魚菜王国いわて

鮭を獲ることができる漁法

岩手県では、秋鮭を獲ることのできる漁法は、定置網、河川捕獲、そして、鮭延縄の3つです。
ご存知のとおり、鮭は、人工増殖で本県の水産業界を支えているゆえ、漁法をこの3つに厳しく制限しています。
河川捕獲は当然として、定置網は、各漁協の自営事業の大黒柱となっています。
特に、宮古、重茂、田老、小本浜の4漁協所属の定置網は、すべて漁協の自営事業です。
この4漁協は、鮭の来遊量が漁協経営を左右します。
今のところ、この4漁協は、県下では優良漁協であり、この4漁協がもし合併すれば、向かうところ敵なし、とでもいうところでしょうか。
というのは甘い考えで、近年の鮭の大不漁により、大きくなりすぎた宮古漁協などは赤字決算です。
当たり前の話ですが、組織が大きくなると、それを維持するだけの収益がないと倒産します。

私は久慈に行ったときにいろいろ聞いてきたのですが、普代漁協と久慈市漁協は、自営事業の定置網がどちらも1ヵ統しかないのだそうです。
それでも、購買事業、販売事業、その他で何とかやっているとのことです。
経営内容はわかりませんが、久慈の場合、市場の水揚げが多いと「ボーナス」が出るとか言って職員は喜んでいます。
この言葉の裏側には、もしかして水揚げが少ないと「ボーナスがでない」のかもしれません。
ということは、しっかりと経営をしている、と私は推測します。
ここの職員はよく仕事をします。
宮古湾漁連の市場とは比較にならないくらい残業はしますし、休みも少ないように思います。
交代で休んでいるのかもしれませんが。
一方、宮古湾漁連の職員にはボーナスがでます。
赤字でも。
この辺を考えると宮古地区の4漁協は、まだまだ余力があります。
改善する余地を久慈市漁協に見出すことができるからです。

さて、本題からそれましたが、定置網には漁協経営のものと生産組合経営のものとあります。
生産組合経営の定置網は、県内にはまだたくさんあります。
しっかり勉強していないのでわからないのですが、個人の定置網もあるのかもしれません。
例えば、鈴木元県漁連会長の定置網はどのような経営体なのか?(本当は調べてから書けばよいのですが)

鮭は言わば公の魚といっても過言ではないと思います。
個人で獲る漁法は、せっかく延縄と決められているのですから、「自分で鮭を獲って生計をたてたい!」という人は鮭延縄をすべきです。
そこから、やはり鮭を獲る定置網も、すべて漁協経営としたほうが私は良いと思います。
そうすれば、漁協の経営も安定しますし、漁民もたくさんの恩恵を受けることもできます。
国のほうから、何でも「合併」、とささやかれていますが、岩手の場合、一部を除いて、合併しなくても漁協は十分やっていける環境にあります。
合併以前に、この鮭に関する議論をすべきだと思います。

最後に延縄について一言。
鮭延縄漁業が、県の許可制に移行する前は自由漁業でした。
自由漁業とは、法律で何の制限もしていない漁業のことです。
でも厳密には、赤道以北において、10トン未満船の延縄に限ります。(この法律は今でもあります)
時代が変わり、旧ソ連の母川主義による200海里宣言で、沖合いの鮭鱒(春鮭鱒)は制限を受け、さらに秋鮭増殖事業による他県船排斥の延縄許可漁業となりました。
そのような背景の延縄漁業ですから、公の魚だからといって、この漁法をなくすことはできません。
鮭延縄漁業は、一般漁民が、唯一鮭を獲るチャンスである、として捉えるほうが、私はいいと思います。
本当に鮭を獲りたいのなら、10トン未満船を造るなり、買うなりして、鮭を獲るべきです。
(2002年11月26日)



鮭漁業

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