魚菜王国いわて

日本の技術

日本の産業界全体が低迷している、というような報道が蔓延していますが、溝口敦著「日本発!世界技術」を読むと、日本は、まだまだモノづくりにおいては世界屈指だと認識できます。
それは、別にハイテクに限ったことではなく、基礎的な産業に、日本の圧倒的なシェアを誇る企業があるからです。

第6章の「基礎技術なしに産業立国なし」は全くその通り。
その中で紹介されている「ホソカワミクロン」という企業がまた素晴らしい。
何が素晴らしいかといえば、リードカンパニー制というシステムを用いていることにあります。
リードカンパニー制とは、各国の独自企業が得意とする分野について、さらに技術開発をリードし、グループ全体がその技術情報を共有するシステムです。
「海外企業をダメにしてしまう日本企業が多い中で、珍しい成功例だろう」と著者は語っています。
このホソカワミクロンという企業は、何を作っているかというと、粉体原料、すなわち、あらゆる粉の専門メーカー。
粉というのはあらゆる物質の基礎的原料で、小麦からそば粉、セメント、クスリ、シリコンウエアーなど、身の回りの生活の基礎になっています。
その粉体技術の世界的トップメーカーが、ホソカワミクロンです。
なかなか目立たない企業ですが、この基礎的な技術を日本企業が持っているものが多いらしく、その数例をこの本で扱っています。

さらに世界技術を生み出した零細な町工場もあり、何も派手な金儲け企業だけが、技術貢献しているわけではありません。
その中で一つの共通項があり、それが「巧みの技術」。
例えば、メガネで今やメジャーな非球面レンズ。
これは、生田精密研磨という町工場の技術で、この分野の世界オンリーワン企業。
正従業員はたったの5人前後というから、またまた驚きです。
レンズといえばニコンとかキャノンとか言いそうですが、この大手メーカーがあきらめた技術をモノにしたというから素晴らしい。
職人として土台がなかったらできないものだとされ、そこにこそ、大メーカーや他国に簡単に真似されない秘訣があるのだと思います。
職人となるには何より根気が必要でしょうし、仕事に対するプライドも必要でしょう。
この「巧みの技術」こそ、日本の生き残る最終的な技術と言えるかもしれません。

この本を読むと「日本企業って、頑張っているなあ」という印象を受けます。
で、何も懸念することはないと思われるかもしれませんが、先ほどの「巧みの技術」は、今の情熱の薄い軽薄な環境では育たないものです。
そう、熱中する、ということが大事。
みなさん、何でも熱中しましょう!

この本は、読むと元気が出ます。
(2003年10月14日)



読書感想文へ

トップへ