「トンコリの調弦」
◇ はじめに
アイヌにはたくさんの曲があってそれぞれ色んな調弦があります。
ドレミソラとかミソラドレとか、ドミソラドとか。。どれも美しい音色でうっとりします。
今現代ではそのほとんどが平均律で合わせられているようですが、
そもそもアイヌの音楽が平均律なのか、どこかから輸入された音なのか、とかちょっと考えてみます。
いや、僕が考えるのはそのルートではなくて、
そもそもアイヌ独自に平均律が考案され完成していたのでしょうか。
楽器と共にいきなり平均律が出来上がるとも思えませんし、
他にそのような楽器が見あたらない以上、一体何を目指して5弦を張ったのでしょうか。
また、アイヌの曲というか歌というか、割と単純で短めのメロディーを繰り返すものがほとんどですが、
それらが平均律というにはちょっと音数が少ないなぁとは思いませんか?
という疑問が自然と沸き上がってきましたので、実は平均律になってくる以前の音階というのがあったのではないか、
というのを考えてみました。
ちなみにこのページの内容は全て僕の勝手な想像ですので何の保証もありません。
アイヌの音楽は決まった音階の無い、曖昧な音程であるという話しもありますが、
でもどこかでみんなが共有している心地良い音階というのがあるんでないかい?と思っているのです。
◇ 倍音
まず、例えば大草原に突然、調律されたピアノが現れる事はありません。
アイヌは自分の声も含め、自然界にある音から音を楽しむようになったと考えます。
そのような説明はみなさんご想像の通りとして、
アイヌにはムックリという楽器があります。口の前で竹ヒゴ部分を糸でブーンと振動させて、
口の中に振動する音を変化させて様々な音を出します。
その音の中で、よく響く高い音があります。
竹のブーンという低い音に対して、規則的に配列された高い音が出るのです。
これらを倍音といいます。
これは口や竹ヒゴや楽器だけではなく、自然界でも発生している音です。
竹ヒゴを低いドの音だとして、近い音名で表すと、1オクターブ上のド、その上のソ、さらに上の
ド、ミ、ソ、シb、ド、レ、ミ、…とずっと続きます。
◇ 音階
ムックリでは、竹の振動と同じ音や1オクターブ上の音は、口で響かせてもほとんど同じ音に聴こえてしまい、解りづらいです。
それよりちょっと高い音が良く響いて聴こえ、高過ぎる音は小さくて聴きとれなくなります。
それら良く響く範囲内の音を口の形を変えて発生させてメロディーを奏でるのですね。
という事は、これって音階と言えるじゃないですかー。
◇ トンコリが出来るまで
さて、弓矢で狩猟をしていたアイヌは紐や弦を知っていましたから、
ムックリで出したい音を弦で出してみようという訳です。
最初は1本で張りの強さを変えてひとつずつ音を出したのでしょう。
ムックリで出している音は5つか6つ。それ、まとめて張ってみましょうよ。音はいつもムックリで聴いてるあの感じで。
弦の裏には口や身体と同じように、木材で作った空洞の胴をおきましょう。
これでトンコリの出来上がりです。
出てきた音、目的の音は、どんな感じだったのでしょうか。
◇ 目的の音
最近聴く事の出来るトンコリの曲を聴いてみます。
限られた昔の録音物から音を再現している伝承曲もあり、最近作られた曲もあります。
5つしかない弦で出来るだけたくさんの音色を出したいという思いもあるのでしょう、ドレミソラなどに調弦する場合が多いようです。
しかし、ドミソラドのように一番低い音と高い音をオクターブにすると、和音を弾いた時にその2本がとてもキレイに響きますね。
その中で、ムックリに近い音はどれだ!?
トンコリの調弦に出来る倍音列はどこだ!?
と思って倍音列をずっと眺めていたら、
オクターブでくくれる5つの音が、しかも一番よく聴こえる音の高さで揃っているではないですかー。
第四倍音から第八倍音まで、平均律からのズレを百分率で表しますと、
ド ±0
ミ -13.686
ソ +1.955
シb -31.174
ド ±0
一番上と下をドのオクターブとすると、ミがちょっと低くてブルーノートみたい。ソは2%くらいのズレ。
4番目は、シのフラットからさらに3割低い音、ラよりちょっと高い音、絶妙な音ですねぇ。
特徴としては、この調弦ですとどの和音の組み合わせでも不協和音が発生しないんですね。
また、倍音は声にも含まれていますので、ホーミーのような音が出せればそれに合わせて調弦出来ます。
第四倍音から第八倍音
ホーミーのような音
で、この調弦で全ての曲が弾けるのかというと、弾けたとしても変わった印象になる曲が多いですが、
それはすでに平均律で成り立っている現代のメロディーが先に頭に入っているからでして、
不正解とか間違いとかではなく、それが伝承なのかどうかという別の問題になってきます。
ただ、なんだかとてもしっくりくる曲もあって、限定的かつ特殊な音楽として存在してもいいのではないでしょうか。
◇ 終わりに。
全ては僕が勝手に思っている事ですので、証拠文献も何もありません。
アイヌは文字を持たず、その昔の記録類は無いそうですし、
どれが正解とは誰も言えない事ですので、これは個人的な楽しみの範囲内のお話です。
平均律に慣れてしまった僕らの耳には、音程が外れているとしか思えない音が、
実は狙い通りだという事があるかもしれないという事です。
アイヌと沖縄のそれぞれにあるちょっと不思議な音を考えたら出てきた、ひとつの答えです。
よじ登る。。
とりあえず戻ってみる。