魚菜王国いわて

住民基本台帳ネットワークよりも恐いシステム

住基ネットのさまざまな議論、そして、住基ネットからの離脱などがありますが、最大の問題点となっているのが、個人情報流出、国民監視システムへの危惧です。
ハイテク国民監視システムとして有名なのがNシステムであり、警察権力による監視カメラを用いた自動車移動監視システムです。
警察権力による監視カメラは、他にオービス、駐車禁止カメラ、交差点監視カメラなどがありますが、最近は、自動車から歩行者へと、監視の目が向けられ始め、IRシステムというものが登場しました。
歌舞伎町監視カメラ、スーパー防犯灯、コンビニ防犯カメラなどが、IRシステムの試験運用されているようです。

ラジオライフ8月号(三才ブックス)で、警察の監視カメラを記事にしていて、それを紹介します。

「さて、記録された画像を利用する場合は、○○署刑事課長などの所属長が『データ活用申請書』を提出することになる。が、『録画検索簿』によると、依頼理由には『捜査』のほかに『その他』という項目も見受けられる。歌舞伎町監視カメラで撮影したデータの使用は、どうやら捜査に限定しているわけではないようだ。ウラを読めば、捜査以外の用途を前提しているということにもなる。」
「顔貌認識システムは、カメラで撮影した人間の顔から、目、耳、鼻の間隔などの位置関係や特徴を瞬時にデータ化しデータベースと照合する『人間版Nシステム』といってもいいだろう。
ここで、警察が持つ免許証データベースが活きてくる。警察庁は、『免許証データベース』として最新の顔貌情報をすでに保有している(更新時に顔写真を撮影するカメラはデジタル化されており、光ディスクでファイリング済み)。さらに、免許資格のない者を対象に、身分証明書として『ゼロ免許証』を交付する計画も、道交法の改正で実現している。
つまり、歌舞伎町監視カメラは、バイオメトリクスによる国民監視を前提としたシステムなのだ。秘密裏に導入していると断言できないものの、ソフトウェアの変更で、いつでも変身可能ということである。無差別に大量撮影したところで、全国民を網羅した顔貌データベースとマッチングできなければ、『大量のデータストック』も宝の持ち腐れになってしまう。」
(「ラジオライフ」2002年8月号)

「今の社会ではプライバシーなんて無いも同様」。

そう捉えたほうが、私は正しいと思います。
国民の防犯のためと銘打って、これらの監視システムが出来上がったのですから、プライバシーが犠牲になってもしかたがないでしょう。
権力というのは、この国民の安全とか、人権とかを、上手に活用するものです。
ここでもやはり、国家がどこまで国民に干渉するのか、ということが争点になります。
経済政策にしろ、国防政策(ここでは防犯も含む事にします)にしろ、ごっちゃに語られ、さらに、国会では、これらが、政党間の取引に使われますから、手に負えません。
ここで、少しは、「小さな政府」が見直されてもいいような気がしますが。

また、バイオメトリクスの技術は、コピー技術との競争です。
さまざまな認証システム開発の一つの技術ですが、コンピューターを使ったコピー技術から単純なコピー技術まで、盲点が危惧されています。
コピー技術は、いわば、ゲリラ技術です。
学生時代をすごした人なら、一度はカンニングした経験があると思います。
善し悪しは別にして、あれも、ローテクなゲリラ技術(今はハイテクなのかなあ?)です。
そう、監視システム、認証システムをいくら開発して作っても、次から次へとゲリラ的に破るのが世の常であり、それも科学であると言えるでしょう。
さらに、国民に与えたその信用度、安心度を利用して、システムを悪用し、裏で笑っている者も出てきます。
それなら、ネット社会でいうハッカー(クラッカーじゃなく)のいたずらやジョークは、なくてはならないものです(意味わかるかなあ? わざと突破して、システム管理者をバカにする。この場合、バカにされるほうに落ち度がある)。
つまり、私は、ゲリラを必要悪(悪かどうかは意見の分かれるところ)だと思います。

で、最後に、2題、引用します。
人権主義者の喜ぶ内容です。
人権主義者でなくても、当然といえる内容ですが。

「本システム(IRシステム:hajime注)において最も注目すべきは、防犯目的というタテマエがあるにしろ、警察が往来を歩く人間の監視を目的にした”定点観測カメラ”の設置を、堂々と謳い始めたところにあるのだ。
東京都公安委員会による『街頭防犯カメラシステムに関する規定』と、警視庁副総監通達の『街頭防犯カメラシステム運用要綱』が明文化されているが、これは単なる内部規定。設置の根拠というわけではなく、運用のガイドラインに過ぎない。
むしろ、『いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない』(警察法第1章第2条)に抵触している疑いすら指摘できる。さらに、大阪府警が大阪市西成区の『あいりん地区』に設置した15台の防犯カメラのうち、特定の建造物を監視する1台について、1998年に最高裁がプライバシーの侵害を理由に撤去を命じた、という判例もある。
元祖警察監視カメラといえる『オービス』が導入された当時に肖像権問題が争われた際、最高裁が『事前に告知する事』(”自動速度取締機設置路線”などの看板)、『まさに犯罪が行われている証拠として撮影』の2点を挙げ、オービスに合憲判決を下した。
再び『街頭防犯カメラシステム運用要綱』に目を落とすと、『当該防犯カメラ設置場所を管轄する警察署長は、設置区域に通じる道路の見やすい場所に、別図に示す<カメラシステム設置板>を必要枚数設置するものとする』とある。そこで、歌舞伎町を歩いて実際に数えてみたのだが、設置板は21か所しかなかった(カメラは50台:hajime注)。仮に、1カメラ1設置板と考えても半分以上が『予告なき撮影』となり、通達の原則はスタート時より崩壊している。」

「2001年10月25日、警察監視カメラのニューカマー『スーパー防犯灯』(正式名称:街頭緊急通報システム)が大阪府東大阪市でデビュー。そして今春には、北は北海道岩見沢市から、宮城県古川市・山形県鶴岡市・東京都世田谷区祖師谷・同江戸川区清新町・同墨田区墨田・同杉並区浜田山・新潟県上越市・静岡県静岡市・富山県富山市・大阪府大阪市平野区・同豊中市・香川県善通寺市・同坂出市・・・そして南は沖縄県那覇市まで、全国10都道府県の指定モデル地区で試験運用がスタートしている。
警察庁が公表しているスーパー防犯灯の業績指標には、『街頭緊急通報システム設置地域における路上犯罪(道路上で発生した強盗、強姦、強制わいせつ、略奪誘拐及びひったくり)の発生件数を減少させる』とある。しかし、実際には『府警が(東大阪市)布施地区のスーパー防犯灯からの通報受理件数を調べたところ、思わぬ結果が出た。昨年10月から3月までの通報183件のうち、ひったくりやけんかなど、実際に起きた事件の通報は4件だけ。(中略)記録された画像からみると、酔っ払いや少年らが、おもしろがってボタンと押しているケースが多いという』(毎日新聞・4月8日夕刊)。ハイテクな防犯装置ではなく、古典的なイタズラ”ピンポンダッシュ”のエジキになっているという有り様なのだ。
しかし、警察がスーパー防犯灯を設置した本当の目的は・・・。そう解説した歌舞伎町監視カメラと同様、である。」
(前掲書)

以上、歩行者を対象にした監視カメラシステムの現状を紹介しましたが、自動車を対象としたNシステムも増殖を続けています。
正式名称は、「自動ナンバー記録システム」で、全国約700か所を数えるほどになりました。
これを、先の監視カメラを利用した「歩行者監視システム」と併用すれば、いわば「国民移動監視システム」となり、完全に、個人の行動が掌握できます。
私自身は別にプライバシーを気にしないし、仮に普段の素行で恥をかいても、失うものもないので気にしませんが、これを気にする人が、権力者だったりするなら、大変なことになります。
それをネタに脅されたり、利用されたりしますから。

このように、住基ネット以前に、もっと深刻な問題があったわけです。
住基ネットなんて、かわいいもの。
個人情報なんて、とっくの昔に流出しまくってますよ。
今さら・・・。

それよりも監視システムのほうが恐いを思いませんか?
(2002年8月15日)



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