魚菜王国いわて

付加価値?

これからの漁業や農業は、新たな付加価値をつけてやっていくべきだ、という有難い?御進言をマスコミなんかから提示されますが、漁業とは、水産物を獲る、あるいは、養殖をする、であって、加工、販売が本業ではありません。
農業はわかりませんが、少なくとも、魚類を獲る漁業の最高の付加価値は、高鮮度であること。
これ以上にもこれ以下にも付加価値は存在しないのではないか、と私は思っています。
養殖漁業となれば、貝類は高鮮度、海藻類は高品質。

最近、私が少し獲っている「どんこ」という魚が、宮古市を中心として、注目されはじめています。
以前、「みやこわが町」サイトのトップページに、「宮古下閉伊どんこ料理の店発表会」の写真が載っていたり、また、宮古市の飲食店の中には、「どんこ料理」の旗を掲げていた店もあります。
「どんこはうまい」ということは、漁師仲間では昔から知られた話で、どんこ汁、ハタキは、どんこ料理の代名詞でもあります。
ハタキを寿司ネタに用いたのも、ごく最近のことです。
どんこ料理の、このようなうれしい騒動は、漁業者にとって非常に追い風となります。
単発的に個人レベルで開発していた人はいましたが、地域の飲食店が一丸になって、どんこに付加価値をつけようとした試みは、今回が初めてではないかと思います(いや、寿司関係で確かあったかもしれない。ただし、その時、どんこという名前はなかった)。

どんこ、という魚は、グロテスクな風貌から敬遠されがちですが、顔を見ると非常に愛嬌があります。
身は非常に柔らかく、刺身にするのは難しく、ゆえ、ハタキが簡単に生で食べられる料理法なのです。
また、柔らかいがゆえ、みそ汁も、魚の取り扱いに注意しないと、身が溶けてしまいます。
タラ類より柔らかいですから。
でも、基本的にタラと同様に扱えば、刺身も作れないことはありません(しかし、ハタキは美味しいけれど、刺身はイマイチ)。

10年くらい前まで、どんこは、「ついでに」水揚げしていた魚です。
夏などは半分ぐらい捨ててきたものです(夏のどんこは、キロあたり5円とか10円で、仲買人もしかたなく買っていた)。
それが、今や、どんこを狙って漁獲するようになってきました。

さて、本題の付加価値ですが、その道のプロが、このように付加価値を創造してくれれば、漁業者も潤うわけです。
これをもし、漁業者が、魚の加工、料理までして、販売するとなると、まず体がもちません。
時間も足りなく、事業化するころには、あの世に行ってしまうでしょう。
また、なんでもかんでも(←これみやこ弁?)漁師がやってしまったなら、プロたちのほうも困るわけです。
というより、本気になった加工、料理のプロと競争したら、漁師は絶対に負けますから、これを考えれば、漁師の領分ではないのです。
漁業者は、飽くまで高鮮度の魚を獲ること、高品質の海藻類を収穫することが、使命なのです。
加工法、料理法などの付加価値創造は、どんこのハタキを良い例として、漁業者に恩恵をもたらします。
それゆえ、漁師の側もそのような日常の食べ方を飲食店などに飲みに行って、自慢してきてください。
どんこ料理の知名度が上がれば、少しは地方が活性化されるかもしれません。
どんこは、極端な大漁を除けば、生産地あるいは生産地近郊でほとんど消費しますから。
宮古に来れば、確実にどんこ料理が食える、というイメージが行き渡れば、もしかして、どんこを食べたい一心で、宮古に来るかもしれませんね(そんなことがあるだろうか?)。
(2004年2月10日)



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