと書いておきます。
売っている膠は液体もありますが腐ったりしますので、棒状とか粒々とかの乾燥固形を買います。
これをひと晩水に浸すと寒天のようなものになって膨れあがります。
水を入れ過ぎれば濃度が薄くなってしまうので、最低限にしておきます。
で、これを温めると蜂蜜のような感じの液体になるのです。
温度はタンパク質が変質しないところまで、卵や肉が白くならない温度、60度程度にしときます。
高温になって変質してしまうと、接着力が落ちてしまうようです。
で、難しいのは膠の固まり方なんです。
温度が下がれば寒天状になります。つまり、木に塗ってもうまくくっつきません。
そうとう水で薄めておけば固まりにくいですが、それでは接着力が弱くなってしまいます。
また、水分が抜けてくると濃度が増しますのでネバネバになって塗りにくくなります。
つまり、木に塗ってもあまり染み込まなくなってうまくくっつきません。
目的の木は常温ですから、塗った膠はすぐに冷えて固まり始めます。
かといって温度はそれ以上高く出来ません。
では木を温めておけば良いのですね。
それで僕は夏場の本当に真夏の暑い日に、
40度くらいになった時に膠作業をする事にしているのです。
トンコリを火炙りにってのはちょっと嫌ですし。
ですので、その時の状況、接着面積に合わせて、
必要最低限の水分にし、
温度は最高の状態から、
呼吸を止めて一気に塗って貼り付けるのです!
(呼吸はしてても別に大丈夫です。)
なので、写真を撮っている暇がなく、画像はありません。
また、液体で素早い作業である為、あちこちに垂れますので、
胴体側はビニールやテープで覆って作業しています。
接着後の状態。

◇ なぜ今どき膠なのか?
そりゃー昔は接着といえば膠ですし、
天然モノですからアイヌも利用していたと思われますし、
化学合成物は使いたくありませんので、
やっぱり膠なのです。
また、例えば完成品の響板が割れてしまったとかいう時でも、
ほんの僅かに横から見える接着面を水で湿らせ続けると、
そこから膠が水を吸い込んで中まで溶けてくれるので、
響板をあとで剥がす事が出来るんですね。
あとの修理の利便性もあって、バイオリンなんかも昔からずっと、
今でも膠を使っているのだそうです。
そしてもうひとつ。
木との相性が良いのです。
木材は湿度の影響で伸び縮みを繰り返しますが、
化学合成の接着剤でしっかり硬くなるものですと、
木だけが伸び縮みし、木もしくは接着剤が割れてしまうんですね。
それならばとゴムっぽい接着剤を使った場合は、
楽器としての音、木の振動をそこで吸収して止めてしまう事になってしまうのです。
乾燥硬化した膠はカッチカチで本当に硬くなるので、振動の伝わり方が良いのですね。
それでいて、木と一緒に呼吸して、同じくらい伸び縮みしてくれるという、
すんばらしい素材なんです。
だから超高価なバイオリンでも、やっぱり膠なんです。
という訳でトンコリだって、膠なんです。
乾燥硬化してテープを剥がし、整えたところ。

よじ登る。。
とりあえず戻ってみる。