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第13回 鹿狩りキャンプ2006年3月17日〜19日/阿寒町

ここ数年、我らが狩場に鹿の姿が見えなくなってきていました。ひと頃のように樹間に鹿の姿(影)を見、警告の鳴声を聞きながら「追い込み」の緊張感に奮える(幾分オーバーだが)ことができずに、数回を過ごしてきたのです。「有害獣駆除を恐れて、禁猟区に入ってしまった」とか「このあたりの鹿は、みんな知床へ移住してしまった」とか、原因はいろいろ考えられますが、いずれにせよ彼らの学習能力が我々のそれをはるかに凌いでいることは確かです。

ということで、「狩場を変えよう」という話はしていたのですが、なにせハンターも事務局も日常の忙しさに追われているうちに期日だけは迫ってきます。ハンター山下が想定していた地域は豪雪に見舞われたようですが、その後のコンディションを下見に行く余裕がありません。「ま、なんとかなるだろう……」と、いつもながらの"横着パターン"で、例年通りのスタイルとなりました。今年はハンター桜井も復帰できそうだし、ほんとに何とかなるだろうさ……!?


17日朝、曇天の札幌で数人をピックアップして、小休憩をはさみながら阿寒へ。天気予報では、最終日に天気が崩れるということだが、その前に「なんとか獲ってしまおう」。晴れ上がることはないものの、穏やかで暖かい日差しのドライブ日和でした。途中情報では、山下車はすぐ後ろを走っているようだし、桜井車も午後には出発ということで、態勢は万全。すっかり安心モードの私でした。

上徹別福祉会館に到着後、一応は下見に……。う〜ん、やっぱりいないか……! 不吉な予感に襲われます。

夕食の準備をしたり、温泉へ行ってきたりしているうちに参加メンバーが到着し、13名で夕食。東京から飛来した3名のなかには10回目参加の村上さんもいます。4年ぶりのハンター桜井が着いて、"なんとかなる感"が増幅してきました。知床から駆けつけた若者たちも、明るい猟果を予感させます。遅くに到着した2名を含めて、初日は15名の精鋭(?)が明日を夢見て眠りにつきました。「若者は明日5時半起きで出発するゾ〜!」というハンター山下の声を聞きながら、私の意識はなくなっていったようです。


18日5:30、若者2名とハンター2名が起き出して6:00前には出発して行きました。ほかのメンバーは7:00過ぎから起き出して、朝食の準備。「さあ、食べようか」という頃、早朝狩猟班が帰ってきました。なんとなく静かなので、「駄目だったか……」と、暗い予感が的中。ムムム………ですが、あれこれ言うのも憚られます。

打ち合わせはちゃんとやった

打ち合わせはちゃんとやった

それでも気を取り直して朝食。東京から早朝便で着いた1名を加え15名が、10時に出発しました。山杖を手に、希望を胸に、「シカ、イレバイイナァ〜!」……。

いつもの雪原での追い込み猟は、ハンター山下が"追い込み班"を率い、私と平島さんがハンター桜井とともに"待ち"の位置に。………………とにかく、待ちました……。

平島さんは、背負ってきた刺繍作品を河原に広げて写真撮影。冬に開催予定の「アイヌ刺繍作品展」の案内ハガキ用です。そんな仕事のない私は、上空を飛ぶオオワシやオジロワシを眺めて過ごしました。風もなく穏やかな日でした。


待つこと1時間、ハンター山下はじめ追い込み班が到着。「いなかった……」

空しく戻る狩人の隊列

空しく戻る狩人の隊列

「元気な人は行こう」と、山下さんが対岸の小山へ向かいました。10人ほどが続いて尾根を越えていきます。例年だと、尾根の向こうにたむろする鹿たちを仕留めることができるのです。残留班は、銃声の響きを待ち続けました。静寂が続きました……。「元気な人は行こう」と、山下さんが対岸の小山へ向かいました。10人ほどが続いて尾根を越えていきます。例年だと、尾根の向こうにたむろする鹿たちを仕留めることができるのです。残留班は、銃声の響きを待ち続けました。静寂が続きました……。

「駄目かなぁ!?」と呟いた私に、「みんな戻ったら、車のやつを降ろして、解体しよう」と桜井さん。「え? 今朝、獲ったの?」「うん、1頭だけ」「どこで?」「もっと上流のほうで」………そうか〜、獲ってあったんだ〜!

追い込み猟の結果が心配だったので、1頭だけは確保して内臓を抜き、車に積んであるということでした。みんなの意欲に影響するかもしれないので、"内緒"にしていたそうです。ハンターと若者たちの、朝飯前の仕事でした。なんにしても「ジンギスカン食わなくてもいい」……ホッ! です。

解体はみんなで

解体はみんなで

やがて――心なしか肩を落としたメンバーが戻ってきました。「何頭かは見えたけれど、遠すぎて〜」と山下さん。空振りに終わった、午前の追い込みでした。それでも、「確保してある1頭」の存在を知って元気を取り戻し、雪原を横切って車まで戻り、木立の中で解体にかかります。中型の雌鹿は、肉付きがよく脂ものっていて、この時期のものとしては立派な獲物でした。雪原に残された糞が、去年に比べると圧倒的に充実していたのをみると、今期のシカたちは充分なえさにありついていたようです。交替でナイフを使い、貴重な獲物(ユク)を丁寧に解体しました。

会館での昼食後、札幌から飛んできた2名を加えて午後の狩りへ。

上流の山奥と下流の山間、2ヶ所を探索しましたが、鹿の姿を見ることはなく、堅雪の上を歩き回って終わりました。昨年タヒチの山奥を走ったような急勾配やカーブを走破した――今回は雪道ですが、鹿はいません。暖かい春の陽を浴びての散策で収穫したのは、フキノトウと拾い角だけでした。

責任果たしたハンターの笑顔

責任果たしたハンターの笑顔

会館に戻って夕食の準備。温泉行きグループが戻って、鹿肉パーティが始まります。やはり今回の鹿肉は、美味い! 飽食、飽飲(?)と参加者それぞれのコメント、三線・謡で………夜が更けていきました。阿寒湖畔から差し入れ持って駆けつけてくれた栄子さん、モコちゃん、有難う!



19日。21日。朝方から降りだした雪が小止みなく降り続けています。気温が高いので、粉のような雪も、積もると結構な質感があります。「こりゃあ、鹿探しでもあるまい……」と、朝食後は全員で肉の切り分け作業に。人数分にパックすると、それぞれがお土産には十分な肉が残っていた。18人とはいえ、一度に食べきれる量はそれほどのものではないようです。

鹿の表情がとても穏やかに見えた

鹿の表情がとても穏やかに見えた

例年通り雪原の一角にチタラペを張り、シカの頭を安置して、カムイノミ。小降りになったとはいえ降りしきる雪は、人も物もしっかり濡らします。13回目にして始めての、雪の中のカムイノミでした。


会館で濡れたものを広げ乾かしながらのミーティング(?)。「来年は、弁当持って遠出をしよう」とハンター、「鹿いるところある?」「ある、ある」「じゃあ、そこへ行こう」。「時期も早くしよう」「いつ?」「2月がいい」「それじゃあ、連休があるから、2月10日〜12日だな」「ん、そうしよう」……と、来年の鹿狩り日程が決まりました。来年こそ、皆でたくさん鹿を獲ろう!

昼食後、会館の掃除を終えて解散。車で、飛行機で、それぞれの家路へ。「また、来年!」と声を掛け合っての別れです。一時的な冬模様もやがて終わり、春に戻った陽気のなかを快調に走り抜けた帰路でした。

<撮影:平島邦生>

鹿狩りキャンプに参加して

石川 真代(札幌市)

鹿の解体のとき、ナイフを渡されて、何のためらいもなく作業にかかれたことが、自分でも不思議でした。

目の前に鹿の首が転がり、そのまなざしにどきりとしたにも拘らず、です。遠い昔から、人はそうして命をつないできた、私もそのつながりの一つだということでしょうか。

愛でる対象としてではなく、狩る対象として鹿の姿をさがすロングドライブ。走り去った群を見送りながら、「残念、捕れなかった」と思う心。どれも初めての体験でした。

「お命頂戴いたします……」の思いで「いただきます」と言うんだと、誰かに教わったのはいつだったのか。今回、そのことを実感しました。

すてきな方々といっしょに、楽しくおいしくいただきました。ごちそうさま。さあて、もらった力をどのように使っていこうかしらんと、思いをふくらませながら、今日は日常にもどっていきます。

 これから「いただきます」と言うとき、ときにはあの鹿のまなざしを思いだすのでしょうね。

石川 泰羽(12才・札幌市)

着物を着て、イヨマレ(お酒を注ぐ役)初体験の泰羽さん

着物を着て、イヨマレ(お酒を注ぐ役)初体験の泰羽さん

私は、初めて鹿肉を食べました。とてもおいしくて、やめられませんでした。

鹿の解体では、身と皮がとてもスルスルと分かれて、ビックリしています。

鹿は見たコトあったけど、初めてエゾ鹿が見れて嬉しかったです!

智子さんの食事も、とてもおいしくいただきました。

その日とった肉を、その日のうちに食べれるのは、いいな?と思いました。

また、こんなきかいがあれば嬉しいです。

ありがとうございました !!

斉藤 雅博(平取町二風谷)

僕はシカ狩りキャンプが楽しみでした。何故かというと、今まで動物の首を絞めた事が無く、売られた物を何となく食べてきた事になります。

食べ物とは感謝があってこそ、おいしく、楽しく、気持ち良く食べられる物、頂ける物だと思います。それを忘れない為にも、自給自足、シカ狩り、山菜採りによって、自然の強い力(エネルギー、パワー)を貰う事は、必然ではないでしょうか。だから、そんな理由でこのキャンプに参加できた事は嬉しい事です。また来年も来ます。

皆さん、有難う御座いました。大地と自然の恵みに感謝します。

イヤイ・ライ・ケレ、オンカミアンナー。

下川 顕(東京都)

去年に引き続き、鹿狩りに参加した。

去年は借りたスノーシューの調子が悪く、解体に間に合わなかったため、今年は自分でスノーシューを購入し、体力をととのえて万全の準備で来たが、残念なことに、鹿をしとめる場面には立ち会えなかった。

今年は雪が少なく、鹿の姿がなかったため、私が到着する前に射止められた1匹だけであった。

鹿を射止める場面は見られなかったが、鹿の群を見ることは出来たし、美味な鹿肉を食べることができたので、結果オーライであった。

去年は雄鹿であったが、今年は脂ののった雌鹿がとれたので、新鮮なレバー、ハツ、ロースを刺身でいただいたが、牛肉以上の美味であった。

ただ残念なのは、このような美味い肉を食べてしまっては、しばらく他の肉が食べられなくなってしまうことである。

寺林 里紗(札幌市)

いつも、スーパーで売っている肉しか食べていないので、一度は自分で解体した肉を食べなくてはいけないと思っていました。

鹿がいなくて狩りはできなかったですが、鹿の解体を見て、骨から肉をはいだり、毛皮をとったり、初めてのことをできて、ここでしかできないことでした。

色々なことをしている人たちと、お腹いっぱいご飯を食べ、話し、三線を聞き、とても楽しかったです。

でも、山下さんから銃を見せてもらったり、狩りの説明を聞いたりと、身に残る話も聞き、勉強になる一面もありました。こんな機会を、ありがとうございました。

西原 重雄(斜里町)

今年は念願のレバーにありつけて、よかったです。

一つ残念なことは、一頭しかしとめることができなかったことですが、こればっかりは自然相手のことなので仕方ないですね。年々鹿が少なくなっているという話を聞いたり、雪解けが早いという話を聞くと、来年の鹿狩りがうまくいくかどうか気になるところです。

僕の住んでいる知床では、逆に鹿が増えすぎて困っているくらいです。知床は世界遺産に登録されたばかりだというのに、海鳥の大量死や鹿の急増、流氷の減少など、自然のバランスが崩れている状況です。

心配事ばかり書きましたが、今年の鹿も美味しかったです。ヤイユーカラの森の皆様、ありがとうございました。食べられてくれた鹿さん、ありがとうございました。それから、カムイ様、無事にキャンプを終えられて、ありがとうございます。

西原 里枝(斜里町)

「狩り」の部分は、少しだけ体験できました。

鹿たちは、皆の殺気(? シカとるぞー!の気持ち)を感じ取っていた(ので早々に姿をくらませた)のだと思います。(気候etc.の自然条件もあったとは思いますが……そういう意味で、狩りは大人数でするのには向かないかなと思いました)。

「狩り」の部分、しっかり体験したかったです。ウトロに戻ったら、安全にしていられることにたよって(?)慢心しているニクニクしいシカを、「抱きつき猟」とか棒っこでたたくなりして一頭は、一度はとりたいなと思います!! やはり自分の力でえものをとって、初めて「命をいただく」ことを実感できる。誰もが一度は体験してほしい事と思います。

「解体」の部分は、間近に、説明を受けながら見ることができて、大変勉強になりました。(肝心の内臓の取りのぞき方が見られなかったのは残念でしたが……)今後もし鹿をとる事があったら、この体験を生かしたいと思います。

「肉の味は殺し方(撃った部位)と解体のしかたで決まる」という話を聞いた時は驚き、またなぜか納得しました。

おいしいお肉をいただくためには、全ての物事がつながって(関連して)いるのだな〜。

いや、おいしいお肉にとどまらず、「全ては全てにつながっている」という事を常に意識しなければ。

とても勉強になり、また楽しいキャンプでした。段取りや下準備etc.大変だったですね。本当にありがとうございました!! 今後とも、よろしくお願いいたします!

  

平田 篤史(横浜市)

 ト ホッ    タンパ  テシペッ   オッタ  ユク オアラ  イサム アリ  ク ヤイヌ  ア コロカ   

なんとまあ  今年 は テシベツ   に   鹿 が まったく  いない  と  私は 思って いましたが

タンパ カ シネ  ユク   チ  コイキ   エアシカイ  クス  ユカッテ カムイ、 シリコロ カムイ、 ワッカウシ カムイ、

今年  も  1頭の 鹿 私達 獲る事が できましたの で   鹿まきのカムイ  大地の カムイ  水のカムイ 

カムイ ウタラ       タンパカ   ソンノ    イヤイライケレー

他のカムイの皆様  今年も   たいへん   ありがとうございました。

  

星崎 陽(東京都)

33年のほとんどを関東で過ごした私にとって、冬の北海道は未体験の世界でした。まして狩りなんて……。

実際にやってみるまでは、半信半疑だったのが正直なところ。しかし、初めてかんじきを足に着け、雪に足をとられ、道々鹿の落し物を見るに、次第に気分が高まってきました。

その時には仕留めることはできなかったのですが、それまでに獲っていた鹿の解体を手伝いました。実にわかりやすい体のつくりで、思った以上にスムーズ。もっとも、ハンター2人の的確な指示のもとによるものが大きいと思います。

午後は、獲れませんでしたが、踏み込んだ先で落ち角をひろいました。数年を経たもののようですが、十分なおみやげものとなりました。

落ち着いて考えれば、この度はアイヌのことを考える機会、文化伝承は実に心にひびきました。

自分の興味の範囲でないと参加はできないと思いますが、今後もまた参加したいと思います。ありがとうございました。

平島 邦生(札幌市)

おだやかな日差しと、頬をなでる暖かい風。札幌から阿寒までの道中は「鹿狩りに行く」というよりは、「お〜春だ、山菜採り行くべ……」の気分。徹別に着いても、雪上には鹿道どころか新しい足跡さえ見当たらない。雪解けが早く、鹿も山奥で十分に暮らせるのだ。大雪の年にはおが屑のようにバラバラくずれていた「鹿のウン」が、今年は色も形も良く、艶まであって輝いている。

村上 健司(東京都)

もはやベテランの域に達した村上さんの三線

もはやベテランの域に達した村上さんの三線

97年に始めて参加した鹿狩りは、山づえによる手取りのみで、マスコミ取材陣を含む40名近い参加者がありました。もちろん手取りで獲れる訳もなく、成果はありませんでしたが、鹿の気配だけでも感動し、満足でした。

その後銃を使用するようになり、最近では確実に少なくとも一頭を確保していただいています。ハンターの存在の大きさを、改めて実感しています。感謝の思いで一杯です。

10回参加する中には、いろいろな出会いがありました。毎回お会いする方、一度だけ少し言葉を交わしただけの方、多くのインスピレーションを頂いたと思います。自分自身の人生観にも、少なからず影響を与えていただきました。この出会いにも、感謝したいと思います。

そして何より、この機会を10年もの間継続して下さったヤイユーカラの森の皆様に感謝をしたいと思います。毎年、あきもせずやってくる私を、温かく受け入れ続けてもらって本当にありがとうございます。今後もできる限り参加し続けたいと思いますので、よろしくお願いします。

世の中がおかしくなっている昨今、歯止めとしてのささやかな良心を維持し続けるためには、貴重な機会だと感じています。戦争にもつながりかねない数々の芽をつむべく、試行錯誤を続けたいと思います。(お金と戦争の関連が、私の研究テーマです)

山道 陽輪(平取町二風谷)

今回、初めてハンターの人について鹿狩りをさせてもらい、撃つところや解体するところを見て、あんなに簡単にさばけるとは思いもよらなかったので、とても勉強になり、本当に楽しい鹿狩りキャンプでした。


それにトモコさんの手料理や鹿肉のレバ刺し、タンを初めて食べたんですけど、本当に美味しくてびっくりしました。

今回はいい体験をさせてもらい、ぜひ来年も来れたら来たいと思っております。本当に、ありがとうございました。イヤイライケレー。