0. プルトニウムの出現




 プルトニウムという物質は、天然にはほとんど存在しない。したがって、人工元素と言っても差し支えないだろう。そして、それは、核発電の原子炉内で生成されるものが、ほとんどを占める。ここで、元素周期表(「Wikipedia」)を見てみよう。原子番号92のウランより重い元素、すなわち、原子番号93のネプツニウム以降の元素を、超ウラン元素というが、これらがすべて、人工元素なのだ。ネプツニウムの次、原子番号94こそが、あらゆる問題を引き起こすプルトニウムである。

 1941年2月23日、カリフォルニア州バークレーで、グレン・T・シーボーグ、エドウィン・M・マクミラン、J・W・ケネディー、およびA・C・ワールによって作り出された。原子番号94ウランは天王星(Uranus)から、原子番号95ネプツニウムは海王星(Neptune)から命名され、原子番号96のプルトニウムは、その外側の冥王星(Pluto)から名付けられた(参照1)。
 その後、戦時下、アメリカで極秘に研究され、1945年8月9日、長崎で、大量殺人という成果をあげている。
 最初のプルトニウムの誕生は、正確には、天然原子炉にて、である(参照2)。

 進化の過程で、人間は、プルトニウムと出会うことはなかった。したがって、突然出現したこの重金属は、人体にとって全く不要な物質であり、毒でしかない。
 プルトニウムは、重金属特有の化学的毒性と放射性毒性をあわせ持つ。化学的毒性は他の重金属とほとんど変わず、放射性毒性はα粒子(α線)によるものである。プルトニウムの引き起こすガンとしては、肺ガンが有名であるが、その長い生物学的半減期の影響で、他のガンも引き起こす。特に骨に沈着した場合、体外へ排出されることはなく、免疫系を攻撃し、骨ガンを発生する。(参照3)

 プルトニウムの出現は、要らぬ技術的好奇心をくすぐった。プルトニウムは、世界覇権を目指す国、あるいは、それに敵対する国にとって、重要な原爆の材料となる。が、あまりに節操なく原爆を作りすぎ、余ってしまった。

 日本のある一部の技術信仰者たちも、プルトニウムに好奇心をおぼえ、その落ち着き先が核燃料リサイクルである。ウランを核燃料とする日本の商業炉はすべて軽水炉である(参照4)。プルトニウムは、その軽水炉の中でも1%程度生成されるが、それをリサイクルし、プルサーマルに利用するらしい(参照5)。しかし、ほとんどメリットがない。そもそも、プルトニウムが発生するということは、他の放射性物質も同時に発生するということだ。それを核分裂生成物というが、核燃料リサイクルにより濃縮され、一部は自然界へ投棄される。このリサイクルは、核推進者らの自己満足を満たすものでしかなく、都合のよい責任逃れの装置なのである。

 プルトニウムの有効利用は、今のところ、プルトニウム電池(参照6)だけであり、たとえそれが無くても、人間の寿命が短縮することはないのである。




参照
 1. 「プルトニウム - Wikipedia」歴史(「Wikipedia」)
 2. 「天然原子炉(オクロ原子炉)」(「原子力百科事典ATOMICA」)
 3. 「プルトニウム2.プルトニウムの毒性(「史 跡 探 訪」)
 4. 「軽水炉 - Wikipedia」(「Wikipedia」)、
 5. .「プルサーマル」(「電気事業連合会」)
 6. 「核燃料以外のプルトニウムの利用」(「あとみん」←閉鎖につきリンク切れ)




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