魚菜王国いわて

グリーンピースは鯨の味方

今日は、6月15日付「新潟日報」で、反捕鯨団体グリーンピース・ハニッチ氏に対するインタビューを取り上げていたので、これについて、少し反論したいと思います。
各新聞には、ベルリンで開催される国際捕鯨委員会(IWC)の年次総会のことが書かれていると思うので、参照してくれれば幸いです。

◆ベルリン総会での注目点は。
「IWC内に鯨の保全委員会の設置を目指す決議案が提案される。可決されれば『開発から保全へ』という環境保護の流れが加速される。また、ホエール・ウォッチングを営む関係者が今回初めてオブザーバー参加する。鯨を『獲る』のではなく『見る』ことが大きな経済効果をもたらすことをアピールしたい』
◆保全委員会が必要な理由は。
「大型魚種の資源量が過去50年間で90%近く減ったとの研究結果が発表されるなど、世界の海洋環境は危機に瀕している」
◆鯨の資源増が漁業に悪影響を及ぼすとの日本政府の指摘については。
「非科学的で、ばかげた議論だ。鯨は生態系の重要な一部。魚類資源保護のためには、生態系全体を守らなければならない」
(6月15日付「新潟日報」)

この3つの問答に関して反論します。

一つ目は、ホエール・ウォッチングについてです。
鯨にとって人間に近づかれて見られるという行為がどのようなものなのか。
特にアメリカでは、アニマル・ライツという動物にまで人権を主張する団体もあるほどです。
アニマル・ライツ派の視点で見れば、鯨だってそっとしておいてほしい、という考えが出てくるはず。
鯨が人間に観察されて、鯨に何ら利益はない。
ゆえ、アニマル・ライツ派は「ホエール・ウォッチングもやめろ!」というべきです。
そう言わないのは、何か背後に策略があるからか、あるいは、単純なバカか、どちらかだと私は思いますけど。
しかも捕鯨と同じくして、ホエール・ウォッチングには燃料を使いますから、環境にやさしいかどうか、グリーンピースはよく考えるべきです。

二つ目はデータの持ち出し方があまりに古いということ。
50年も前と比較するなら、そりゃどんなものだって、減ってますよ。
増えているのは人口とカネの流通量と廃棄物だけ。
過去10年とか5年とかを見て、ハナシをしてください。

しかも3つ目との関連で、魚類資源が減っていることを無視して、鯨だけが減っていることのみを主張することは、全体的な視点を欠いています。
大きな視点で見るならば、人口が増えていて、先進国の贅沢病が増えていて、それを補うには漁獲高増しかない、あるいは農産物の生産増しかない。
人間も生態系の一部であるから、生態系全体のバランスを考えるならば、鯨の減少よりも人口増大のほうが100倍も深刻な問題です。
鯨はご存知の通り大食漢で、ものすごい量の魚類を食べています。
海の生態系では、人間の次に上位にくる動物であり、人間と競合するのは避けられません。
それゆえ、日本政府の主張は悪いものでもなく、決して非科学的なものではない。
で、鯨は生態系で重要な一部としていますが、生態系のバランスを考えるならば、魚類資源の減少している現在、鯨の増えすぎはいいことではない。
しかも、そのデータ比較で、50年も前のものを持ち出すなら、50年前の魚類資源も比較して論議すべきものです。
絶滅させず、増やさず。
これが生態系のバランスをとるうえで、重要なことだと私は思います。

過去の長い地球上の歴史で、体の大きい恐竜が絶滅しています。
自然の生態系は厳しいもので、人間の自然破壊行動も「長い歴史の自然界のできごと」と捉えるならば、結局、「人間」対「鯨」の食糧獲得競争で、鯨は負け、絶滅する流れではないか、と私は思います(非常に冷酷な見方になりますが)。
(2003年6月21日)



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