魚菜王国いわて

ブードゥー・サイエンス

ブードゥー・サイエンスとは、邪悪な科学のこと。
名付け親は、ロバート・L・パーク。
「ブードゥー・サイエンス」の著者。
日本語訳は、栗木さつき訳「わたしたちはなぜ科学にだまされるのか」。
永久機関のウソにはじまり、宇宙開発のあり方まで書かれている。
ウソの科学まで信じてしまう脳のことを、この本では、心理学者ジェームズ・オールコックの「信じたがる脳」を持ち出して説明している。
それは、「生き延びる」ための行動の習性を、祖先から受け継いでいただけのものである。
脳は、五感から入ってくる情報をつねに処理しつつ、その情報に基づき、身のまわりで信じられるものを増やしていく。
新しい情報が、すでに信じているものと一致すれば受け入れ、矛盾すれば信じない。
そして、この「信じたがる脳」は、それが真実であるかどうかは考慮しない。
「真実である」から「信じる」わけではないらしい。
3万年前のクロマニョン人の頃から、この「信じたがる脳」は変わっていないという。

ニセ薬から代替医療の「副作用」も面白く書かれている。
また、エディー・マーフィー主演の「ホワイトハウス狂騒曲」で描かれている電磁波問題も、あれはウソだ、と説明している。
そして、もっとも唖然とさせられるのは、何と言っても「宇宙開発競争」である。
特に、あのアメリカのSDI計画は、もうお笑いの域に達している。
いや、アメリカは世界中の笑いものだ。
なんの成功の保証もない、この科学技術事業に取り組んだ初めての大統領は、レーガンである。
80億ドルもの無駄な投資だった。
再実験すら行われていなかったものを採用したのだという。

国際宇宙ステーションも無駄な事業だと断言している。
これ以前、ご存知のとおり、旧ソ連に「ミール」があった。
ミール内の宇宙飛行士は、「生き残るのに必死」だったという。
それほど宇宙は過酷であり、宇宙旅行などは、夜寝てから見る夢の一つに過ぎない。
木星や土星などの探査機のような遠隔探査ロボットは、人類のもろい肉体の身代わりで、日々このロボットの性能は向上しているが、人間の体は、この3万年間ほとんど変わっていない。
そして、ミールやスペース・シャトルにおける微小重力の研究で、大きく影響を受けた科学やテクノロジーは皆無なのだという。
ゆえ、宇宙開発、探査、実験は、すべて無人で十分だと結論付けている。

この本で非難している科学は、すべてブードゥー・サイエンスであり、「信じたがる脳」を利用して金儲けをたくらむ連中を暴き出している。
それが科学者であったり、マスコミであったり、政治家であったり。
これらの事実から、さまざまな教訓をこの本は示している。

最後に、私の好きな一文を紹介したい。

「われわれは秩序ある世界にくらし、回避することのできない物理学の法則に支配されている」
(ロバート・L・パーク著栗木さつき訳「わたしたちはなぜ科学にだまされるのか」p88)

(2002年4月29日)



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