魚菜王国いわて

大ショック「噂の真相」有罪!

3月21日、東京地裁は、「噂の真相」岡留安則編集長に、懲役8ヶ月(執行猶予2年)の判決を言い渡した。
名誉毀損裁判である。
「噂の真相」側は、当日控訴している。
社民党の辻元代議士の疑惑浮上で、ほとんどテレビでは報じられなかったが、私たちにとって、この判決のほうが重大である。
さかのぼれば、1993年6月号の西川りゅうじん氏の記事、1994年1月号の和久俊三氏の記事で、両者は名誉毀損の民事と刑事の両方を提訴している。
そして、1995年6月13日、東京地検特捜部が名誉毀損による公訴を「噂の真相」に提起した。
翌日、西川氏に対しての裁判所の勧告による和解交渉が入っていたにもかかわらず、である。
その後、結局、西川氏とは和解、刑事告訴も取り下げられたが、西川氏の公訴分は棄却されず、そのまま裁判は進行する。

このあたりの経過は非常に変であり、東京地検特捜部の、ある1名の逆恨みによるものだと言われている。
「噂の真相」は、東京地検特捜部批判をずっとやっており、宗像紀夫特捜部長は、以前から「噂の真相」に悪感情をもっていた。
福島の政商、故・小針暦ニ氏に「リンゴ箱を送られた」とい親密な関係を書かれたことに対し、個人的な私怨で捜査した、ということらしい。
雑誌メディアに対する名誉毀損で、特捜部が動いたのは、過去に例がほとんどない。
また、アメリカ、ヨーロッパでもこのような事例はないらしい。
その後、宗像紀夫は、パチンコメーカー「平和」の接待旅行「ベトナム旅行」を暴かれ、さらに何度も逮捕暦のある「乗っ取り屋」佐藤英昭弁理士との親密な関係も暴露され、宗像自身も、このことで事情聴取されている。

裁判のほうも、検察側は、1997年11月以降、一切の立証を放棄している。
検察側は、「噂の真相」記事の「虚偽の事実を立証する」と明言してきたのであるが。
裁判のレポートは、「噂の真相」を参照されたし。
控訴していけば最高裁まで争われる可能性もある。
恐らくではあるが、この裁判の詳細は、別冊または他社から単行本が発行されるかもしれない。
それだけ、おかしな裁判といわざるを得ない。

裁判中の証言で、西川氏が、岡留編集長に何度も反省の弁を述べている、ということが明らかになっている。
この裁判が有罪になるということは、言論界にとって、権力による「言論の自由に対する侵害」であり、非常にマイナスとなる。
背景を考えると、マスメディアの「権力批判」すら、怪しくなる。

次期検事総長が噂されていた則定衛高検検事長のスキャンダルは、「噂の真相」の記事が発端であり、その後、則定検事長は辞めざるを得なくなった。
その後も検察批判は続き、加納駿亮大阪地検検事正が公金から裏金を捻出し、個人的な飲食費や遊興費に使っていた、という事実も記事にしている。
これらのスキャンダルを本来、「噂の真相」以外の雑誌も書くべきなのだが、さまざまな事情から書けなくなっている、というより、各雑誌が放棄した、と表現したほうがいいのかもしれない。
「噂の真相」はあと2年で休刊予定で、休刊反対運動(?)まで起きている。
それだけ権力批判できる雑誌が限られているからだ。

西川氏、和久氏は、ともに言論界では有名な方々であり、名誉毀損で争う場合、なぜ、刑事告訴もしたのか非常に変だ。
言論人なら言論人らしく、他の雑誌などで、反論掲載しても良かっただろうし、民事だけでも良かっただろう。
どうして、お役人たちに頼ったのか、疑問である。
このように、言論の自由に対する権力の介入を許すことは、最後には、自分たちの表現の自由をも放棄せざるを得ない結果を招きかねない。
これらのことを考えて、西川氏は、岡留編集長に対して謝罪したのかもしれない。

今回の名誉毀損刑事裁判より、マスメディアによるもっと悪質な人権侵害事件はたくさんある。
代表的なものとして松本サリン事件をあげるが、河野義行さんは犯人扱いされ、報道被害をものすごく受けた。
それでも、検察庁は告訴していない。
また、神戸連続児童連続殺傷事件で、「フォーカス」が少年の顔写真を掲載したが、明らかな少年法違反でも新潮社に対して刑事告訴はしていない。
それを裏付けるように、裁判の中で、元共同通信社記者であった浅野健一同志社大学教授は、「表現の自由に関わるものについては、刑法上の規定があるのは知っているが、やるべきではない」と述べている。
なのに、なぜ「噂の真相」が?
やはり特捜部による何らかの恣意性があったとしか、言いようがない。

権力者のプライバシーでさえその暴露は良くない、とはよく言われるが、権力にあるもののスキャンダル(例えば愛人の暴露とか)をとりわけ「噂の真相」は記事にしてきた。
権力者とすればやはり、その記事にされた行為自体を、恥ずかしいと認識するから、あるいは、権力にとって不利になるから、必死になってその記事のもみ消し工作に走るのである。
森前首相の買春犯暦が事実であるにも関わらず、結局隠した。
この事実も「噂の真相」が暴露したにもかかわらず、新聞・テレビで公になることはなかった。
逆に、森側はさまざまな圧力を「噂の真相」に加えている。
一方、クリントン元大統領の同様の事件では、元大統領側は偽証などで抵抗したが、結局モニカ事件を受け入れている。
あとは、それを国民がどう考えるかである。
それを、別に何とも思わないと言う人もいるだろうし、大統領にふさわしくない、と思う人もいるだろう。
スキャンダルが権力(公人)にとって不利と考えるなら、少なくとも、権力(公人)側は、自らを陥れるような私生活はすべきでない。
したがって、スキャンダルを暴露するメディアが悪いのではないのである。

このような視点からみると、今回の刑事告訴は、思慮のないものと言える。
そして、有罪判決をした裁判所の判断は、良識があるとは思えない。
(2002年3月23日)



噂の真相関連へ

トップへ