1-2. エネルギーペイバックタイムについて




 太陽光発電の性能を表す指標の一つに、エネルギーペイバックタイム(EPT)というのがある。これは、太陽光発電システムを製造するにあたって投入されたエネルギーを、産出したエネルギーが上回るのに必要な時間のことである。エネルギー産出比と似通った指標であるが、実は、簡単な計算式で、その関係を表現できる。

 太陽光発電システムの耐用年数をY、EPTをTとすれば、

 エネルギー産出比 = Y ÷ T

となる。

 一般に、太陽光発電のEPTは、1年から3年とされる(参照1)。耐用年数はゆうに20年を超えるとされ、そこから、EPTを2年、耐用年数を20年として計算すると、エネルギー産出比は10となる。したがって、石油火力発電の総合的なエネルギー産出比が3.5程度であることと比較すれば(参照2)、素晴らしいエネルギーシステムということになる。
 太陽光発電のEPT、と書いたが、実際は、太陽電池そのもののEPTであるようだ。そこで、発電システムとしてのEPTを5年と見積もり(参照3)、耐用年数を20年として計算すると、エネルギー産出比は4である。それでも、十分なエネルギーシステムである。

 現在、EPTという指標は、太陽光発電だけに用いられているわけではないようだ。NEDOでは、デンマークにおける95kW風車6基設置例で計算しており、そのEPTは0.274年、すなわち3.3ヶ月(参照4)。そのデータ上での耐用年数は20年であるから、エネルギー産出比は72.99となり、超すばらしいエネルギーシステムであることがわかる。自然エネルギーとしての地位もあり、素晴らしいの一言に尽きる。風力は、太陽活動と地球の自転から生まれるものであるから、半分は太陽エネルギーによるものであることを付け加えておく。
 参照したページに、「廃棄は含まない 」とただし書きがあるところをみると、どうやら廃棄に消費されるエネルギーが計算されていないようだ。EPTという指標は、できればそのシステムの廃棄まで考慮に入れてほしいものである。そうすれば、本当の意味で、上記の式(エネルギー産出比=Y÷T)が適用できるし、核発電との比較も容易になる。

 エネルギーペイバックタイム(EPT)と同じ考えに基づく、CO2ペイバックタイム、コストペイバックタイムという指標もある。これについて、次のようなおもしろい表現をしている研究者がいる。

 「コストとCO2は回収済みだが、エネルギーは未回収」、そんな情報がエネルギーシステムの更新判断や価値判断にもたらす意味は決して小さくはない。
参照5)

これは、バックエンド消費エネルギー未定の核燃料リサイクルそのものを指している。一方、太陽光発電は、「エネルギーとCO2は回収済みだが、コストは未回収」という状況のほうが多いだろう。

 すでに1年以上前のニュースとなるが、アメリカでは、変換効率40.7%の太陽電池が開発された(参照6)。今後、日本は、核燃料リサイクルなどに投じる巨額資金を、太陽光発電や風力発電など自然エネルギーシステムの技術開発、利用促進に振り向けるべきだと、ボクは考える。
 これこそ、国益である。




参照
 1. 「太陽光発電のエネルギーペイバックタイム・CO2ペイバックタイムについて」(「産業技術総合研究所」)
 2. 「エネルギー供給技術の有効性の検討/石油代替エネルギー」(「環境問題を考える」」)
 3. 「太陽光発電システムの評価」(「市民のための環境学ガイド書庫」)
 4. 「エネルギー・ペイバック・タイム(EPT)」(←リンク切れ)(「NEDO:独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構」)
 5. 「エネルギーペイバックタイム(EPT)とエネルギーシステムのライフステージ 」(←リンク切れ)(「MRI | 三菱総合研究所」)
 6. 「太陽電池技術で効率 40 パーセントの世界新記録を達成(米国)」(←リンク切れ)(「NEDO:独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構」)




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