魚菜王国いわて

携帯電話と放送

今日は、あと休刊まで5冊と迫った「噂の真相」11月号の紹介です。
メインの特集記事は面白いものが4つほどあるんですが、今回は紹介しません。
買って読んでください。
まずは、中森昭夫さんという方の「月刊ナカモリ効果」というコラムの紹介で、題名は「携帯電話という宗教」。
この方の見方は変わっていて、なるほど、と思うことが何度もあります。
それでは、中森ワールドの一部紹介です。

前から考えてたんだけど、NTTという会社はつくづく宗教法人だと思う。もともと電電公社なわけだけど、民営化してNTTドコモと分社化され、さらにその傾向は強くなった。この会社が何を売っているかと言えば「コミュニケーションを売っている」のだから、"宗教"だと思うのだ。
家庭や会社に電話があった時代はまだいい。これが携帯電話となって一人に一台、電話が普及した時点で宗教は完結したように思う。携帯電話は人間関係の仕組みを劇的に変質させた。これはどんな宗教家や政治家、国家官僚にも叶わなかったことだ。
ことの重大さにもっと早く気づくべきだったのだろう。「出会い系」の事件など起こるべくして起こっていると言える。携帯電話という宗教機械の洗脳力、危険性を考えれば、少なくとも18歳未満の使用は厳禁、18歳以上は自動車教習所程度の訓練を課して免許制にすべきだ、と進言したい。
NTTの上層部が「出会い系」の出現を予測できなかったとは言わせない。伝言ダイヤルやダイヤルQ2でさんざん経験済みのはずだ。
(以下省略)
(「噂の真相」2003年11月号p58)

このコーナーはまあ、半分茶化したコラムですが、しかし、ハッと考えてしまうことも、ままあります。
真面目な話、携帯電話は出力が小さいにしろ、電波を飛ばしますから、厳密に言えば、免許が必要で電波利用料も徴収されるほずなんですが、微弱電波のためなんでしょうか、それとも電話の延長という考えなんでしょうか、免許は要りません。
このほかにも、電波を出力しても免許を要らないものはあり、特定小電力トランシーバー、パーソナル無線などがそうです。(パーソナル無線の場合は、無線局の開設ということで、しっかり電波利用料を徴収されます。)
これほど携帯電話の負の部分、例えば中森さんの指摘のほかに、周りに迷惑になるような使い方や運転中の電話などを見れば、ホント免許制にしてもいいような気もします。
私なんか家にいる時は、部屋に置き忘れています。
旅に出ればどうしても使いますが、家では固定電話で十分過ぎ。
ゆえ、家にいる時は携帯電話料金なんて基本料金に限りなく近い(笑)。

それにしても、携帯電話の電波って、強力な気がします。
基地局との距離を見ても数キロ離れてますし、海からだと10マイル(だいたい18キロ)は届きます。
これじゃあ、電波が弱いとは言えないなあ。
しかも携帯電話は常に基地局と交信していますから、空間は電波だらけ。
あ〜あ、何か自分の体を電波が突き抜けたり反射していることを考えると、怖い感じもします。
と要らぬ心配もしたりして。

前にも「メディア異人列伝」を取り上げましたが、再び取り上げます。
今回は田中良紹さんで、この方は、以前CS放送スカパーで放送していた「国会TV」の社長さんです。
「国会TV」は、以前、スカパーのパックセットに含まれていて、例えば12チャンネルで1,900円とかいう具合のセットで、その12チャンネルを好きな構成で選んだりしたものです。
全チャンネルパックもあり、そのおかげで視聴数とは関係なく、収入があったわけです。
ところが、このパック制からほとんどバラ売りの自由選択制に変わり、今もパックセットはあるんですが、「国会TV]ははずされました。
それゆえ、今度は一転赤字となり、問答無用の電波停止。
「当たり前の話じゃないか!」と言われそうですが、実はそうじゃないんです。
私もこれ読むまでは「当たり前の話じゃないか!」と思ってました。
さて、それを示す部分を引用します。

「ケーブルテレビや衛星放送は多チャンネルです。世界中どこでもそうだけど、多チャンネルはばら売りしては成り立たない。従来型のテレビでは絶対にやらないような、つまり視聴率を取れなくてもいいような番組がそこに組み込まれているからこそ、多チャンネルは成立が可能なんです」
このロジックは少し難しい。田中によると、それは放送というもの本来のありかたから導き出されることだという。
「映画やビデオは売れるものをつくって売る。でも放送の世界は違うんです。売れるものを売るのではない。電波は国民の共有財産であり、電波を使って何かを伝えることが放送です。国民にとって必要なものを流す。国民がみんなで『これが放送だ』と認めたものだけが放送です」
だから総務省の役人が許認可権を握っているような日本の電波行政はおかしい、そんなことをやっているのは発展途上国か独裁国家しかない、と田中はいう。
民放地上波は視聴率を追求してばかりいるように見えるが、しかし民放もまたまとめ売りの世界である。
「もしも仮にすべての番組が独立採算になったら、報道番組なんてほとんど消えますよ」
91年までTBSの社員だった田中がこう断言するのだから本当だろう。
(以下省略)
(前掲書p80)

本当はもっと載せたいのですが、買って読んでください。
このほか、電波利権の構造も書いてまし、新聞が凋落した理由も書いてます。
放送とはこういうものだったんですね。
NHKの場合、すべてまとめ売りの強制版で、民放は強制がつかないスポンサー命令型のまとめ売り。
放送の基本はまとめ売りなんですね。
確かにNHKなんかは、見ない番組のほうが多い。
私は、まとめ売りもしてほしくない。
だってあまりテレビ見ませんもの(笑)。

以前マジメにCS放送を視聴していた頃、「国会TV]を一度パックセットで選択したことがあるんですが、見なかったため結局はずしました。
今になって、この行為を後悔しています。
といっても、パックもバラもすべて解約したので、同じことですけど、それでももったいない。
現在、この「国会TV」は、インターネットで配信しているそうです。

「噂の真相」には、薦めたいコラムが他に3つあります。
前出、佐高信さんの「筆刀両断」、大槻義彦さんの「反オカルト講座」、小田嶋隆さんの「無資本主義商品論」。
そのほかにもありますし、小さいコラムでは中村正三郎さんの「ホットリンク」。
また、コラム集のメディア最前線も必読です。
この1冊で、違った視点の筆者が勢ぞろいしていますから、ぜひ読んでほしいです。
(2003年10月15日)



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