魚菜王国いわて

ケガニとタコの資源管理

先日(1月14日)、浄土ヶ浜パークホテルで、「資源管理型漁業に関する講習会」が開かれました。
主な対象魚種は、ケガニとミズダコだった模様です。
資料によれば、ミズダコについては青森県の事例、ケガニについては北海道の事例を紹介しています。

青森県のミズダコというのは、恐らく宮古周辺ではイシダコと呼ばれているものでしょう。
タコの雌をマダコ、雄をミズダコと青森県では呼んでいるようでが、宮古でマダコと呼ばれるものは、大きくても5kgにもなりません。
また、宮古でいうミズダコは、ほとんど沖合いの深い所でしか獲れないので、それから推察すると、青森県のミズダコは、宮古ではイシダコと呼ばれるものです。
青森県のミズダコ漁は、平成2年から、すでに資源管理型の漁業へと移行、漁業者が自ら取り組んでいます。
繁殖保護期間として、6月1日から10月31日までを禁漁期間として設けていて、さらに2kg以下のタコは放流しています。
その後、これら自主規制を再検討し、平成13年11月1日より、3kg以下のタコの放流、その代わりに禁漁期間を1ヶ月短縮し、7月1日から10月31日までとしました。
ミズダコの成長は早く、1kgのタコは放流後1年で10kgになり、これらの自主規制は効果が大きいことがわかります。
これと岩手の現状を比較すれば、岩手は何と悲惨な漁業をやっているのかがわかります。
岩手でもカゴ漁業者が集まって、自主規制案をまとめようとしている最中なのですが、1kg以下のタコの放流ですら、なかなか決まりません。
しかも周年操業(つまり、禁漁期間なし)。
あきれてしまいます。
成長が早いのだから、我慢して小さいタコは放流すれば、そのリターンは大きいのですが。
県北ではすでに2kg以下のタコは放流していますが、恥ずかしいことに、わが宮古管内以南では、未だ制限がない状態です。
ちなみに、私の船では、だいたい2kg以下のタコは自主的に放流しています。

次に、北海道のケガニ資源管理に対する取り組みについて書きます。
北海道では、1957年、ケガニのすべての雌と7cm以下の雄の採捕を禁止しています。
岩手でも現在、同様のサイズ規制なんですが、北海道はさらに厳しくし、1964年に雄の採捕禁止サイズを8cm以下としました。
1991年からは、カゴの目合(網の目)を3寸5分(11.5cm)に拡大し、小さいカニは自然にカゴから抜け出るように配慮しています。
釧路東部海域ではカゴ数を1隻あたり700カゴに限定しており、採捕期間を2月1日から6月30日の5ヶ月間としています。
一方、岩手では、カゴ数、カゴの目合の制限はなく、ケガニの操業期間は12月1日から3月31日までの4ヶ月間です。
3月は脱皮カニ(これらは放流される)がほとんどになるので、実質3ヶ月がいいところです。
カゴ数の制限も検討されていますが、ごく一部の人間が反対していて、これもなかなか決まりません。
目合の制限は議題にもあがりませんが、しかし、これも検討すべき重要なものです。

私はケガニを獲りたくとも、今の県の規則では、違反操業となる海区に出なければなりません。
しかたなく、陸側の浅い海域で、イシダコやドンコ、カレイ類などを獲っています。
まれにアブラメやスイなどが入ります。
目合の制限がどうして必要か?
小さいケガニやタコ、アブラメ、カレイ類は放流すれば、沈んでいって資源保護になりますが、小さいドンコやスイは放流しても浮いてしまい、カモメに餌食になってしまい、結局食べたほうがいい、となってしまうからです。
そのため、目合を大きくすれば、カゴが海底にいる間、小さい魚類は、自然放流されるわけですから、資源の無駄になりません。

ケガニの刺網について少し。
岩手の宮古以北で、堂々とケガニを獲れる漁法は、固定式刺網漁業です。
北海道では、1978年ごろから、ケガニの刺網は廃止の方向へと向かい、現在はほとんどの海域で、カゴ以外の漁法でケガニの漁獲は禁止されています。
資源保護の観点から、刺網でケガニを獲ることは良いことではなく、このような県の漁業関係団体のいい加減さが、今回の講習会の資料から浮き彫りにされています。

今回の講習会のことで、どういうわけか、私の船主には連絡がありませんでした。
重茂漁協では、全くカゴ漁業をしたことのない人まで連絡があり、その方も出席したというのに。
実は宮古漁協までは連絡があり、漁協側は宮古のカゴ漁業の任意団体から連絡するように、との連絡を出したらしいのです。
ところが、その団体の長は、自分の「お気に入り」だけに連絡したらしい。
この長は、過去、どんなひどいことをしているか、私は知っています。
現在も、小さいタコを平気で水揚げすることで有名な人です。
今回、宮古から出席したカゴ漁業者は、赤前のT丸、鍬ヶ崎のT丸、藤原のK丸であり、ちなみにK丸は宮古漁協の理事です。
彼らのたった一人からも、宮古地区の他のカゴ漁業者に対して報告がなかったことを、ここに付記しておきます。

それから、出席した人(少なくとも宮古の漁業者ではない)の話では、どういうわけか、どうでもいいような人たち(たとえば県のお役人とか)が講習会に多数出席していたらしく、それよりはたくさんの漁業者に連絡をし、肝心のカゴ漁業の許可を持った漁業者の出席のほうを多くすべきだった。
ここにも、お役人体質が見受けられます。
どうにもなりませんね。
公務員はバカが多いそうです(タラソテラピー出資者のハナシ)。
(2004年1月20日)

加筆
宮古地区でイシダコと呼ばれているものは、北海道ではミズダコ。
宮古地区でミズダコと呼ばれているものは、北海道ではヤナギダコと言うそうです。

岩手県のカゴ漁業海区制限についてですが、今期から北部海域では水深160mまでは沖出しが可能となりました。
徐々に200mまで沖出ししてもらいたいものです。
また、宮古地区の制限事項として、毛がにの時期(12月から3月)だけは、1隻あたりのカゴ数を800カゴと限定することが決まり、実行に移されています。
少しは進歩しました。
(2005年1月16日)



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