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2003.06.21 |
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『鬼哭啾啾―「楽園」帰還した私の家族』 辛淑玉(解放出版社/2003,5)
『愛と怒り 闘う勇気』 松井やより(岩波書店/2003,4)
左半身不随状態が続いた5月後半、本を読むことはできたので、まとめて読書することができた。災い転じて福となったわけだが、そのなかで、偶然続けて読んだこの二冊に圧倒された。息が詰った、と言っても大げさではないほどに。
どちらも彼女たちの自伝といえるが、内容についてはここに書かない。いや、短い文章にはまとめられないというべきだろう。それほど凄い二冊である。新刊で手に入れやすいので、ぜひ読んでほしい。
辛さんは東京の居酒屋で人に紹介され、3分ほどの立ち話で「今度ゆっくり……」と別れただけであるが、この本で彼女の"身勢打鈴"をたっぷり聞くことができた。
松井さんとは、'88年に初めて訪れた沖縄で村井吉敬さんとの三人旅が印象に残っている。その後あちこちで一緒になったり、我家で沖縄女性や智子さんと怪気炎を上げたりしていたのだが、南部戦跡の売店で季節外れの水着を探している姿が忘れられない。「泳ぎたい」という私の言葉を真に受けてのことだった……。
昨年12月27日永眠するまで書き綴った松井さんのメッセージ「愛・怒り・闘う勇気」は、辛さん自身の啾啾たる哭のなかからも伝わってくる。私のような怠惰な男には、とくに"渇を入れる"両書である。
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