魚菜王国いわて

ウニが安いと思うわけ

今年は順調にウニを食べました。
私はウニで太ってしまいます。
それにしても、ウニは、手のかかる割りに安いですね。
一人でやっている人は、ウニを獲らずに、オカ仕事をして、賃金をもらった方がいい、という人もいるくらいです。
ウニの値段は、初漁の頃は、前年と比較すればまあまあ、と言われていましたが、それでも、これほど美味しいものを安値で売るなら、食べた方がいいと思うほどです。
もしかして、他の漁師の人たちが、その方向へ動くならば、宮古には今ほど生ウニの地元産が出回らなくなるかもしれません。
いや、殻付ウニに全部転換されるかもしれませんね。

今はやっているのかどうかわかりませんが、10年くらい前には、ヤマト運輸で殻付ウニの販売をやっていました。
その辺の魚屋さんなどでは、注文発送する場合、すでにメジャーな販売方法です。
殻付ウニになると、消費者としては、割高になると思います。
手間がかかるし、高い。
確かにむき身のウニも高い(?。買ったことないので知らない)でしょうが、しかし、すぐに食えます。
さあ、どっちをとるのでしょうか。

消費者の中には、生鮮水産物を口に入れるまでの手間を嫌がる人がたくさんいます。
重茂で漁船漁業をしていた人が、ひょんなことで宮古市の比較的山の方で、コンビニのような食品店を経営し始めました。
最初のころは、例えば自分の船で獲ったスルメイカを、そのまま販売したそうです。
当然バリバリの鮮度ですから、売れそうなものですが、それほどでもない。
そこで、刺身にして店頭に並べたら簡単に売れる。
そんなことを聞いてますから、ウニはどうでしょうか?

このウニは、漁業者が製品として売り出すまでには、ホント手間がかかり、その割に値段は高くないと思います。
今は衛生上の問題が社会問題となっていますので、ウニをむく時の水も殺菌水を使用し、この暖かさの中で、その水温も気にしなければなりません。
ウニの身にも小さなワタなどが付着していますから、それを箸などを使ってきれいに取り除くわけです。
むいたウニは、洗浄してビン詰めにして出荷します。
それに比較し、殻付ウニは、獲ったものをそのまま売ればいいですからねえ。
ものすごく簡単です。
手間がかからず、しかも鮮度抜群!
(殻付ウニは身入りが悪いと、消費者はかなり損をします。漁業者は獲った場所でウニの身入りがわかりますから、もし殻付で全量販売となると、生産者明記の販売とすることが前提となるかもしれません)。

重茂地区の漁師さんに言わせると、ウニは磯焼けのもとですから、どんどん獲ってある程度減らし、アワビを増やしたほういい、と言います。
アワビこそ、獲ってそのまま出荷でき、しかも、ものすごく高価です。
アワビに比べると、ウニなんてバカくさい。
ただ単に対労働効果(労働=費用なら、対費用効果)を考えれば、アワビ>ウニで、重茂漁師さんの言い分は納得できますね。
私とすれば、アワビよりウニのほうが美味しいと思いますけど、価格というのは、そんなものには左右されないようです。

その背景に、ウニの輸入量の大きさに原因があります。
平成15年度の殻付ウニの輸入実績は、全部で、11,822トン。
内訳は、ロシア産10,940トン、北朝鮮産407トン、カナダ産249トン、アメリカ産222トン、中国産3トンで、輸入港はすべて北海道です。
以上のデータは、2004年5月24日付「水産新聞」からです。
一方、国内の生産量は岩手県水産技術センターで紹介しています。
下記のリンクで直接行けます。

http://www.pref.iwate.jp/~hp5507/engan/uni.htm

国内生産量も、輸入量とそれほど変わらず、殻付で平成10年に13,653トン。
北海道が半分を占めていて、岩手は長崎に次いで3番目ですね。
長崎というのは意外な感じがしますが、ウニは、種類こそ違えど、どこでも獲れます。
私は学校終わりたての頃、南太平洋の小さな島国バヌアツに行ったことがあり、そこにはトゲのかなり長いウニがいました。
現地の人に、私は「うまそう」と言ったら、「dangerous」って言われました。
あの国ではウニは食べないのかなあ、とか、毒のある種類なのかなあ、と当時考えましたが、毒のあるウニなんて聞いたことがありません。

以上からわかるとおり、ウニは世界中どこにもあり、他の漁業者が私のような感覚で「ウニは安いから食べたほうがいい」となると、むき身の地元産は出回りにくくなる可能性があります。
そして、殻付ウニへの転換があるかもしれません。

私とすれば、「殻付でもいいから、どうしても食べたい!」という消費者ばかりになることを願います(笑)。
今まで私が獲ったウニの数→1個(ホントです。笑)。
(2004年6月6日)



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