魚菜王国いわて

情報の真偽

「WORLD・WATCH」7/8月号より、アメリカ市民の悲劇を紹介します。
情報過多の時代で、情報の真偽を判断する前に、情報を浴びせ続けられる悲劇が、ブッシュの起こした戦争で明らかにされました。
「ブッシュが演出した『大量破壊兵器』」というコラムから一部引用します。

アメリカがイラク攻撃を開始して間もなく、わずか25%ほどのアメリカ人しか、その攻撃に反対していないことが世論調査で分かった。空中で破裂する爆弾、バクダッドへ向かって突進する戦車など、ひとたび攻撃が始まると、アメリカ人の反対はさらに小さくなった。
しかし、世論調査が行われたその他多くの国では、90%を超える人々が、イラク侵略に反対していた。イスラム教が主流であろうと、キリスト教が主流であろうと、あるいは豊かな国であろうと貧しい国であろうと、大多数が反対していることは、アメリカ以外では、ほぼ世界共通である。政府が取っている立場など全く気にせず、「協力的な同盟国」であるイギリスやスペインの国民でさえも圧倒的に反対しているように、ブッシュ大統領の「協力的な同盟国」であるかないかなど関係ないのだ。
それなら、報道の自由があり、おそらくアメリカ人と同じ情報にアクセスできる世界中の国々においてさえも、人々の認識とどうしてそれほど違ったのだろうか。
1つには、人々がアクセスできる情報と、実際に人々が浴びる情報とが同じでないということが挙げられる。アメリカのマスコミは、第二次世界大戦やベトナム戦争、第一次湾岸戦争時よりも、現在の方がはるかに多く、市民はどこでも情報を浴びせられている。何千万もの人々のテレビやラジオ、インターネットは常時オンのままだ。
(中略)
もちろん、繰り返し行うことは広告や宣伝の基本原理の1つである。反復は真実が「真実」であろうとなかろうと、それをあたかも「真実」らしくしてしまう。
(以上、「WORLD・WATCH」2003年7/8月号p4)
おおかたは独自の意見もなく、ブッシュ政権が多大に費用をかけた情報操作によって、ほぼ一語一語復唱していることにすら気付いていないようだ。テレビで耳にしたキャッチフレーズを繰り返すときには、自分の考えをいっているように錯覚し、これが「言論の自由」だと思っているようである。実は、彼らはイラク攻撃を支持した約75%とほぼ同じ人だと確信している。メディア総動員といった大統領の「大量破壊兵器」警告によって、自国の歴史に残る偽善的軍事攻撃と残虐行為に対する嫌悪をうまうまと忘れさせられた人々だ。戦争をテーマにしたテレビゲーム、暴力行為をむやみに盛り込んだ映画、そして愛国心の高揚などの一連の動きの増幅と共に、大統領の連発する警告は、社会科学者アンソニー・ジャッジが「大量破壊兵器」と呼ぶ、圧倒的な強力な兵器になっていたのである。
(以上、前掲書p8)

真偽の問われなかった情報を、アメリカ人は合衆国政府から浴びせられ、それが各国へ伝わり、世界中を揺るがす最強の「兵器」となったと、論じているものです。

ネット社会でも、情報があまりに氾濫していて、どれが本当の情報なのか、わからなくなります。
掲示板の書き込みもそうですし、有名な知識人の言論もそうです。
その辺をうまく判断していかなければなりませんね。
情報が多くなったから良い時代かと思えば、そうでなく、逆に難しい時代です。

さて、このイラク戦争に関連して、イラクの代名詞といえば、化学兵器。
その化学兵器について、「WORLD・WATCH」誌は、おもしろい比較をやっています。
毎号「MATTERS OF SCALE」が載りますが、今回の題名は、「さまざまな化学兵器戦争」です。
では、その比較の一部を紹介します。

★飲料水に含まれる過塩素酸塩(ロケットとミサイルの燃料の主原料)の耐容1日摂取量・・・・体重1キロあたり0.3マイクログラム
★軍需産業の垂れ流しや投棄によって汚染された灌漑用水を使った、カリフォルニア州産の葉菜で検出された過塩素酸塩・・・・作物1キロあたり4,490マイクログラム

★2003年のイラク侵略以前にイラク国内にあったとされる化学兵器の総重量(アメリカ科学者連盟の予測による)・・・・3,850トン
★地球に広く存在するもっとも危険な農薬6種の総重量・・・・7,000,000トン

★2003年のアメリカのイラク侵略以前の6年間にイラクの化学兵器が原因で死亡した人の数・・・・0人
★同じ6年間に農薬が原因で死亡した人の数(WHOの推定による)・・・・1,000,000人以上
(前掲書p46)

さまざまな汚染物質と比較すれば、イラクの化学兵器なんて微々たるものであり、政府の「宣伝活動」で、いかに誇大に伝えられているかがわかります。
前にも書きましたが、恐怖を煽るのは簡単ですね。

今日の題名からちょっとはずれますが、同じ号で、タバコ栽培のことを書いてました。
本県のタバコ産業は重要な産業ですが、しかし、私は?といえば、タバコ大嫌い人間で、常日頃、喫煙者を非難しています。
そのタバコ産業の転換について記事にしたものが、この号にありました。
タバコ栽培の現場はひどく、それから、有機農業への転換した物語が書かれてあります。
題名は、「タバコ栽培から健康な有機野菜へ」です。
その悲惨な現場を記す文章を紹介します。

「以前は病気になりやすかった。タバコに噴霧する薬品をよほど慎重に扱わないと熱は出るし、肌はヒリヒリして、吐き気もあった」と、アスキンズはいった。彼が特に用心していたのはフルメトラリンだった。これは植物の生長を阻害する除草剤で、プライム・プラスの商品名で売られている。農民たちは春に、タバコの根元に出てくる吸枝を抑制するためにこれを使用している。「プライムを使うといつも微熱が出た。肌はかゆくてヒリヒリした」。
この除草剤は環境にも影響を及ぼしたかもしれない。「今ではウシガエルやヒキガエルの鳴き声を聞かなくなった。小川や川を薬品で汚してしまったからだろう」。彼はまた、刈り入れ時期の葉タバコに手でさわることからくる、ニコチン中毒の症状についても語った。突然の吐き気、めまい、頭痛などが起きるという。他の農民たちも、少なくとも3代前からのタバコ農家だが、彼の言葉に一様にうなずいた。
(前掲書p39)

タバコを吸うのは百害あって一利なしですが、タバコを作る側も、健康を害しているんですね。
これでも、なくてはならない産業なんでしょうか?
どうなんでしょう?
(2003年10月12日)



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