魚菜王国いわて

付録 フランス人権宣言にケチ!

この項は、私が岩手日報に投稿した一つの作文を紹介する。
  
 「人は生まれながらにして自由かつ平等の権利をもっている。」フランス人権宣言の有名な第一項であるが、私はこれをまゆつばものだと思っている。完全な自由と平等は絶対に両立しない。
 経済社会において、自由であればあるほど貧富の差は拡大し、平等は保たれない。逆に平等精神が強くなれば、自由競争は否定される。前者は自由主義経済で、後者は社会主義経済である。世界の民主社会は、この二つの経済体制を両翼に置いて、その間のどこかに必ず存在している。
 自由主義経済とは政府の規制や保護をうけない、つまり市場原理を優先した経済である。だが、これは裏返せば「自分の生活は自分で守れ」ということでもあり、自立主義でもある。
 社会主義経済は政府が積極的に関与し、統制した経済であり、人々は平等化された生活を保障されるが、それを実現した社会主義国家はまだない。仮に社会主義が成功しても、最終的に人々は怠惰になり、財政は破綻する。それゆえ、理想主義とも言われる。
 今の日本は社会主義寄りの経済であると指摘できる。雇用対策と言っては衰退してゆく産業に対しての過保護、福祉と称して健康保険、年金、介護保険の無軌道な推進、効果が疑問視されるばらまき型経済対策など、すべてが財政赤字の元凶であり、社会主義経済の末期的症状に似ている。これらは健全な市場経済に対して障害ともなっている。
 日本経済の社会主義化の第一の原因は、労働組合運動による労働環境の行き過ぎた改善にあると私は思う。賃金の上昇と労働時間の短縮は生産コストを上昇させ、中小企業を苦しめた。グローバル企業は、より安い労働力を求めて海外へ進出した。これが産業空洞化のメカニズムである。
 また労働組合運動自体、社会主義思想から生まれたものだから、労働環境の行き過ぎた改善が労働者の怠惰を招くのは必然といえる。山一証券の倒産は、実は労働組合の怠慢に原因があったことを本紙でも紹介された青木雄二氏も指摘しており、組合は経営内容をチェックする戦略をとるべきだと語っている。かつて「日本人は働きすぎ」と欧米各国は批判したが、それが彼らの経済戦略であったと今気づいても遅い。
 第二の原因は、自民党の社会主義化である。雇用不足解消という大義名分を掲げ、圧倒的多数の労働者の票を目当てに不合理な経済対策を彼らは断行している。今の日本の政党は、掲げる数値や政策決定プロセスが違うだけで、政策自体はみな同じになっている。
 「自分の生活は自分で守る」という自立思想は本来当たり前のことである。そして、余裕があれば困っている人を助けるという考え方が私は正しいと思う。雇用優先とか福祉優先とか言うのは、聞こえは良いが、その財源をどこに求めるかと問えば、結局増税である。自立努力して頑張っている人たちは、これに不満である。
 岩手の漁業界を支えるサケ漁を見て思う。サケは大豊漁となれば暴落し、不漁であれば高騰する。完全な自由市場である。今期のような大不漁でも、漁業者はめげずに次の仕事を頑張っている。社会主義に染まった労働者は、自立努力をしている彼らを少しは見習うべきではないだろうか。(引用 副島隆彦著「日本の秘密」 青木雄二、宮崎学著「土壇場の経済学」)
(2000年2月17付「岩手日報」日報論壇)

過去の作文を見るのは恥ずかしい。(^^;
これはある親しい漁師に依頼されて作ったものである。
この漁師の言葉が忘れられない。
「こんなに頑張ってで、不漁でも何にもしてもらーねーのは漁師だげだー。これでー、誰も漁師になりたぐねーがなあ。おい、おめー、何がかげー。あだまにくるー」
宮古弁丸出しで読みにくいだろうが、これが産業構造の最下層にいる人たちの本心である。

私はその人に言った。
「オカの人だぢは国に食わせでもらってんだ。漁師は誰の世話にもなってねーど思って胸を張って生きていくべす。ホイドーみってーなのどは一緒にすんなって」。



政治とは?

トップへ