魚菜王国いわて

適性とネイティビズム

大事故が起こるには・・・・
JR西日本の脱線事故の原因が、いろいろと語られています。
トップ3人が引責辞任し、事故の大元の原因は、最終的には、JR西日本の安全管理に問題があったということに落ち着きそうです。
大事故というのは、その原因は一つではなく、いくつもの要因が重なり合って起こるものなのでしょう。
私などは船で海上を航海し、例えば、海面に見るか見えないかという漂流物に衝突したりするわけですが(一度だけあります。流木でその時はプロベラを曲げました)、万が一浸水しても、船倉ごとに仕切ってありますし、移動ポンプなどを積んでいますから、重大なことにはなりません。
運悪くエンジンルームに穴が開き、浸水すれば、致命傷になり得ますが、それでも無線設備、衛星電話で連絡をとり、救命ボートなでの設備で、命は助かるものです。
しかし浸水が早ければ、バッテリーが水没し、無線設備などの電源が使えなくなります。
その上、救命ボートの整備不良、検査不良があれば、これこそ致命傷で、まず命はないものと思って間違いありません。
このように、様々な要因がいくつも重なって、致命的な事故となるわけです(大規模な衝突事故は、その時点で終わり。しかし、そうなる前にも、様々な要因が重なり合っていることを考えてください。これは今回の鉄道事故と同じと考えていいと思います)。

今回の鉄道事故の原因の中でも、私は運転士の適性というものに、今回注目します。
事故を起こした運転士は、それ以前から、その兆候みたいなものがあった、とか報道されていますが、それはJR西日本側からの報告でしょう。
まるで運転士一人に責任を押し付けようという魂胆が何となく感じられるような気がします。
これを逆に捉えれば、運転士が事故を起こしそうな状態であったことを、JR西日本が見抜けなかった、あるいは見過ごした、見てみぬフリをした、ということになります。
オーバーラン常習犯ならば、どうして運転士としての適性がない、と判断し、別の部署に移動しなかったのか?
結局、JR西日本という会社の人事部門も悪い。

適性
リーズニングについて」の中で、私はネイティビズムを紹介しました。
適性とは、ネイティビズムからの観点から生まれたもの、あるいは導かれたものであるといえます。
どんな人にも、職業や学問、趣味(?)に対する適性というものがあり、社会に出た時点(社会に出る前からもわかるかもしれない)で、その適性は、ほとんどはっきりするのではないでしょうか。
いわゆるダメ社員は、社内でたらい回しにされ、適性がなければクビになり、あるいは自覚して自ら辞める。
個性(個人差)があるから、適性というものも存在するわけで、そのために人事というものがある。
このようにして、いろんな人が自分の適性にあった職場へと移動して、案外うまくいっているんだと思います(「比較優位の原則」の一端もここにある)。
このようなことを書くと「冷たいやつだ」とか言う人がよくいるんですが、私は逆に適性を無視し、今回のような事故を生み出すことのほうがずっとおかしいと思います。
それに社内のあのたらい回し人事こそ、陰険なやり方です。
そんなことをするよりも、「あなたには適性がないから、辞めたほうがあなたのためにもいい」とはっきり言うほうがずっといいではないですか!

私の幼馴染の弟が、どうしようもないくらいダメなヤツでした。
どこに就職しても、2ヶ月か3ヶ月で辞めてしまい、もっても半年。
何度就職したのか!
実は私の船にもイサダ漁の時に乗りまして、1ヶ月ぐらいでやはり辞めました(来なくなるんです)。
そのような状態が30歳ぐらいまで続き、地元の人たちは、「これはこれは・・・・」と嘆いていたものです(でも嘆かれるのはまだ幸せなんですよね。人が良かったからですが)。
何と、そのダメ人間が、ある運送会社に就職したら、そこに適性があった。
今や運送会社といっても、いろんな販売セールスもやらなければならないらしく、そこにも適性があったんですね。
その会社の人に彼のことを聞いたら、「彼はもうやる気満々で、すごいです」と!
私はそれを聞いた時、うれしくなってしまいました。
こんなこともあるんですね。

医者にも適性がある
ここでちょっと本の紹介をしたいと思います。
小野寺時夫(うれしいことに岩手県出身)さんの「新 治る医療、殺される医療」という本です。
2001年に発行された本ですが、この中味がなかなか唖然とさせられる内容で、この中にもネイティビズムに関わることが書かれています。
必ず、どこの大病院にも“ダメ医者”は存在すると。
医者って、ダメ医者でも誰も辞めませんよね。
医師免許取り消しなんてものも、ほとんどなし。
何と驚いたことに、大勢の正常な子宮を切り取っていて問題となり、廃院したあの「富士見産婦人科」の医者が、別の地域で新たに開業し、流行り続けているというのです。
ウン、医者になるべきだ!
と変な皮肉を書きましたが、今度は私にも切羽詰った問題が・・・・。
引用します。

公的・準公的病院は、一旦就職すると、ダメ医者でも首になることはなく、こういう医者がどこの病院にも何人かは必ずいるものである。(「新 治る医療、殺される医療」p95)

私が入院手術したのは県立病院ですから、私を切ったり診たりした先生はどうだったんだろうか?
そんなわけで、頭の優秀な医者の世界でも、ダメ医者がいるのです。
つまり医者として適性のない人が、県立病院、個人病院、開業医にもいるということです。

ちょっと適性の話から離れますが、開業医でも良い医者というのは、儲からないんだそうです。
良い医者は、余分な薬はくれないし、余分な検査もしない。
しかし、検査機器は非常に高い(CTやMRIって、一日中フル稼働しなければ元が取れないんだそうです。これじゃあ、県立病院が赤字ってのは頷けます)。
岩手の所得番付はほとんど開業医!
これをどう見たらいいんでしょう?
その他、医者が何で儲けるか、その辺のところもいろいろと書かれています。
こんな薬漬け、検査漬けの国は、世界でも日本が突出しているとのこと(世界の血漿製剤の30%は日本が使用!)。

県内では、相変わらず診療報酬の不正請求をしている医者もいるようです。

http://www.iwate-np.co.jp/news/y2005/m05/d19/NippoNews_20.html岩手日報

不正をしてまでも金儲けをしたい遺伝子を持った医者もいるわけで、つまり、金儲けならなんでもありの人間が、医者の世界にも当然のごとく分布しているということですね。


ネイティビズムは人事の基本
このように、どんな社会にも、ダメ人間、すなわち、適性のない人が存在するのは、これは仕方がない、と考えるべきで、しかし、ただ仕方がないでは済まされません。
ネイティビズムを、仕方がないというふうにだけ利用すべきではない。
どこにでも適性のない人が存在する以上、それらの人々を別の社会へと移動させることこそが、重要なのだとすべきなのです。
各会社、官公庁には、人事部門が必ずありますから、彼らは、ネイティビズムの立場にたって、しっかり各職員の適性をみて、人事異動をする方がいいでしょう。
いや、人事異動をして、適性を試しているのかな?
ただの好き嫌いで、人事異動をしているんじゃないでしょうね!
ん〜ん、どうかなあ?



他人事だけを書いてきましたが、私は漁師としての適性があるかどうか?と問われれば、体格面では、まったく適性ナシです。
ところが、要領の良さがそれを補っているわけで、その“まったく”の部分を少し打ち消しています。
もし、漁師がこの世の中に余るくらいいれば、私はあぶれ者で、オカに就職していたと思います。
誰も採用してくれないって?
じゃあ、どこかいいところへお婿さんになって、主夫でもします(笑)。
(2005年5月21日)



トップへ