魚菜王国いわて

食糧自給率

最初に、ちょっと前の「河北新報」から記事を転載します。

100%未満は従属
2001年7月、米国の首都ワシントンDC。ブッシュ大統領が農業者を前に熱弁を振るった。
「国民を食べさせるに足る食糧を生産できないような国を想像できようか。そんな国は国際的な圧力に従属する国になる」
米国の食糧自給率(カロリーベース)122%に対し、日本は40%。日本をはじめ諸外国を「従属」せざると得ない状況に追い込みつつ、国内では平然とこう言い放つ超大国のリーダー。演説の全文を手にした東北農政局の海野洋は「自給率100パーセント未満の国は従属関係になる、という米国の本音を垣間見た」と感じ、元フランス大統領ドゴールの言葉を思い浮かべた。
「食糧が自給できない国は真の独立国ではない」
今月14日、わずか300kgのコメが宮城県内を揺るがせた。震源地は仙台市太白区の老舗米穀店「米庄」の柳生店。店舗に、米国カリフォルニア州産アキタコマチが米国旗とともに並べられた。値段は秋田県産あきたこまちより152円安い5kg2,436円。米国生まれの「日本米」の生産コストは、日本の3分の1以下だ。

突然の黒船来襲
宮城県北の良質米産地を抱える栗っこ農協(志波姫町)の菅原章夫組合長は「とうとう恐れていたことが現実になった。価格面では相手にならず、大きな脅威だ」と突然の“黒船来襲”に天を仰ぐ。
日本の食べ物の中で、自給率トップは主食はコメだ。しかし、国民1人当たりのコメ消費量は昨年、初めて60kg(1俵)を割り込み、ピーク時(1962年)の118.3kgに比べ約半分にまで落ちこんだ。コメ消費量の減少と比例して食糧自給率も低下、今や主要先進国で最低の水準だ。
コメ消費量の拡大が自給率アップの鍵を握るとされるが、本年産米から、売れ残った分だけ翌年の生産量が減らされる国のコメ政策改革が4月にスタート。農家に追い打ちをかける。
「10年以内に食糧自給率を50%にします」。参院選を目前に控え、各党が打ち出した農業政策には威勢のいい数値目標が並ぶ。全国に27ある1人区で勝つには農民票が必要、と、まず民主党が先鞭をつけ、各党が追う展開となった。

膨大な予算必要
自民党は国の基本計画に沿い「45%を確実に実現し、将来は50%以上」、民主党は「政権交代10年後に50%、将来は60%以上」、公明党は「今後10年程度で50%」、共産党は「できるだけ早く50%達成」、社民党は「当面の目標50%」。宮城県農協中央会の大堀哲会長は「高い目標設定はありがたいが、具体的なプロセスが見えない」と農家の不満を代弁する。
東北大の両角和夫教授(農業経済学)らの試算によると、自給率を10ポイント上げるのに小麦は6,930億円、大豆は1兆80億円かかる。しかし農水省の予算は3兆円に満たない。
両角教授は訴える。「自給率を上げるためには毎年、膨大な金がかかる。日本の農業を本気で残す気があるのかどうか、国民一人ひとりの覚悟が問われている」。国家の行く末に直結する重い選択を、有権者は迫られている。
(2004年6月22日付「河北新報」2面)


さて、政治家の都合のいい選挙用公約は、この通りです。
誰も信じてないでしょう。

ここで食糧自給率のことを考えますが、それには人口も関わるのは当然の話であり、人口が減っても食糧生産が同じであれば、自給率は上昇します。
人口予測のサイトをGoogleで検索すると、トップに「人口・世帯数予測」というページが出現し、これはアトラクターズ・ラボという会社のサイトの中にあります。
その他に政府の予測のPDFファイルなどがありますが、年金制度改革で出生率のデータなどの件で信用できないことをやっていますから、民間のデータの方で考えてみたいと思います。
このサイトの「日本の総人口予測結果」によると、出生率のデータは2010年で1.2を割り込み、その後1.14で安定するようです(政府予測と違いますよね)。
日本の人口ピークは、来年2005年、それ以降は減少していきます。
平均寿命は2030年で、男が80歳、女が87歳。
私が80まで生きると仮定すれば、その時期は2040年を越えてしまうので、そこで2040年時点の人口予測といえば、1億200万人です。
しかし、その後の落ち込みがすごいのです。
20年後の2060年で7,600万人、2080年で5,200万人、2100年で3,500万人となり、明治の初期の水準になるそうです。

現在の食糧自給率は、「食料需給情報ステーション」(←リンク切れ)のサイトに行けば、「PDFファイル(平成14年のデータ)」(←リンク切れ)で公表されています。
2年くらい前に見たときは非常にわかりにくい表でしたが、改善されています。
カロリーベースで40%、金額ベースで69%。
金額ベースなんてものは参考程度の留めておくだけにして、誰が考えても食糧自給率とは、カロリーベースのことでしょう。

現在の食糧自給率40%から考えれば、単純計算で、現在の人口が40%になれば、食糧自給率は100%になります。
現在の人口の40%が5,000万人ですから、先ほどの人口予測のページから参照すれば、2080年頃には食糧自給率100%は達成されます。
ただし、食糧生産量が横ばいであったとして、です。
ウソか本当か、参議院選挙の各党の公約通り食糧生産量を上げ、現状の人口(10年後もほとんど変わりませんから)で食糧自給率を50%まで達成したとし、その生産量をず〜と持続することを条件に、現在の50%分の人口6000万人となる年代を再び逆算すれば、だいたい2070年頃に食糧自給率100%になります。

人口増は、地球上にとって困ることであり、人口減はむしろ持続可能な社会にとって好ましいこと。
ブッシュ大統領の「国民を食べさせるに足る食糧を生産できないような国を想像できようか。そんな国は国際的な圧力に従属する国になる」発言は本音です。
つまり、本当に日本を属国と思っているでしょうから、アメリカの言いなりになりたくないのなら、食糧自給率向上は、最低限の使命といっていいでしょう。
ブッシュの本音じゃなくとも、食糧を自給できる国は理想であり、それを各国が目指すことで食糧不足の問題、そして、人口問題というのは自動的に解決されます。
たぶん途中で、日本の人口予測は、現在のものより上方修正されると思いますが、それでも、今の半分の人口ぐらいにはなるかもしれません。
そして今度は、食糧自給率を向上維持するために、少なくなった人口で、どうやって食糧生産人口を維持していくかが最大の問題となるでしょう。
このように考えると、少子化問題よりも食糧生産人口の減少のほうが、ずっとずっと重要じゃないかなあ、と私は思います。
(2004年7月14日)



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