魚菜王国いわて

カナダの養殖場から野生のサケに広がる伝染病

この題名は「WORLD・WATCH」5/6月号の記事のもので、驚くべき記事です。
鮭資源が減っているように感じる最近ですが、もしかして、岩手で放流している鮭にも影響があるのかな?と思ったりもしますが、想像の域を出るものではありません。
しかし、無視できない記事です。
全文転載します。

カナダ西岸では魚の養殖がさかんで、ブリティッシュ・コロンビア州が合法的に輸出する最大の生産物は養殖のサケである。1995年、この地方に生息する6種の野生のサケへの影響を憂慮したブリティッシュ・コロンビア州は、新規の養殖場開設を禁止する措置をとった。しかし選挙後の新しい政府は企業優遇政策に転じ、2002年には禁止を撤回、さらに同州の養殖サケ生産高を10年間で4倍にすることを目標に養殖業の振興をはかっている。
過去数か月に提出されたサケ養殖場新設の計画は90を数える。しかし政府のプロジェクト実現を阻んでいるのが、深刻な病気と寄生虫の被害である。病気や寄生虫は養殖場内の魚と天然の魚の間で簡単に伝染する。科学者たちは、昨年、バンクーバー島沖のブロートン諸島周辺でカラフトマスの数が98%も激減したのは、養殖場の魚から寄生虫のサカナジラミが広がったためであると考えている。州でもっとも多くの養殖場が集中するこの海域には、通常約300万尾の野生のサケが回帰していたが、昨年はこれがみられなかった。その1年前には、養殖場から逃げ出した若齢のカラフトマスに致死的な数のサカナジラミが規制しているのを生物学者が発見している。
政府の科学諮問機関は、カラフトマスが回遊に出る季節には、ブロートン諸島にある27か所の養殖場をすべて閉鎖するよう勧告した。しかし、州政府はブリティッシュ・コロンビア州サケ養殖業者組合の提案にしたがって、11の養殖場に休業を命じたのみである。他の養殖業者は餌に殺虫剤を加えてサカナジラミの発生を抑えようとしている。組合長のロン・キルマリーは「野生のサケに害のないよう、責任をもって養殖場の運営にあたるべく全力をあげている」と述べている。
カナダの沿岸地方で野生のサケを捕って生活してきた先住民族の指導者たちは、この対応を疑問視している。ブロートン諸島ムスガマク・ツワテヌク部族評議会のブライアン・ワダムズは「地元はサケ養殖業者を受け入れていない。彼らは野生のカラフトマスをほぼ全滅させた上に、今回の危機的状況にあっても協力を拒んでいる」と述べた。
(「WORLD・WATCH」5/6月号p16)

私の家の船が、春鮭鱒の延縄をやめて、すでに5年以上が経っています。
日本の北洋流し網漁業や中部流し網漁業が消滅してから、かなりの年月が経っているにもかかわらず、カラフトマスの日本近海への来遊はかなり減っています(野性のカラフトマスは日本の川には回帰しません)。
今年もごく一部の北海道の春鮭鱒の延縄船が出漁しましたが、良くはなかったようです。
もしかして、これらの病気や寄生虫の影響があったのでしょうか?
最近では、さまざまな生物種の壁を乗り越えて、病気が伝染するという現象が起きはじめています。
日本の鮭が、海洋でどのような行動をとっているのかはわかりませんが、楽観視できない状況になっています。
(2003年9月14日)



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