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いざ出発。 |
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舳先に座った私の足元 |
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パドルワークがそろってきれい |
渡されたライフジャケットを身につけ、いよいよカヌーに乗り込む。先生が用意してくれたのは、2人乗りのカヌー。「先生とNちゃんが乗ったら?」と隊長。「そうね。Nちゃんはこわがりだから先生と一緒がいいね」と私。しかし、大人の配慮がわからないNちゃん隊員は「私、隊長と乗る」。結局、私とS隊員、Nちゃん隊員と隊長という組み合わせとなった。
それぞれの艇に近づくと、お尻を乗せるくぼみというのがけっこう小さい。最近ぶくぶく太っている私が入るかどうか不安だったが、座ってみるとぴったりフィット。乗り込むときに少し揺れたが、乗ってしまえばよほどのことがないかぎり、ひっくりかえることはないそうだ。カヌーは幅が拾い方が安定しているように思えるが、荒天で波が高いときなどは、幅か広い方が影響を受けやすく沈(チン)しやすい。細い方が波頭の上にのっても自分の体重と技術で艇をコントロールできるので安全なのだ。カヤックの世界は日進月歩。素材の軽さも耐久性も、艇の安定性や操作性も、今のものは素晴らしくよくなっているそうだ。
さて、最初はうまくこげるか、ちゃんと進むか心配しただいすきドしろうと隊だったが、やってみるとこれが簡単快適。パドルを動かせば、すいすいと進む。「こりゃーいいわあ」
「いやー、気持ちいい」「最高だね」「ビールがほしいなあ」。だいすき隊の感嘆の声が、夜のしじまに響く。「簡単にこげるね」とS隊員が言うと、「そりゃそうだ。小学生でもできるんだから」と先生。背すじをのばした乗り姿が美しい。その横に、Nちゃんを前に、隊長が後ろに乗った艇。パドルワークの息がしっていて、これもまたなかなか美しい。
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すいすい進むのでS隊員もご機嫌
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2人乗りの場合、後ろに座る人が操作の主導権を握る。撮影をする私はパドルを持たず、動力と操作はすべて後ろのS隊員にまかせたが、一人でこいでいるのに、しっかりとスピードが出る。
夜の湖は静かだ。耳には、水をかく音しかはいってこない。夜の黒と、湖の黒。その間の闇を音もなく進むと、なんだか、違う時空に迷いこんだような気になってくる。これが涅槃なのか・・・。静寂がとけこんだ闇に身をまかせていると、あっという間に小さな半島の近くに着いた。
「ここで、水の中に手首をまで入れて揺らしてごらん」と先生。
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こんなふうに手をいれて動かすとキラキラと煌めく
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やってみると、青白い光が手のまわりできらきらときらめくではないか!これが夜光虫か!
「今夜は素晴らしくほのか。ワビサビの世界だ」と、先生。表現が、本当に詩的なのだ。
夜光虫は刺激を受けると発光するプランクトン。同じところを何度も揺らすと、刺激に慣れてしまってあまり光らなくなる。それからしばらくは、より美しく、よりたくさん光る夜光虫のショーを求めて、湖上を彷徨。最もよく光ったのは、つぶて島の島影だった。ここではパドルを入れるだけで、光が四方八方に散るのだ
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夜光虫に感動する隊長とNちゃん隊員
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空とつながった闇の中で、微小な命を光らせる生物。はかなく細い光だが、そこには人間なんかよりもはるかに逞しい生命力が宿っているように感じる。はるか時を超えた太古の昔から、淘汰もされず無用な進化もせず、同じ営みを続けているのだから。ちいさな湖の片隅で、地球の悠久を知る。だいすき隊は無言で夜光虫を通じて地球と戯れたのであった。
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